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ー光ー 第三章 旅の後

第四十四話 部屋作り

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 解散したあと、天光琳と天俊熙は天宇軒が言っていた広い部屋に向かった。


「ここ...かな」

「ここっぽいな」


 天浩然の部屋の近く...斜め前に扉が一つあり、他は窓だったりベランダの扉だったりして、他に近くにある部屋らしい...というところはない。



 扉を開けると、広い部屋が現れた。
 家具は何も置かれておらず、部屋の広さがしっかりわかる。
 奥に段差があり四段の階段がある。上ると、ベッドを置くのにちょうど良い広さになっている。

 真中には大きな窓があるため、窓の両端にベッドを置くと良いだろう。


「ここにはテーブル置こうか」

「いいね!...ここにクローゼット置いて......」

「ここには本棚を置こう!」


 二神はある程度家具の配置を決め、自分の部屋から家具を運んでくることにした。
 まずは天俊熙の部屋からだ。


「どうやって運ぶ...?ベッドとかは二神だけで運ぶのは難しいよね...」


 天俊熙の部屋は一階にあり、階段を使う必要はなくて済むのだが、結構距離はある。

 ベッドなんて大きく豪華な作りのため、そもそも持ち上がらないだろう。


「大丈夫!」


 天俊熙はそう言うと、指をパチンと鳴らした。
 するとベッドが浮き上がった。


「あ!そっか!」


 天光琳は思い出した。天俊熙には物を浮かせる能力がある。それで運べば良いのだ。

 しかも天俊熙は神の力が高いため、いちいち部屋に移動しなくてもこの場で立っているだけで運べてしまう。
 天俊熙は移動させたい家具をホイホイと浮かせ、広い部屋まで運んだ。


「すごぉい!」


 天光琳は飛び跳ねながら両手で拍手をした。


 (いたたっ)


 するとズキっと傷が痛み、天俊熙に心配させたくないため、気づかないように傷口を抑えた。



 移動させたい家具を全て浮かべ、天俊熙の部屋から出ていくと、二神も部屋を出て、扉を閉めた。


「次は光琳の部屋だな」


 天光琳の部屋は天俊熙の部屋と近いため、そこまで時間はかからない。
 天光琳の部屋に着くと、天光琳は扉を開けた。


「これとこれと...これは残しておこうかな...」

「あとは全部運んでもいいか?」

「うん、お願いしまーす」


 天俊熙は再び物を浮かせた。


 (凄いな...僕もいつかきっと......)


 とても楽な能力で天光琳は羨ましくなった。
 全て運び終わり、二神は広い部屋へ戻った。


「よし、部屋作り開始だ!」

「頑張ろー!」


 二神は袖をまくった。
 家具は適当に置かれているため、まずは家具の配置を決めていく。


「まずはここにベッドだな...」


 天俊熙はベッドを浮かせ、窓の両端に置いていく。
 その間天光琳は一神で持てるぐらいの軽い家具を移動させていく。

 ...もちろん手動だ。


「ふぅ......」


 (次はテーブルかな)


 テーブルを部屋の真ん中に置き、椅子を四つとソファを置いていく。
 そして何かほかに運べるような物は...とキョロキョロしていると...。


「あっ!」


 天俊熙は何か思い出したようで、浮かせていた家具をその場で下ろし、天光琳の方を見た。


「...な、なに?」

「そういや怪我人!お前は座ってろ!」


 そうだ。天光琳はまだ怪我が治りきっていない。家具は重い。運んでいるうちに傷口が開くと大変だ。


「でも...大丈夫だよ?」

「大丈夫じゃないだろ」


 天俊熙はそう言って天光琳の目を細い目で見ながら手で自分の胸元をトントンと二回叩いた。
 これは天光琳の体に傷があるところを示している。


「今日の朝から顔色が悪かった。よく痛そうに抑えていたし......。最初はまだ痛むのかな...って思っていたけど、万姫様の話聞いて分かった。悪神のせいで悪化したんだろ...?」

「さすが俊熙......バレてたかぁ...」

「バレバレだよ」


 昨日の夜悪神から逃げようと必死に走り傷口が痛んだ。さらに壁にぶつかったことにより悪化してしまった。
 幸いなことに傷口は開かなかった...いや、一部血が滲んでいた。

 もう少し強くぶつかっていたら傷口が開き大量に血が流れていただろう。


「俺は神の力を使ってるから疲れない。お前はゆっくり休んでなよ」


 天俊熙は心配が混じった笑顔で言った。
 天光琳はこれ以上心配させたくない...と思い素直に先程置いた椅子に座った。


 十分後、家具を全て置き終わった。
 座っている天光琳の意見も聞きながら動かしていたため、二神が納得いくような配置になった。


「ベッドの間には一応仕切りつけておく?」

「そうだな。カーテンでもつけておくか」


 ベッドにもカーテンはついているのだが、やはり一人でいられる空間というものは欲しい訳だ。なければ着替えの時などに困る。

 とはいえ、しっかりした仕切りをつけてしまうと二神部屋にした意味がなくなる。

 そのため、分厚いカーテンを付けておけば、声は聞こえるし大丈夫だろう。



 カーテンをつけ終わり、二神部屋が完成した。


「お疲れ様。ごめんね、ありがとう...!」

「ほぼ楽してたけどね」


 天俊熙は手動では何もやっていないため、苦笑いしながら言った。

 天光琳は小さい頃から一神部屋である。
 天麗華と寝ることはあったが、兄弟部屋というのに憧れた。
 天俊熙は兄弟ではなく従兄弟だが、同じようなものだ...と思っている。


 部屋には小さなキッチンスペースがあるため、お茶を沸かし、天光琳は自分の部屋から持ってきたティーカップをテーブルに二つ並べた。


「ちょっ、俺が準備するから...」

「これくらいへーき!」


 はぁ...と天俊熙は苦笑いしながらため息をついた。
 五分後、お茶が沸いた。天光琳が立つ前に天俊熙が立ち上がり、ティーポットを取りに行き、お茶をティーカップに注いだ。


「ありがとう...」

「ふっ」


 少し不機嫌そうな顔をしたため天俊熙は笑った。怪我人は大人しく座っていた方が良い。


 その時、扉を叩く音が聞こえた。


「光琳、俊熙いる?」


 天麗華だ。
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