4 / 178
第一話 コレクター【プロローグ】
4
しおりを挟む
「くそ、ついてねぇなぁ……」
路地の両側は、建物の2階ほどの高さのある塀。目の前には見上げるほどの高さの壁。高層ビルに取り囲まれ、世間から取り残されてしまった小さなアンダーグラウンドから脱出する手立てを奪ったのは、まさか高層ビルの壁だとは。
「こっちだ!」
その声に振り返る。追っ手の数は明らかに増えていた。もう、坂田に逃げ場はないと察したのか。路地の向こう側からゆっくりと集団が歩いてくる。その先頭には、名前のごとく髪を銀に染めた長髪の男の姿があった。両手、首元にはシルバーアクセサリーが光る。銀山だった。
「坂田ちゃん。やってくれたねぇ。お前なら、いつか俺に牙をむくんじゃねぇかって思ってたけどよ、まさかこんな形で歯向かってくれるとは――やるじゃない」
ここから脱する手立てはないか。考えながらも、銀山の言葉に反応を示す坂田。
「言っとくが、俺はお前の下についたつもりはねぇ。勝手にお前らが俺に絡んできただけだろ?」
「へぇ……いつも楠野と一緒にいるから、てっきりお前は俺の身内だと思っていたんだけど」
楠野という男は、幼い頃からの腐れ縁だった。彼は例外として、坂田は集団での行動を好まない。特に他人と群れることを良しとしなかった。このアンダーグラウンドに出入りするようになった時も1人だった。今はチームの溜まり場となってしまった【グラウンドゼロ】という店だって、元は坂田が好んで居座っていた店だ。
「あいつとは付き合いが長いんだよ。あんたらと違ってな。まさか、こんなところで再会することになるとは思わなかったが」
居場所がない。それは、この街に集まってくる人間に共通している点なのかもしれない。世の中に息苦しさを覚え、自分の居場所を求めた人間が集まる街。雨立街。まるで水を失った魚が水を求めて集まったような街。元より似たり寄ったりの楠野と、坂田がこの街で再会したのは、もはや必然だったのかもしれない。もっとも、余計なおまけが勘違いでついてきてしまったわけだが。坂田はこれを機会とばかりに言葉を連ねる。かねてよりの悪友――その悪友が属しているグループをまとめている男だからこそ、これまでぐっと堪えてきたのだが、我慢の限界というものがある。坂田は続けた。
「ちなみに【グラウンドゼロ】のマスターも迷惑そうだったぜ。お前らみたいな質の悪い連中に溜まり場にされてよ。まぁ、この街で商売するってことは、それなりの覚悟があるんだろうが、ガキは金も落とさねぇからな」
坂田の言葉を鼻で笑うと、すっと手を差し出す銀山。近くにいた男が、金属バットを手渡した。
路地の両側は、建物の2階ほどの高さのある塀。目の前には見上げるほどの高さの壁。高層ビルに取り囲まれ、世間から取り残されてしまった小さなアンダーグラウンドから脱出する手立てを奪ったのは、まさか高層ビルの壁だとは。
「こっちだ!」
その声に振り返る。追っ手の数は明らかに増えていた。もう、坂田に逃げ場はないと察したのか。路地の向こう側からゆっくりと集団が歩いてくる。その先頭には、名前のごとく髪を銀に染めた長髪の男の姿があった。両手、首元にはシルバーアクセサリーが光る。銀山だった。
「坂田ちゃん。やってくれたねぇ。お前なら、いつか俺に牙をむくんじゃねぇかって思ってたけどよ、まさかこんな形で歯向かってくれるとは――やるじゃない」
ここから脱する手立てはないか。考えながらも、銀山の言葉に反応を示す坂田。
「言っとくが、俺はお前の下についたつもりはねぇ。勝手にお前らが俺に絡んできただけだろ?」
「へぇ……いつも楠野と一緒にいるから、てっきりお前は俺の身内だと思っていたんだけど」
楠野という男は、幼い頃からの腐れ縁だった。彼は例外として、坂田は集団での行動を好まない。特に他人と群れることを良しとしなかった。このアンダーグラウンドに出入りするようになった時も1人だった。今はチームの溜まり場となってしまった【グラウンドゼロ】という店だって、元は坂田が好んで居座っていた店だ。
「あいつとは付き合いが長いんだよ。あんたらと違ってな。まさか、こんなところで再会することになるとは思わなかったが」
居場所がない。それは、この街に集まってくる人間に共通している点なのかもしれない。世の中に息苦しさを覚え、自分の居場所を求めた人間が集まる街。雨立街。まるで水を失った魚が水を求めて集まったような街。元より似たり寄ったりの楠野と、坂田がこの街で再会したのは、もはや必然だったのかもしれない。もっとも、余計なおまけが勘違いでついてきてしまったわけだが。坂田はこれを機会とばかりに言葉を連ねる。かねてよりの悪友――その悪友が属しているグループをまとめている男だからこそ、これまでぐっと堪えてきたのだが、我慢の限界というものがある。坂田は続けた。
「ちなみに【グラウンドゼロ】のマスターも迷惑そうだったぜ。お前らみたいな質の悪い連中に溜まり場にされてよ。まぁ、この街で商売するってことは、それなりの覚悟があるんだろうが、ガキは金も落とさねぇからな」
坂田の言葉を鼻で笑うと、すっと手を差し出す銀山。近くにいた男が、金属バットを手渡した。
1
あなたにおすすめの小説
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる