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親子のねじれた関係から
〈ある少年の話〉僕、生きてる?
しおりを挟む僕の部屋にあるのはベッドと机とゲーミングPC。他使っているものは下の階の冷蔵庫とトイレ。時々風呂。
そう、それが僕の生きている場所。
今は何時なのか、時期はいつなのか、日付も何もかももうどうでもいい。知りたきゃパソコンが教えてくれる。
母親に言って雨戸は全部閉めさせている。
これなら家の中で僕が暮らしていても誰にも見られない。
部屋に篭るようになってから、いつの頃からか、あったかい食べ物は受け付けなくなった
あの湯気と温かさに吐き気がする。
そして、実際に吐いてしまう。
それを母親に言うと今度は冷たいパスタやサラダ、スープなど、熱を冷ました食い物を用意してくれたが、それも受け付けない。
なのでしばらくジュースやお茶だけで過ごしていたが、心配した母親がパンやらお菓子やらを冷蔵庫に入れてくれるようになった。コンビニの冷たくなった弁当はたべれると分かったので、腹が減ったら冷蔵庫からコンビニ弁当とコーラを出し部屋で食べる。
本当はあったかいとかそんな理由で食べられないわけではない。
あいつが、あの女が作った食べ物が食べたくないだけだ。
だけど、そんなこと言えないじゃないか。
そうやって、冷たいコンビニ弁当を食べる。でも毎日同じ味。ただ口に入れてコーラで流し込む。
食べた弁当ガラは部屋の中に捨てている。いつからか掃除もしなくなった。
誰も入れないからこの部屋はとても汚い。でも片付けたって何が変わるんだ。どうせ僕の人生なんて終わってもいいから。
そんな風に思う毎日。
今の僕の世界の全ては
与えられたパソコンとインターネット。
その世界が僕であり、僕の全て。
父親はどうしたんだって?
さあねー。何してるんだろうね。
僕がこうなってからしばらく母親と毎日喧嘩する声はしていたけれど。。。いつからだろう、声もしなくなったし、帰ってはきていないみたいだ。元々愛人がいる人だった。何回か父親がその愛人と会っているところを見たし、なんなら紹介されもした。本当にさどんな神経してるんだろうね。しかもその女母親とは違って派手でケバいんだよね。多分今も大方そのケバい愛人のとこにでも世話になってるんじゃないかな。
母親はそれをどう思っているかどうかなんて知ったこっちゃない。どうせ、母親だってあの男とイチャイチャしてるんじゃないのか。そうなんだよ。両親ともに愛人がいるんだよね。は!全く。
反吐が出る。
だからさあー。そんな女が作った飯なんて食えないよね。
下品な男と乳繰り合った手で作られたものなんだって考えてしまうともう全く受け付けないのさ。
こんな親から僕は生まれて幸せとは思えるはずがないだろ。
そして。。。最近ずっとおもうんだ。
『本当に僕は必要とされているのか』ってこと。
そう考えるとだんだん頭が痛くなってきて、大きな声が出てくるんだ。
『お前は必要とされていない。しね!お前なんか』
そう耳元で囁く声が聞こえてくるんだ。
僕はその声に抗う。
『いやだ、、いやだ!いやだ!いやだ!!』
イライラして、気づいたら部屋の中で叫んでた。
母親は心配して部屋の外からドアを叩いている。
ドンドンドン!
『イチロウちゃん!どうしたの!?ママよ!何があったの、、、イチロウちゃん、どうしてぇー。。。』
泣き始めた女に僕は罵声を浴びせる。
『このクソババア!何泣いてんねん!!テメエのせいで俺はこうなったんや!!全部全部何もかも!!お前らのせいだーー!』
壁をバットで叩く。
部屋の壁は穴だらけ。
そうしてひとしきり暴れ回ると自己嫌悪に陥る。
その時は冷静になってるから暴れたことや母親に罵声を浴びせたこと、そして毎日部屋に篭る日々を過ごしていることに罪悪感を感じる。悲しい。すごく悲しくなるんだ。
そしてその潰されそうになる感覚から逃れるために、ゲームの世界に没入する。
僕は。。。僕は。。。
本当に生きてるのか。わからない。わからない。
わからない。。。
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