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第二話 Q&A【事件編】
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「加藤千秋は犯人の犯行を手伝った。下手をすると、殺害そのものにも関与していた可能性まである」
巌鉄の返しに煙草を取り出す坂田。もう少し――もう少しで犯人に近づけるような気がするのだが。
「まさか――いや、もしも俺がこれまで勘違いしていたのだとしたら」
ふと、坂田の中にある考えが浮かんだ。逆転の発想……つまり、犯人は状況的に考えられる人物とは、真逆の存在なのではないか。
「おっさん、今からあるところに向かいたい。もしかすると、そこで決着をつけられるかもしれないんだ」
舞香の暗躍により掻き回されてしまった事件。どうやら着地点がうっすらとではあるが見えてきたみたいだ。
「で、どこに向かうつもりだ? 言っておくが、いきなりで捜査令状なんて出ないからな」
一度、被害者の家にガザ入れをしたことがあったが、その時も捜査令状なしでの踏み込みだった。一度やっているだけあり、良くも悪くも度胸が坂田にはついていた。
「もし、あてが外れたらおっさんが謝ってくれるだろうし、俺はそんなに心配していねぇ。そろそろずっとだんまり決め込んでる犯人に会いに行くとするか」
坂田の中である可能性が浮かび上がり、また静かに沈んでいく。正直なところ確証もなければ、根拠も乏しい。しかしながら、押し込めてしまう自信があった。
「謝らねぇよ。警察をなんだと思ってんだよ」
「いつでも謝ってくれる便利な怒られ侍」
巌鉄の言葉に返してやると、呆れた様子の声がさらに返ってくる。
「坂田、お前が言うから乗るだけだ。そこのところ勘違いするなよ?」
巌鉄としては、警察という立場を示そうとしたのであろうが、それでは逆効果だ。
「乗っかるだけ乗っかって、いざとなったら知りませんはあり得ねぇな。とりあえず、グラウンドゼロにいるからよ。今から迎えに来てくれ」
坂田が電話を切ると、マスターが気を利かせてくれたのか、握り飯とお茶を出してくれる。
「いつ帰って来られるか分からないから、簡単でもいいから食べて行きなさい。後、ちゃんとお茶も飲んでおくのよ」
そこまで腹は減っていなかったが、しかしいつ帰ってこれるか分からない。それに、このような時のマスターの勘は恐ろしいほどに当たる。ありがたく握り飯を頬張り、そしてお茶で流し込んだ。
「さて、どうやって追い詰めてやろうか――」
口元を袖で拭うと、坂田は笑みを浮かべた。
「まぁ、俺ならもっとスマートに殺るけどなぁ」
巌鉄の返しに煙草を取り出す坂田。もう少し――もう少しで犯人に近づけるような気がするのだが。
「まさか――いや、もしも俺がこれまで勘違いしていたのだとしたら」
ふと、坂田の中にある考えが浮かんだ。逆転の発想……つまり、犯人は状況的に考えられる人物とは、真逆の存在なのではないか。
「おっさん、今からあるところに向かいたい。もしかすると、そこで決着をつけられるかもしれないんだ」
舞香の暗躍により掻き回されてしまった事件。どうやら着地点がうっすらとではあるが見えてきたみたいだ。
「で、どこに向かうつもりだ? 言っておくが、いきなりで捜査令状なんて出ないからな」
一度、被害者の家にガザ入れをしたことがあったが、その時も捜査令状なしでの踏み込みだった。一度やっているだけあり、良くも悪くも度胸が坂田にはついていた。
「もし、あてが外れたらおっさんが謝ってくれるだろうし、俺はそんなに心配していねぇ。そろそろずっとだんまり決め込んでる犯人に会いに行くとするか」
坂田の中である可能性が浮かび上がり、また静かに沈んでいく。正直なところ確証もなければ、根拠も乏しい。しかしながら、押し込めてしまう自信があった。
「謝らねぇよ。警察をなんだと思ってんだよ」
「いつでも謝ってくれる便利な怒られ侍」
巌鉄の言葉に返してやると、呆れた様子の声がさらに返ってくる。
「坂田、お前が言うから乗るだけだ。そこのところ勘違いするなよ?」
巌鉄としては、警察という立場を示そうとしたのであろうが、それでは逆効果だ。
「乗っかるだけ乗っかって、いざとなったら知りませんはあり得ねぇな。とりあえず、グラウンドゼロにいるからよ。今から迎えに来てくれ」
坂田が電話を切ると、マスターが気を利かせてくれたのか、握り飯とお茶を出してくれる。
「いつ帰って来られるか分からないから、簡単でもいいから食べて行きなさい。後、ちゃんとお茶も飲んでおくのよ」
そこまで腹は減っていなかったが、しかしいつ帰ってこれるか分からない。それに、このような時のマスターの勘は恐ろしいほどに当たる。ありがたく握り飯を頬張り、そしてお茶で流し込んだ。
「さて、どうやって追い詰めてやろうか――」
口元を袖で拭うと、坂田は笑みを浮かべた。
「まぁ、俺ならもっとスマートに殺るけどなぁ」
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