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第一話 コレクター【プロローグ】
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仲間内の紫衣流――穂積紫衣流が殺されたのは今日の昼間のことだった。たまたま第一発見者となってしまったのが、彼こそ坂田仁だったのも、周囲から疑われる原因となったのだろう。
「まだサツには通報してねぇみてぇだな。まぁ、サツなんてたかがしれてる」
独り言を漏らしつつ、坂田は取り出し口から飲み物を取り出す。たまたま購入する形になったのは、ブラックコーヒーだった。その黒光りする缶に舌打ちをひとつ。
「……俺は甘ぇのしか飲まねぇんだよ」
しかしながら、しっかりと喉は乾いているし、贅沢なんて言ってはいられない。坂田は覚悟を決めると、コーヒーを一気に飲み干した。が、当然のように咳き込んでしまう。
「くそっ、苦ぇなぁ」
とにもかくにも、多少喉を潤わせることはできた。呼吸もある程度整ったし、そろそろ動いたほうがいい。
「にしても、メンバー総動員となると、見つかるのも時間の問題だな」
先ほどの話だと、なぜか坂田が属していることになっているグループのリーダーである銀山誉は、かなりの人数を動員して坂田を探しているらしい。当然ながら、あいつらは司法機関ではないし、冷静な判断を下せるほど頭も良くない。無実を訴えたところで、集団になってボコボコにしようとしてくるのが関の山だ。とりあえず、この街を離れたほうがいいだろう。
銀山のやつらは頭から坂田が犯人だと決めつけている。この街のシンボルと言っても過言ではない赤色灯が、まだなりをひそめているということは、警察に通報はされていないのだろう。まぁ、意味もなく警察のことを嫌っている連中のことだから、そもそも通報をするという発想がないのかもしれない。
「仕方ねぇ。あいつに連絡入れてみるか」
ぽつりと呟いた時、路地のさらに奥から数名の男が飛び出してくる。たまたま自動販売機の前にいたため、その明かりに照らされた坂田の顔を見たのか、男は声を荒げる。
「いたぞ! 囲めっ!」
あちらの数は3人。やろうと思えば相手にできない人数ではない。しかし、あまり時間をかけてしまうと、それこそ本当に取り囲まれてしまうおそれがある。さすがの坂田も人海戦術には勝てる気がしなかった。
坂田は力一杯地面を蹴ると、男達と反対側の路地に向かって駆け出した。途中で別の路地から飛び出てきた男が目の前に立ちはだかるが、飛び蹴りで軽くいなし、その男を足蹴に路地を駆け抜ける。
しかし、雨立街は庭と呼ぶにはいささか複雑すぎた。てっきり抜けられると思っていた路地を進んだ先には、壁がそびえ立っていた。
「まだサツには通報してねぇみてぇだな。まぁ、サツなんてたかがしれてる」
独り言を漏らしつつ、坂田は取り出し口から飲み物を取り出す。たまたま購入する形になったのは、ブラックコーヒーだった。その黒光りする缶に舌打ちをひとつ。
「……俺は甘ぇのしか飲まねぇんだよ」
しかしながら、しっかりと喉は乾いているし、贅沢なんて言ってはいられない。坂田は覚悟を決めると、コーヒーを一気に飲み干した。が、当然のように咳き込んでしまう。
「くそっ、苦ぇなぁ」
とにもかくにも、多少喉を潤わせることはできた。呼吸もある程度整ったし、そろそろ動いたほうがいい。
「にしても、メンバー総動員となると、見つかるのも時間の問題だな」
先ほどの話だと、なぜか坂田が属していることになっているグループのリーダーである銀山誉は、かなりの人数を動員して坂田を探しているらしい。当然ながら、あいつらは司法機関ではないし、冷静な判断を下せるほど頭も良くない。無実を訴えたところで、集団になってボコボコにしようとしてくるのが関の山だ。とりあえず、この街を離れたほうがいいだろう。
銀山のやつらは頭から坂田が犯人だと決めつけている。この街のシンボルと言っても過言ではない赤色灯が、まだなりをひそめているということは、警察に通報はされていないのだろう。まぁ、意味もなく警察のことを嫌っている連中のことだから、そもそも通報をするという発想がないのかもしれない。
「仕方ねぇ。あいつに連絡入れてみるか」
ぽつりと呟いた時、路地のさらに奥から数名の男が飛び出してくる。たまたま自動販売機の前にいたため、その明かりに照らされた坂田の顔を見たのか、男は声を荒げる。
「いたぞ! 囲めっ!」
あちらの数は3人。やろうと思えば相手にできない人数ではない。しかし、あまり時間をかけてしまうと、それこそ本当に取り囲まれてしまうおそれがある。さすがの坂田も人海戦術には勝てる気がしなかった。
坂田は力一杯地面を蹴ると、男達と反対側の路地に向かって駆け出した。途中で別の路地から飛び出てきた男が目の前に立ちはだかるが、飛び蹴りで軽くいなし、その男を足蹴に路地を駆け抜ける。
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