遅発性Ω

枝浬菰

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第三章

悲しみ

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「お子様は何組かしら?」

「えっと、あひる組で」
「あら、私の息子もあひる組ですわ、ご一緒にどうですか?」

「じゃ、お願いします」

いい人がいてよかった。

後を付いていくと航にほのかについていた、香水と似ていた。
なぜ? この人どう見てもαだ。

「ここがあひる組です……」
「お父さんだ!!」

航平が飛びついてきた。
「おう!! お迎え遅くなってごめんな」
抱き上げた。

「……もしかして羽衣さんでしたか?」
「ええ、ああすみませんご挨拶もなしに、羽衣です」

「……」

「航平、いっぱい遊んだか?」
「うん、ねぇお母さんは?」

「お母さん、具合悪くてな、家にいるぞ」
「……」
航平が悲しい顔になった。

「航平、どうした?」
ちらっとさきほどまで一緒にいた女性のほうに向いた。
降りる降りるコールされ、航平を床におろすと

「お母さんをいじめるな!!」と急に大きな声を出して怒り出した。
「え!?」

「ちょっとなによ!!」
そこに拓海がきた。

「おりゃ!!」
拓海が航平を押し倒す。
慌てて航平を受け止めた。

「ちょっと待て、状況が掴めないが」


他の組の子供たち、保護者の方がこちらを見ていた。

そこに先生たちが駆けつける。
「どうしました?」

「すみません、俺も状況があまり分かっていなくて」
「あなたは……」
「航平の父親の羽衣です」

「羽衣さん……」
先生たちが少し目を合わせていた。

「少し、こちらに来ていただけますか?」
「はい」


航平を抱きかかえ別室に案内された。

「あの、航平がなにか悪いことをしてしまったのでしょうか?」
「いえ、航平くんはなにも悪くありません、むしろ悪いのは真田さんのほうでして……」
「真田さん?」
「はい、さきほど一緒にいた方です」

「少し前から真田さんから羽衣さんのお母様に小言を言われているみたいでして」
「小言って」
「私たちも航平くんから聞いたので曖昧にはなってしまいますが、実際に園長先生は現場を見て真田さんにやめるようにお伝えはしてありましたがなかなか緩和せず、こちらとしても困っています」

「なにが原因とかは分かりますか?」
「お母さんがね、Ωだからっていうのよく拓海くんが言ってたよ」

ひゅっと呼吸が一瞬苦しくなった。
男のΩというだけで社会からの見放される事情は俺もよく知っている。
こんな身近に航を苦しめることがあったなんて……。

「わかりました、少し考える時間をください」
「わかりました」
「航平のお迎えは今後俺が行います」

「はい」
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