可愛かった幼馴染の女の子がイケメン堕ちした本当の理由に一同驚愕。演劇を始めてしまった事が理由との噂も。

僧侶A

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34話

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 翌日の放課後、

「よし、行くぞ幸村」

「うん、とりあえずサングラスは外そうか」

「駄目なのか?」

「駄目に決まってるでしょ。皆見てるよ」

 ふと周囲を見てみると、視線が俺の元に集まっていた。

「何故だ?」

「大柄の男子のクラスメイトがサングラス着けてたら普通怖いじゃん。色々と」

「でもあそこに行くには必要なんだ」

 これを外すという選択肢はありえない。

「確かに。もう一つ持ってる?」

「当然だ」

 俺と幸村は真っ黒なサングラスを装着し、目的地へと向かった。


「開けるぞ」

「うん」

 目的の部屋に辿り着いた俺たちは、ゆっくりと戸を開いた。


「はあ、はあ、素晴らしいなあ、もっと、もっと!!!!!」

「ああ、これこそまさに芸術!美しい!!!!!!」


 部屋を開けた途端に目に入ったのは奇行に走る男女の姿。

「うわ……」

「……」

 幸村はドン引きして両手で自身の視界を塞ぎ、俺は思わず天井を眺めていた。



「っと、久しぶりじゃないか!なみこ君に幸村君!」

「集中していたせいで気付かなかったよ!申し訳ない!とりあえずカフェラテはいるかい?」

 それから間もなく俺たちの来訪に気付いた二人は、作業を止めて俺たちの元に駆け寄ってきた。

「お久しぶりです、先輩方」

「いやあ、来てくれて本当に嬉しいよ。ほらほらゆっくりしていきなよ!」

 そして俺たちは部屋の奥にあるソファに案内された。

「別に良いですから、単に作業をしに来ただけですので」

「え?私たちの作品の芸術に気付いたからじゃないのかい?」

「なみこ君はそんなことは最初から理解しているさ。僕たちの後輩なんだよ?」

「まあ良いじゃないか。とりあえず私たちの最近の作品を見てもらおうじゃないか!」

「そうだね!」

 と二人は勝手に盛り上がり、部屋の棚にある紙を持ってきた。漫画である。


 そう、俺たちがやってきたのは漫画研究会の部室なのだ。

 息をハアハアさせながら漫画を描いていた女性は川添絵夢部長。R18限定の漫画家であり、可哀そうは可愛いを信条としているらしく、日々可哀そうな目にあう女の子の漫画を描いている。

 1人でこれこそが芸術だとか騒いでいたナルシストっぽい男性は月川誠副部長。モンスターが登場する漫画だけを描いている。ただし、ドラゴンのようなカッコよく大衆受けするのではなくゼリー状のムカデ等、一般的には気持ち悪いとされるモンスターばかりを登場させている。彼曰く、気持ち悪い姿というのは生存という一点に全てを捧げた生命の最終到達点のため、最上に美しいとのこと。

「うっ……」

 そんな常人には敬遠されがちな漫画を描いている為、幸村はこの部室に来ることを敬遠していたのだ。

 しかし俺は別に内容に関しての抵抗は無い。漫画というジャンルであれば俺はどんな分野でも読める。

 では何故ここに来るのを嫌がっていたのか。理由は単純。この二人は馬鹿みたいに漫画を描くのが上手いから。

 ニッチな分野を攻めすぎているせいで人気は殆どないらしいが、これまで見てきた漫画の中でも最高峰に位置する。

 正直日本一の漫画家である暁月先生にすら匹敵すると思う。

 そんなに画力が高い人たちの近くで商業誌で連載していると、心が折れかけるのだ。この程度の画力で連載を勝ち取って良いのか?と。

 まあそんなわけで、連載当初は幸村が部活の日はここで描いていたのだが、最終的には一切来なくなった。

 週刊連載と違って多少の余裕はあるものの、精神が崩れると作品作りに大きく影響を及ぼすからな。

 ちなみに二人の人間性に関しては俺も幸村も嫌だとは思っていない。それぞれ変態とナルシストだが、もっとおかしな人は漫画家の世界ではいくらでも居るし、何よりも良い人なのだ。

 こうやって幽霊部員と化していた俺を楽しそうに受け入れる位だからな。

「で、なみこ君がここに来た本当の理由はなんだい?連載で忙しいだろう?」

 と俺たちが来た理由を問いただす誠さん。

「仕事場がかくかくしかじかで一時的に使えなくなったので、場所を借りに来たんですよ」

「なみこ君、かくかくしかじかはあくまで説明パートを省略する漫画等で使われる魔法の言葉であって、実際に使っても伝わらないものなんだよ?」

 俺は丁寧に説明したが、どうやら絵夢部長には伝わっていなかったらしい。

「漫画の先輩だったので伝わるものだと思っていました」

 俺の漫画のファンというだけで俺の姿形が分かる人が居るんだ。漫画が上手い二人が漫画特有の技法で説明されたら伝わると思うだろ。

「それで理解できるのはファン達だけだよ」

「私たち人とは異なる人種だからね」

 と遠い目をする二人。どうやら先輩方も俺たちが遭遇したような事件があったらしい。

 俺よりも上手いからそりゃあ当然か。

「じゃあちゃんと説明しますね——」

 俺は常人でも伝わるように普通に説明をした。

「それは災難な話だったな」

「部室は十分に余っているから好きに使うと良い」

 俺の話を聞いた二人は軽く笑った後、部室を貸してくれると言ってくれた。

「ありがとうございます」

「ただ、今から漫画を描き始める予定なら先に連絡が来てないか確認しておいた方が良いよ」

「急にどうしたんですか誠先輩?今までそんな事言ってきませんでしたよね?」

 なんなら一緒に部室で漫画を描いていた時期の二人はどこかから連絡が来ているのを確認した上で漫画を描いている時まであった。

「だろうな。この世にそんなアドバイスは存在しないからな。私でも初めて聞いたレベルだよ」

 そんな疑問に同意してくれたのは絵夢部長。良かった、俺の知識不足では無かったようだ。

「仕事開始前にメールの確認をするのは割と常識だけどね」

 と安心していると、幸村が誠先輩側に立っていた。

 誠先輩も絵夢部長もあまり一般常識では参考にならない上、俺も若干不安なところはあるので、1-0で連絡を見るという事に決定した。

「なら連絡を見ますね」

 そう言って俺がスマホを開こうとすると、何故か絵夢部長と誠先輩が部屋から出ていった。
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