異世界で、平和を願う。

ちょこぼーらー

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99 ただいま

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 今回、藤棚さんに配達してもらうために馬を連れてきている。
 ロイ達が藤棚さんまでなら馬でも行けるだろうと判断し、お米や文机の運搬と、
 藤棚さんに行きたいと言ったファーナも乗せて山を登った。
 幌馬車とアレックスだけは休憩場所で留守番をしている。

 前日の雨はこちらでは降らなかったようで、足元がぬかるんでいたり川が増水していたりも特にない。

 闇豹の毛皮はひとまずそのままにして、華は水筒と買ったじょうろに水を汲んだ。

『アルベルトさん。これ、ゴム作る。べんり』

 ここでもゴム製品を開発すると便利だとアピールしておく。
 水筒はゴムで作ると嫌な臭いが移りそうだが、便利なのは確かなのだ。少なくとも華の陶器の代用水筒よりは。

『水筒か。確かに便利そうだ』

『すいとう』

 ファーナは川を渡ったところで馬を降りた。
 ここまでの階段を作った華をしきりに称賛していたが、川原から上がる階段はそれまでの斜面に鍬で段差を作っただけのものとは違い、石を積んだ立派なもので、自分で上りたくなったのだ。
 それでも川原から段差を上る時、ロイ達は馬に1メートルも無い段差をひょいっと上らせた。
 華はせっかく作った階段が壊れなくて良かったとこっそり思っていた。

 川原から藤棚さんへは数分の距離で、すぐに竹垣に到着した。

「ただいまー!」

 町では3泊しただけなのだが、ずいぶん留守にした感じがするのは、町でいろいろあったせいもあるだろうが、きれいにしていた竹垣の中の地面のところどころに草が生えてしまっているからだろう。

『いらっしゃい!』

 竹垣の扉を開けてファーナ達を迎え入れる。

 馬が何頭も入れるほどには竹垣の中は広くないので、堀の外で荷を下ろして運んで貰う。

 その間、藤棚さんが初めてのファーナには靴を脱いで上がってもらい、アルベルトは芽が出揃った畑に水を撒きたいと言うのでお任せをした。

『ハナ、この上はどうなっているんだ?』

 一通り荷物を運び終えたロイに尋ねられて華は首を傾けた。

 実のところ、落ち化蛇と遭遇して以来、山の上には行っていないのだ。
 華が分からないと言うと、ロイは少し見てくると馬を連れ出した。

 藤棚さんの辺りから直接登るとなると、すぐに傾斜が急になって登れなくなるので、華は茅の原を抜けた落ち化蛇と遭遇したルートを教えた。

 探索メンバーは、ロイとエドワードとマールの3人。ロイ達と、しかも馬で行くのなら華もぜひ探索チームに加わりたかったのだが、ファーナ達お客さまに留守番をさせるわけにはいかないので断念した。

 その代わり、待っている間にプリンを作ってみようと思い立った。
 それはもうシンプルに、貰った卵3っつすべてを割りミルクをどばっと入れて砂糖を混ぜるだけ。泡立て器も無いので菜箸5本くらいで一生懸命混ぜていると、シアが代わってくれたので、器や蒸し器の用意をする。

 土器のカップもそんなに数はないので、大きな器を使う。
 カラメルは絶対に失敗するので作らない。

 鍋のお湯が沸いたので、シアが混ぜてくれたプリン液を手拭いで濾しながら器に入れ、多かったのでひとつ小さな器にも入れて蒸し始める。
 火加減もよく分からないので口当たり等は考えない。
 ひとまず固まれば成功なのだ。

 蒸している間、竹をいくつか小さくして匙を用意する。
 そうしていると、庭の畑を飽きることなく見ていたアルベルトが華を呼んだ。

『ハナ、これは?』

 アルベルトが指したのは、日時計にする予定の折れた槍だった。

(槍が折れたことを聞いてるんじゃないよね…)

『え~と…』

 お日様も時間の概念も言い方が分からず何と説明しようかと、太陽や影を指したりして身ぶり手振りをした結果、何となく分かってもらえたようだった。

 すると今度はシアが、綿の種をどうするのか聞いてきた。
 狭い竹垣の中では150も植えられないのは明らかだ。

「茅の原に畑を作ります」

 竹垣の中から茅の原を指差す。

(その前に種から残った綿を取らなきゃ)
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