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第一章
三十話
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ロセウスと一線を越えていないとはいっても、互いに快感を与え合ったことに変わりはない。服を着替えて、証拠を隠滅したにも関わらず、買い出しから帰ってきたアーテルとアルブスに速攻で気づかれてしまった。焦ってロセウスの方に視線をやるが、ロセウスは気づかれてしまうのを元よりわかっていたみたいで、ベルのように焦ってはいなかった。
服は召喚術師としての正装だから、何着も持っている。そのうちの一着に着替えたというのに、なぜだと首を傾げるが、すぐにその答えはアーテルによってもたらされた。アーテルが鼻を自身の鼻を軽く叩いたのだ。そこではっと気づく。
召喚獣や契約獣は人間や輝人と違って、動物のように鼻が利く。ベルに分からない匂いも感じ取ることができるというわけだ。素知らぬフリを決めようとしていた自分が恥ずかしくなってくる。
赤くなった頬を両手で隠していると、その手をアーテルとアルブスの二人に取られてしまった。さすが双子というべきなのか、全く同じタイミングで手の平にキスを落としてくる。
「お嬢、今からとは言わない。けど、帰ってきたら俺たちともしような」
「嫌、とは言わせないよ、お嬢」
口調は優しいが、そこにベルの拒否権は存在しない。それに、三人を恋人にしたからには、平等に扱うとベル自身が決めていた。
「……わかった」
あんなに恥ずかしくて、気持ちよくて、頭が真っ白になるようなことをするのかと思うと、なんだかムズかゆい気持ちになってくる。それでも嫌、と拒否する自分はどこにもいなかった。
ベルが頷くとアーテルとアルブスは満足げな表情をし、買ってきたものを鞄に詰める作業を手際よくこなしていた。
夕食を簡単に済ませ、ベッドで各々体を休める。ここから最低でも二日はベッドで体を休めることはできない。今のうちにベッドを堪能しようと、柔らかな生地に顔をうずめた。
出発は日の出とともに、と決めていたので、ベルが目を覚ましたころにはすぐに出発ができるよう、すでに獣化した三匹がリビングで最終確認をしていた。
寝起きは悪くない方、むしろいい方なのだが、それ以上に三匹は寝起きがいいようだ。ここで張り合っていても仕方ないので、ベルは三匹が最終確認をしているうちに朝食を済ませた。
朝食を済ませて、リビングへ戻ってくると、アーテルとアルブスが背中に大きな鞄を背負っていた。それは昨日のうちに用意しておいた遠出用の鞄で、ロセウスの負担が少なくなるように二匹で分けて持っていくようだ。
玄関から外に出て、ロセウスの背中に乗る。そのまま出発するかと思いきや、ロセウスは三本ある尻尾の一つを一振りして、家がある敷地全体に結界魔法を張っていた。
ベルはロセウスたちが魔法を使えることをすっかり忘れていた。こうしてロセウスが魔法を使う姿を見て、そういえばと思い出す。ベルが目覚めたというのに、家の周囲はとても静かだった。それは一重にロセウスが結界を普段から張ってくれていたおかげだ。常時張ってある結界内には、ロセウスが許したものしか入ることができない。今回こうして張りなおしたのは、ロセウスたちにとっては久しぶりの、ベルにとってはこの世界にトリップしていきて初めての遠出になるからだろう。
張りなおされた結界は、魔力がより潤沢になったせいか、ベルも目を見張るほど強固な結界となっていた。これなら人間どころか虫一匹ですら入ることが困難なはずだ。
ベルは輝人の誓約のせいで、契約術師から召喚術師になったときに全ての魔法を使うことができなくなった。厳密にいえば、誓約とよりも代償という言葉が合っているのかもしれない。これは全ての輝人が課せられている誓約で決してベル一人だけではない。龍脈を整える役割を持つということは、即ち自由に使えてしまうとも捉えることができる。だから世界は魔力を視覚化する瞳や、尽きない命などを輝人やその召喚獣に与え、魔法というものを輝人から奪った。
輝人が魔法使いなどの職業ではなく、契約術師しかなれないのは、魔法が使えなくなる等の理由が関係してくる。
輝人になったばかりの当初、魔法が使えないことによって困ったことは多々あった。けれど魔法が使えないことに慣れてからは、魔法を使えなくても代わりにロセウスたちが使ってくれるので、不便さを感じることはなかった。
早朝ということもあってか、道を歩く人は疎らでロセウスに乗って走っても、特に支障はなかった。『異界の湖』は街の中ではなく、ナツゥーレ国内にある深い森の奥にある。ここはナツゥーレの所有する土地といっても、各国不可侵の領域であるため、ナツゥーレが自身の土地だと声を大にして独占することはできない。
そのため契約術師を目指す若者は、ナツゥーレの国民以外であっても、ナツゥーレへの入国証明書、所謂パスポートのようなものさえあれば自由に出入りすることができる。もちろん悪さをされたらたまらないので、邪な心を持つ者は入れないように結界や幻惑魔法が森全体にかけられていた。それでもくぐり抜けてくる強者のために、『異界の湖』には番人が存在する。なのでそれら全てを突破して辿り着けた者は、誰一人としていないらしい。
街の整地された道から次第に外れ、獣道に突入する。ロセウスはベルを気にしてなるべくなだらかな道を走ってくれているが、それでも多少の揺れはある。喋ると舌を噛みそうなので、ベルはおとなしくロセウスに掴まっていた。
服は召喚術師としての正装だから、何着も持っている。そのうちの一着に着替えたというのに、なぜだと首を傾げるが、すぐにその答えはアーテルによってもたらされた。アーテルが鼻を自身の鼻を軽く叩いたのだ。そこではっと気づく。
召喚獣や契約獣は人間や輝人と違って、動物のように鼻が利く。ベルに分からない匂いも感じ取ることができるというわけだ。素知らぬフリを決めようとしていた自分が恥ずかしくなってくる。
赤くなった頬を両手で隠していると、その手をアーテルとアルブスの二人に取られてしまった。さすが双子というべきなのか、全く同じタイミングで手の平にキスを落としてくる。
「お嬢、今からとは言わない。けど、帰ってきたら俺たちともしような」
「嫌、とは言わせないよ、お嬢」
口調は優しいが、そこにベルの拒否権は存在しない。それに、三人を恋人にしたからには、平等に扱うとベル自身が決めていた。
「……わかった」
あんなに恥ずかしくて、気持ちよくて、頭が真っ白になるようなことをするのかと思うと、なんだかムズかゆい気持ちになってくる。それでも嫌、と拒否する自分はどこにもいなかった。
ベルが頷くとアーテルとアルブスは満足げな表情をし、買ってきたものを鞄に詰める作業を手際よくこなしていた。
夕食を簡単に済ませ、ベッドで各々体を休める。ここから最低でも二日はベッドで体を休めることはできない。今のうちにベッドを堪能しようと、柔らかな生地に顔をうずめた。
出発は日の出とともに、と決めていたので、ベルが目を覚ましたころにはすぐに出発ができるよう、すでに獣化した三匹がリビングで最終確認をしていた。
寝起きは悪くない方、むしろいい方なのだが、それ以上に三匹は寝起きがいいようだ。ここで張り合っていても仕方ないので、ベルは三匹が最終確認をしているうちに朝食を済ませた。
朝食を済ませて、リビングへ戻ってくると、アーテルとアルブスが背中に大きな鞄を背負っていた。それは昨日のうちに用意しておいた遠出用の鞄で、ロセウスの負担が少なくなるように二匹で分けて持っていくようだ。
玄関から外に出て、ロセウスの背中に乗る。そのまま出発するかと思いきや、ロセウスは三本ある尻尾の一つを一振りして、家がある敷地全体に結界魔法を張っていた。
ベルはロセウスたちが魔法を使えることをすっかり忘れていた。こうしてロセウスが魔法を使う姿を見て、そういえばと思い出す。ベルが目覚めたというのに、家の周囲はとても静かだった。それは一重にロセウスが結界を普段から張ってくれていたおかげだ。常時張ってある結界内には、ロセウスが許したものしか入ることができない。今回こうして張りなおしたのは、ロセウスたちにとっては久しぶりの、ベルにとってはこの世界にトリップしていきて初めての遠出になるからだろう。
張りなおされた結界は、魔力がより潤沢になったせいか、ベルも目を見張るほど強固な結界となっていた。これなら人間どころか虫一匹ですら入ることが困難なはずだ。
ベルは輝人の誓約のせいで、契約術師から召喚術師になったときに全ての魔法を使うことができなくなった。厳密にいえば、誓約とよりも代償という言葉が合っているのかもしれない。これは全ての輝人が課せられている誓約で決してベル一人だけではない。龍脈を整える役割を持つということは、即ち自由に使えてしまうとも捉えることができる。だから世界は魔力を視覚化する瞳や、尽きない命などを輝人やその召喚獣に与え、魔法というものを輝人から奪った。
輝人が魔法使いなどの職業ではなく、契約術師しかなれないのは、魔法が使えなくなる等の理由が関係してくる。
輝人になったばかりの当初、魔法が使えないことによって困ったことは多々あった。けれど魔法が使えないことに慣れてからは、魔法を使えなくても代わりにロセウスたちが使ってくれるので、不便さを感じることはなかった。
早朝ということもあってか、道を歩く人は疎らでロセウスに乗って走っても、特に支障はなかった。『異界の湖』は街の中ではなく、ナツゥーレ国内にある深い森の奥にある。ここはナツゥーレの所有する土地といっても、各国不可侵の領域であるため、ナツゥーレが自身の土地だと声を大にして独占することはできない。
そのため契約術師を目指す若者は、ナツゥーレの国民以外であっても、ナツゥーレへの入国証明書、所謂パスポートのようなものさえあれば自由に出入りすることができる。もちろん悪さをされたらたまらないので、邪な心を持つ者は入れないように結界や幻惑魔法が森全体にかけられていた。それでもくぐり抜けてくる強者のために、『異界の湖』には番人が存在する。なのでそれら全てを突破して辿り着けた者は、誰一人としていないらしい。
街の整地された道から次第に外れ、獣道に突入する。ロセウスはベルを気にしてなるべくなだらかな道を走ってくれているが、それでも多少の揺れはある。喋ると舌を噛みそうなので、ベルはおとなしくロセウスに掴まっていた。
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