元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。

明石 清志郎

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29話:遺跡探索

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 「こいつは……」

 黒く光る一つ目のゴーレムがこちらを見る。今にも攻撃が来そうな感じだ。

 「みんな後ろに!」
 
 俺の声と共にみな後ろに下がる。さっきの岩はこの広間の入り口、つまり俺達が走ってきた通路の前で止まっており、それが今来た道を塞いでいて逃げ場ない。

 「お手並み拝見と行くか……」

 一歩一歩ゆっくりと歩いていると、ある一定のラインを過ぎたとこで体が光出した。

 「ゼロディメンスィオ!」

 頭の部分を空間ごと消滅させる。流石にこんなところで広域殲滅魔法を発動するわけにはいかないからな。

 「うん?」

 すると頭のない状態のままこちらに向かって襲って来たのだ。

 「あれは飾りって事か……」

 体を回収したいだけに、空間ごと全部消すのは避けたい。核の場所だけわかればいいが……

 「ちょっとジン大丈夫なの!?」
 「ああ、問題ないよ」

 殴り掛かってくるゴーレムを避けながら会話をする。

 「ちょっと体を回収したくてね。核がどこか見極めているとこさ」

 攻撃を避けると同時に体に触れ力の波動を確認する。どうやら胸の真ん中の様だな。

 「ゼロディメンスィオ!」

 核があると思われる部分をそのまま消失させる。頭部と胸の真ん中辺りを消失したゴーレムはそのまま崩れ落ちた。

 「ふぅ~みんな大丈夫だよ」

 四人を呼びつつ、崩れたゴーレムの体を調べる。

 「これは魔石か?」

 崩れた体の一部を手に取り確認する。どうやら壁の魔石と同じ物で、人工的に加工された物だ。今戦っている時にゴーレムの体に触れて驚いたのはこの魔石の硬度にあった。というのもこの魔石を使えば強度に優れた武器を作れるかもしれない。それだけでなく建物なんかも優れた物を作る事ができるだろう。

 「流石はジンね!」
 「またあのゼロディメンスィオでしたね~」
 「ハハッ、こういう場所だと広域殲滅魔法はどうしても使えないからね。これ凄い使い勝手がいいんだ」

 任意の空間に存在するのは消し飛ばしてくれる実に便利な魔法だ。この世界の魔王もこれ使えば普通に一発終了だ。

 「何の魔法が全く分からないわ……」
 「セーブル気にしては負けよ……ジンのとんでも魔法を理解するのが無理な話よ」
 「まぁ習得は難しいだろうね」

 ゼロディメンスィオを唱えるレベルにいる者がこの世界にいたら俺達二十柱の部下にスカウトするだろうな。まぁ第八位階より上の魔法を唱えられる時点で超人ですって言っているようなものだからな。

 「それでこいつの体をどうするつもり?」
 「当然回収さ。これはお宝だよ」

 身体が魔石で出来ているからな。しかもこの魔石を加工する事ができれば、強力な武器を作る事も可能だろう。

 「どういう事?」
 「こいつの体は魔石でできているんだ。だからこの魔石からシーラの武器作れるかもしれない」

 土属性だろうし、シーラの魔剣作りには持って来いだけど、問題は加工が出来るかどうかだな。

 「マジ?」
 「ああ、だから全部回収だ」

 身体の魔石を回収し、先へと進む。この先も敵だらけかと思いきやそうでもなく問題なく進む。途中途中の壁に刻まれた絵なんかを見るとクリスタルの加護を受けて繁栄していたのが良くわかる。

 「セーブル、この古代人の文字とかって解析できているのかい?」
 「ほとんど解明されてないわ……一説によれば滅ぼされたというより、消えたという説の方が高いって城では聞いたわね」

 セーブルの言う通り、もし侵略されて滅ぼされていれば、この区画が侵略されていないというのもおかしな話だ。

 「一番は土のクリスタルに語りかえれば一発でわかるだろうけど今はまだ確かめようがないからな……」
 「最下層まで行けば何かわかるかもしれないわね」
 「確かに。最下層まで後どれぐらいなの?」
 「あと八区画ぐらいかな」

 ゴーレムを倒してから何だかんだで十区画ぐらい進んだが敵が全く出てこないのもおかしな話だ。そろそろ来るだろう。

 「下にお宝あるかしら……」

 シーラは随分とお宝にこだわっているな。何か理由でもあるのだろうか。

 「かなりお宝にこだわってるようだけどお金にでも困っているのかい?」
 「い、いやそういう訳じゃないんだけどね~こういう遺跡でお宝ゲットするのにロマンを感じててさ~」
 「シーラは昔からそんな事言ってましたね~」

 ミーナがクスクスと笑う。大金が必要だとかそういう理由があるのであれば何とか力になってやらないとだからな。まだ二人の過去を良く知らないし徐々に聞いていかないとだ。

 「ハハッ、そういう事ね。でもこういうのは途中の過程にロマンがあるんじゃないかなって俺は思うけどね」
 「そうね、みんなでこうしてワクワク探索するのが何より思い出として残るし、それが宝になるわ」

 リオは俺と同じ考えのようだな。まぁ一獲千金を考えているような人からすれば、お宝が全てなのかもしれないがな。

 「それは勿論わかっているわ。ただお宝もあったらなお嬉しいでしょ!」
 
 あの魔石は金銀財宝よりも遥かに価値のある物なんだけどな……あれだけでも売るとこ売ればかなりの金になるはずだ。

 「でしたら今後旅をしながら、こういう古代文明の遺跡巡りなんかを今後やっていく?お父様に聞けば色々教えてくれるし、古代文明跡地は世界各地にあるわ」
 「それはいいかもね」
 
 今回みたく魔石なんかをゲットできれば強力な武器を作る事もできるからな。

 「それがいいわ。そうしましょう!」
 
 シーラは凄い張り切り具合だ。

 「あんまりお宝目当てというのは気が進まないけど、魔石や魔具がゲットできる可能性があるならありね」
 
 
 ◇


 下へ下へと進んでいき、最下層へと辿り着いた。今までとは違いホールのように広い大広間だ。白く光る壁には古代文字が刻まれており、奥には祭壇のような物が見えるが暗くて良く見えない。それぐらい広いのだ。

 「ここがゴールかな」

 全部回ったしこの部屋で最後だがここだけ不自然なまでに広いな。何をする部屋だったかにもよるが……

 「さてお宝~」
 「こらミーナ~」

 シーラは一人早く先に行こうとするので、ミーナはそれを止めようとシーラを追いかけたその瞬間だった。

 「えっ……」

 見えない壁が貼られシーラとミーナ、俺達三人が分断される。

 「何これ……」 

 シーラとミーナが引き返し見えない壁を叩く。どうやら声はしっかり届くらしいな。

 「これはヤバイな……」

 シーラ達のいる方から何かのうめき声が聞こえており、鋭い眼光がこちらを睨みつけていた。
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