11 / 21
【閑話】更正への道編。
❹ロゼッタ編・㊦
しおりを挟むカールの温もりを感じながら眠るもとロゼッタ犬。なんだか胸がドキドキします。もしかしてこれは恋?悪魔の時も何時だって、ロゼッタは恋多き女性だったのです。しかし誰にも本気にはなれませんでした。人のものだと欲しくなる。またイケメンだと抱かれたくなる。ただただ欲望に忠実に生きてきたのです。しかし今回は胸が高鳴り眠れないほどです。おかげで空が白み始めるころに、ようやく眠りにつきました。
しかしすぐに起こされてしまいます。外で誰かが言い争う声が聞こえてきたのです。そのあまりにも酷い喧騒に、もとロゼッタ犬は目を覚ましました。
あれ?いつも抱き締めてくれているカールがいません。まさかもうお迎えが来たのでしょうか?ベッドから飛び下り、声のする方へ向かいます。カンッ!キンッ!と、なにかの金属音が鳴り響いてきます。何ごとかと驚くもとロゼッタ犬。
「来るなー! 巻き添えになる! 」
カールがロゼを見つけ叫び声を放ちます。なにがなんだか解らないもとロゼッタ犬。すると背後からむんずと、首を敵の一人に掴まれ拘束されてしまいました。
「良し! 絶対にその犬を逃がすな! 王子の弱点だ! 飼い主を探していたらしいからな! 犬畜生になど情けをかける様な軟弱ものだから、側妃様に命を狙われるんだよ! 王子! その畜生を殺されたくなければ剣を捨てろ! 」
「きっ貴様は……」
カラン……カールが剣を投げ捨てます。
「ふっ本当に軟弱ものだ。まあ食事も録に食べていないのだろう。畜生に分け与えている様では筋肉も落ちてしまう。剣の腕が落ちても仕方ないな。しかしこれでは確かに、側妃様の第二王子様の方が王に相応しい。王は優しいだけではつとまらん。謀略や残虐性も必要なのだ! 」
もとロゼッタ犬は、ようやくこの言葉で気付きました。カールが己は我慢して、少ない食事を分け与えてくれていたのです。もしかしたら最初のころは、まったく食べていなかったのかもしれません。なぜならパンが一個しかなかったのですから。だからお腹が鳴っていたのでしょう。
「ふざけるな! 王妃たる母を毒殺し、父王にまで神経毒を盛る。それが策略だと言うのか? 単に強欲なだけではないか! ロゼを離せ! ロゼは関係ないであろうが! 」
「王は精神を病んでいる。第二王子の即位は間違いはないが、貴方に返り咲かれたりすると困るんです。王は貴方の王籍と継承権を剥奪した振りをしていました。王が臥せっている今、確実に貴方を排除するにも、王印を押せないんですよ。だから側妃様は貴方を間違いなく亡きものにしたいそうです」
「父上は私を信じていてくれたのか……」
「まああの猿芝居を信じている輩はいませんよ。ただ側妃様の後ろ楯の公爵家が怖いだけです。しかし貴方の母君も隣国の姫君でした。あの猿芝居がなければたとえ後ろ楯が強くとも、第二王子様が王太子になることはなかったでしょう。さあではご覚悟は良いですか? 」
カールの首もとに剣が迫る……
「ギャッ!ギャウン……」
もとロゼッタ犬が、血飛沫をあげて吹っ飛びました。
「ロゼ! ロゼー! なぜ! このバカ野郎……」
私は野郎じゃないわよ! 己を拘束する男の手に噛みつき逃れ、剣の前に己の身を滑らせたもとロゼッタ犬。深く斬つけられ薄れる意識の中で、心の中では検討違いな文句を垂れていました。
「殿下! 大丈夫ですか? まさか刺客が! 」
食料を運びロゼを迎えに来た男性が駆けつけます。血にまみれ赤黒く染まり、ぐったりと横たわるもとロゼッタ犬。カールはその目蓋をそっと下ろしました。
「ロゼが庇ってくれたんだ……」
「殿下……」
カールはロゼを手厚く葬りました。
ロゼッタが目を開くと、目前には閻魔大王がニンマリしながら笑っていました。
「またまた早いご帰宅だな。まあ今回はかなりまともだったがな」
うつ向き沈黙を貫くロゼッタ。
「どうした? 少しは反省したのか? あの後カールは王太子に返り咲いたぞ。王が回復したんだ。お前が見つけた貴重な薬草でな」
驚き戸惑うロゼッタ。
「側妃と第二王子。さらにはカールとやらのもと婚約者。コヤツ等は奴隷落ちだ。まあ耐えきれずにすぐに死ぬだろうから、この門を潜るもの近いだろう。たっぷり可愛がってやるから心配をするな」
心配なんてしていませんけど!それに己の死後のことを、わざわざ教えて欲しいなんて言っていないわ。別に聞かなくても良いわよ。でもまあ話したいのなら聞いてあげても良いけど? などとツンデレ思考を巡らせるロゼッタ。
「今のお前の様なものを、ツンデレ属性と言うそうだぞ。ビッチから進化したではないか。カールとやらを身を挺して救ったお前だ。恋しいのではないか? 聞かなくても良いなど無理するな。タップリ聞かせてやろう」
閻魔大王は、おちょくり弄るのがお好きな様です。
「もと婚約者は第二王子とできていたそうだ。しかもビッチで目ぼしいイケメンを喰いまくっていた。だが王家に嫁ぐのには乙女なのが必需だ。つまり第一王子とだと初めてではないとバレてしまうから、初めての相手だった第二王子に鞍替えしたらしい。どうだ?以前のお前と同じではないか? 」
なにが乙女よ! わざわざ隠語を使わなくてもわかるわよ! と、またまた思考が頓珍漢な方向に脱線するロゼッタ。しかし己が快楽に溺れ、たくさんの男性と関係を持っていたことは反省している様です。あのグランデ王子でさえ、ロゼッタと婚約すると決めたあとは、他の女性とは関係を持ってはいなかったのです。
「己のしたことは、他者を傷つけ、さらには己を貶める。これが理解できたなら大丈夫だろう」
なぜか流れ出す涙を見せまいと、うつ向いたままのロゼッタ。
「そこまで反省できればもう大丈夫だな。お前も魂を浄化して、輪廻の輪に戻そう。今までの記憶はすべてなくなり、まっさらな新しい人生だ。だがすべての経験値はその魂に刻まれとる。二度と間違いは起こさぬだろう。もちろん魂の所属する悪魔国へ産まれ変わるぞ。達者で暮らせよ」
ロゼッタはただただ涙するばかり。
もとロゼッタは魂を浄化され、輪廻の輪に戻りました。やがて悪魔国に誕生します。その子は勉学に励み、やがて国一番の博識だといわれる様になります。そして悪魔国をより良くする女博士として、国中にその名を広めたそうです。
ロゼッタさん……
私とザイールも、あなたの更正を嬉しく思います。末永い幸福を願っております。
いつか真実の愛に出会えます様に。
※※※※※※※
本編・王子sideを追加しました。全四話となります。
*******
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる