ジンクス【ZINKUSU】 ―エンジン エピソードゼロ―

鬼霧宗作

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第二話 Q&A【事件編】

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「それで、その丸山千穂子とかいうやつの人物像は? もう調べがついてんだろ?」

 同じ部屋で、加藤千秋と同じように殺害された人物。おそらく、犯人は丸山千穂子を先に殺害し、その後に加藤千秋を殺害している。

「あぁ、調べがついてる。どうやら、丸山千穂子は俗にいう立ちんぼをやっていたみたいだな。昼の仕事だけじゃ足りなかったのか知らんが、体を売って金を得ていたらしい」

 立ちんぼ――というのは、個人売春の総称だ。一定の場所に立ち、自ら客引きを行い、売春行為をする。風俗店を挟まない形になるから、それによって得た金銭は全て自分のものとなるため、安易に手を出す女性が多い。もっとも、風俗店を介していない時点で違法であり、また売春は買う方も売る方も立派な犯罪行為であるため、下手をすると警察に捕まってしまう。

「つまるところ売女ってことか……」

 坂田が呟くと、巌鉄が受話器の向こう側で頷いた気がした。

「あぁ、体を売ってたのが丸山千穂子で、クスリを売っていたのが加藤千秋ってことになる。この両者と犯人は繋がりがあったと考えていい」

 巌鉄の推理に反論するつもりはない。けれども、坂田にはどうして気になることがあった。

「丸山千穂子の殺され方は、加藤千秋と同じなんだよな。だとしたら、丸山千穂子が殺害された時も、かなりの出血があったはずだ。犯人がそれをいちいち片付けてから、加藤千秋を部屋に招き入れたとは思えない。これ、どう思う?」

 自分の中である程度の答えは出ていたのだが、あえて巌鉄のほうに振ってみる。他の人間の純粋な意見も聞いてみたかった。

「加藤千秋は少なくとも丸山千穂子の殺害は知っていた――ってことか?」

 思っていた通りの答えを巌鉄が出してくれたことで、坂田は確信する。おそらく、加藤千秋は丸山千穂子が殺害されたことを知っていた。いや、それどころか……。

「下手をすると、遺体を浴室の天井裏に運ぶ手伝いまでしたかもな。実際にやってみれば分かるが、浴室の天井裏まで遺体を引き上げるのは、どう考えても単独じゃ難しい。誰かの手を借りたと考えるのが自然だ」

 坂田の推論は、実に簡単なロジックから成り立っていた。そもそも、いくら男の力だとしても、浴室の天井裏まで遺体を引き上げるのは難しい。ゆえに、共犯者がいたと考えるのが自然だ。そして、共犯者となり得る人物は一人だけ。
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