【完】天使と悪魔の政略結婚。~真実の愛は誰のもの~

桜 鴬

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【閑話】更正への道編。

❹ロゼッタ編・㊦

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 カールの温もりを感じながら眠るもとロゼッタ犬。なんだか胸がドキドキします。もしかしてこれは恋?悪魔の時も何時だって、ロゼッタは恋多き女性だったのです。しかし誰にも本気にはなれませんでした。人のものだと欲しくなる。またイケメンだと抱かれたくなる。ただただ欲望に忠実に生きてきたのです。しかし今回は胸が高鳴り眠れないほどです。おかげで空が白み始めるころに、ようやく眠りにつきました。

 しかしすぐに起こされてしまいます。外で誰かが言い争う声が聞こえてきたのです。そのあまりにも酷い喧騒に、もとロゼッタ犬は目を覚ましました。

 あれ?いつも抱き締めてくれているカールがいません。まさかもうお迎えが来たのでしょうか?ベッドから飛び下り、声のする方へ向かいます。カンッ!キンッ!と、なにかの金属音が鳴り響いてきます。何ごとかと驚くもとロゼッタ犬。

 「来るなー! 巻き添えになる! 」

 カールがロゼを見つけ叫び声を放ちます。なにがなんだか解らないもとロゼッタ犬。すると背後からむんずと、首を敵の一人に掴まれ拘束されてしまいました。

 「良し! 絶対にその犬を逃がすな! 王子の弱点だ! 飼い主を探していたらしいからな! 犬畜生になど情けをかける様な軟弱ものだから、側妃様に命を狙われるんだよ! 王子! その畜生を殺されたくなければ剣を捨てろ! 」

 「きっ貴様は……」

 カラン……カールが剣を投げ捨てます。

 「ふっ本当に軟弱ものだ。まあ食事も録に食べていないのだろう。畜生に分け与えている様では筋肉も落ちてしまう。剣の腕が落ちても仕方ないな。しかしこれでは確かに、側妃様の第二王子様の方が王に相応しい。王は優しいだけではつとまらん。謀略や残虐性も必要なのだ! 」

 もとロゼッタ犬は、ようやくこの言葉で気付きました。カールが己は我慢して、少ない食事を分け与えてくれていたのです。もしかしたら最初のころは、まったく食べていなかったのかもしれません。なぜならパンが一個しかなかったのですから。だからお腹が鳴っていたのでしょう。

 「ふざけるな! 王妃たる母を毒殺し、父王にまで神経毒を盛る。それが策略だと言うのか? 単に強欲なだけではないか! ロゼを離せ! ロゼは関係ないであろうが! 」

 「王は精神を病んでいる。第二王子の即位は間違いはないが、貴方に返り咲かれたりすると困るんです。王は貴方の王籍と継承権を剥奪した振りをしていました。王が臥せっている今、確実に貴方を排除するにも、王印を押せないんですよ。だから側妃様は貴方を間違いなく亡きものにしたいそうです」

 「父上は私を信じていてくれたのか……」

 「まああの猿芝居を信じている輩はいませんよ。ただ側妃様の後ろ楯の公爵家が怖いだけです。しかし貴方の母君も隣国の姫君でした。あの猿芝居がなければたとえ後ろ楯が強くとも、第二王子様が王太子になることはなかったでしょう。さあではご覚悟は良いですか? 」

 カールの首もとに剣が迫る……

 「ギャッ!ギャウン……」

 もとロゼッタ犬が、血飛沫をあげて吹っ飛びました。

 「ロゼ! ロゼー! なぜ! このバカ野郎……」

 私は野郎じゃないわよ! 己を拘束する男の手に噛みつき逃れ、剣の前に己の身を滑らせたもとロゼッタ犬。深く斬つけられ薄れる意識の中で、心の中では検討違いな文句を垂れていました。

 「殿下! 大丈夫ですか? まさか刺客が! 」

 食料を運びロゼを迎えに来た男性が駆けつけます。血にまみれ赤黒く染まり、ぐったりと横たわるもとロゼッタ犬。カールはその目蓋をそっと下ろしました。

 「ロゼが庇ってくれたんだ……」

 「殿下……」

 カールはロゼを手厚く葬りました。

 ロゼッタが目を開くと、目前には閻魔大王がニンマリしながら笑っていました。

 「またまた早いご帰宅だな。まあ今回はかなりまともだったがな」

 うつ向き沈黙を貫くロゼッタ。

 「どうした? 少しは反省したのか? あの後カールは王太子に返り咲いたぞ。王が回復したんだ。お前が見つけた貴重な薬草でな」

 驚き戸惑うロゼッタ。

 「側妃と第二王子。さらにはカールとやらのもと婚約者。コヤツ等は奴隷落ちだ。まあ耐えきれずにすぐに死ぬだろうから、この門を潜るもの近いだろう。たっぷり可愛がってやるから心配をするな」

 心配なんてしていませんけど!それに己の死後のことを、わざわざ教えて欲しいなんて言っていないわ。別に聞かなくても良いわよ。でもまあ話したいのなら聞いてあげても良いけど? などとツンデレ思考を巡らせるロゼッタ。

 「今のお前の様なものを、ツンデレ属性と言うそうだぞ。ビッチから進化したではないか。カールとやらを身を挺して救ったお前だ。恋しいのではないか? 聞かなくても良いなど無理するな。タップリ聞かせてやろう」

 閻魔大王は、おちょくり弄るのがお好きな様です。

「もと婚約者は第二王子とできていたそうだ。しかもビッチで目ぼしいイケメンを喰いまくっていた。だが王家に嫁ぐのには乙女なのが必需だ。つまり第一王子とだと初めてではないとバレてしまうから、初めての相手だった第二王子に鞍替えしたらしい。どうだ?以前のお前と同じではないか? 」

 なにが乙女よ! わざわざ隠語を使わなくてもわかるわよ! と、またまた思考が頓珍漢な方向に脱線するロゼッタ。しかし己が快楽に溺れ、たくさんの男性と関係を持っていたことは反省している様です。あのグランデ王子でさえ、ロゼッタと婚約すると決めたあとは、他の女性とは関係を持ってはいなかったのです。

 「己のしたことは、他者を傷つけ、さらには己を貶める。これが理解できたなら大丈夫だろう」

 なぜか流れ出す涙を見せまいと、うつ向いたままのロゼッタ。

 「そこまで反省できればもう大丈夫だな。お前も魂を浄化して、輪廻の輪に戻そう。今までの記憶はすべてなくなり、まっさらな新しい人生だ。だがすべての経験値はその魂に刻まれとる。二度と間違いは起こさぬだろう。もちろん魂の所属する悪魔国へ産まれ変わるぞ。達者で暮らせよ」

 ロゼッタはただただ涙するばかり。

もとロゼッタは魂を浄化され、輪廻の輪に戻りました。やがて悪魔国に誕生します。その子は勉学に励み、やがて国一番の博識だといわれる様になります。そして悪魔国をより良くする女博士として、国中にその名を広めたそうです。

 ロゼッタさん……

 私とザイールも、あなたの更正を嬉しく思います。末永い幸福を願っております。

 いつか真実の愛に出会えます様に。

 ※※※※※※※

 本編・王子sideを追加しました。全四話となります。

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