【完】真実をお届け♪※彷徨うインベントリ※~ミラクルマスターは、真実を伝えたい~

桜 鴬

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【さん・Ⅲ】

乙女ゲーム・ヒロインが!転生者編⑧・END

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 私は再度隣室へ向かう。既に故レイズ男爵の棺は部屋には無かった。いつかお花を供えにゆこう。私こそ最期に貴方に会えて良かった……。
 目前に箱が置かれる。レイズ男爵のインベントリから出てきたもの。箱の上部にフローラ嬢へと記入されていた。私は箱を前にし、手をあわせた。
 「箱を開ける前に説明するよ。その箱の中身はレイズ男爵からの遺産分与となっている。しかし正確に言えば、キングス公爵夫妻からの形見分けになる。公爵家はお取り潰しになった際に、殆どの財産は国に接収された。ただし夫妻の個人的財産は、子供である君たちに残された。兄の分は養父となった男爵に渡され管理されていた。借金で跡形もなく消えていたけどね。フローラの分は王家で預かっている」
 兄には養父である男爵と実の両親からの、個人的財産の遺産分けがあった。私には王家が実の両親からの遺産分けを預かっている。ではこのレイズ男爵名義となる遺産分与とは?実の両親からの形見分けとなるというこの箱はなに?
 「まあ。とにかく開けてみてくれ」
 私は頷き箱の蓋を外す。中はかなり頑丈に梱包され、大きな箱はみるみる小さくなり、最期には両腕で抱えられるくらいの鞄になった。この鞄が形見分けなの?銀色でただの四角いケースに、取ってと鍵が付いただけのもの。
  「そしてこれが鍵だよ。その首もとの魔道具のネックレスと共に、男爵からの王家への陳情書の文箱に入れられていた。公爵夫妻は納品に間に合わないのを理解していた。だから男爵に引き取りと補完を任せたそうだよ」
 鍵を手渡され鍵穴へさし込む。カチャリと音がしてケースが開く。蓋を開けると、またまた頑丈に真っ白な綿が敷き詰められている。その綿を少しずつ取り外してゆくと、クリーム色の布地が現れた。布地を外そうとした所で待ったがかかった。ビックリして振り向くと第一王子様がいう。
 「種明かしをしてしまうけど、中身は魔道具なんだって。しかしかなり精巧に作ってしまった。偏屈な魔道具職人が、己も子供たちと離ればなれだからと渾身の力をこめて作製した。さらには本人たちが受け取りに来れない遺品となるとのことで、熱をこめすぎてヤバイくらいの品だそうだ。死体ではないから驚かないでね? 」
 何だか聞いたようなお話ね。まさか魔道具職人って、あのおじいさんかしら?いえ、おじさんだったわね……
 とりあえず開いてみよう。
 すべての綿を取り除き、クリーム色の布地を外すと…………思わず絶句してしまう…………だって……白ちゃん……
 「しっ白ちゃん?白ちゃんは死んだのよ。私の部屋にどこからか入り込んで来て、一週間くらい部屋にいたの」
   でもメイドに見付かり、聞き付けた母に棒で叩かれて……逃げ出したけれど、庭で冷たくなっていたとそのメイドに聞かされた。メイドが出入りする際に部屋に入り込んだのだろうと、以降メイドも部屋には来なくなった……
 私はそっと白ちゃんを撫でる。真っ白なフワフワの毛なみ。肌も暖かくはないけど柔らかい。そっと抱いて箱から出すと、体の芯が固くてやはり魔道具だと感じる。でもフワフワで柔らかい。こんな魔道具が有るなんて…………
 「白ちゃんにソックリ。抱けるなんて夢みたい。あのときの白ちゃんには、私からは触れられなかったから……」
 私の部屋には食べ物がまったくなかった。私が勝手に白ちゃんと名付けたあの白猫ちゃんは、きっと迷いこんでしまったのだろう。常に部屋の中を歩き回り時おり壁をカリカリして、毎日出口を探し続けていた。メイドの足の隙間をくぐり抜けた際には、この子は自由に戻れると喜んでいたのに…………
 「このネックレスが君との絆になる。裏側に魔力認証の陣が刻まれているから、そこに血を一滴垂らしてほしい。それを猫型の首に装着すれば、君の魔力を自動供給して動くそうだ。作った職人も己で絶賛していたという、世界でも類をみない精巧さだそうだ」
 私は促されて小指を刺し、ネックレスのヘッドの裏に血を垂らす。透明な石だった楕円の飾り石が、徐々に真っ赤に染まってゆく。それをそっと白ちゃんの首にかける。
 すっと私の魔力が抜ける気配を感じた。白ちゃんに魔力が流れているのだろう。ピクリと白ちゃんが動いた。
 「魔道具としての正式名は、モフ白魔猫と言うらしい。そのまんま、モフモフな白い魔道具の猫からの名付けだな。それはご両親からの形見わけだ。ご両親も君が居なくなってから後悔していた。兄が健康になり、君が要らなくなったから売り飛ばしたのではないんだよ。兄の医療費の借金が嵩んでいたんだ。侯爵夫妻は生真面目だったから、民への増税などは一斎行わなかった。だからこそ闇組織に利用されてしまった。貴族らしい貴族だったんだよ。領民にとっては良い領主だったんだ。処刑の日には沢山の民たちが君たち家族を思い、涙を流したそうだからね」
 私たちが病弱と魔力過多で産まれなければ…………父と母が理解しあい、養子の話などを交わしていれば……貴族の柵が心を壊さなければ…………
  後悔先に立たずよね。
  「にゃんっ!フローラ初めましてニャー。言伝てにゃ! 」
  白猫が飛び上がり、突然話始めた。

  ーーーフローラすまない。謝ってももうどうしようもないことは理解している。だからどうか私たちを許さないで欲しい。恨んだままで良い。君の幸せだけを願っている。いつか兄ともあってやってくれ……兄には君の魔力を与えたことは知らせていない。どちらも病弱ならば、男子を選んだと伝えたんだ。なぜ会わせてくれないのとせがまれた。しかし君の状態を見せることは出来なかったんだ…………

  ーーー私は己の罪深さを知られたくなかった。息子を失うのが怖くてがんじがらめにしたの。だって人は変わるもの。婚約者も私を信じてくれずに捨てた。私は愛していたの。だから辛い王妃教育にも耐えたわ。貴族らしく正しくあれ。そう教えられ、女がてらに領地経営から全てをこなした。あなたたちのお父様は良い人よ。こんな私を愛してくれた。私が頑なだったから不幸に巻き込んでしまったの。貴方たちから父親を奪ってごめんなさい。駄目な母親でごめんなさい。私を憎んでもいいの……でも……我が儘だけど……私を忘れないで欲しい。憎まれても忘れられたくないの……心優しい王妃様に有り難うと伝えて下さい。王様にはいい加減にしっかりしろと伝えて……私は当時、精神異常解除の付加された魔道具をプレゼントしたの。でもつけて貰えなかった。きっとあれがあれば、私の冤罪はなかったでしょう。私をまったく信じてくれなかったとは思いたくない。でも私たちは信頼を築けなかった。でもね?性格は中々直らないのよ。好きな人にはキツく当たってしまう。貴方たちの父親はわかってくれたの。嬉しかったわ。あなたたちも幸せになってね…………本当にごめんなさい……

 「これの猫型魔道具は、君が闇組織に連れていかれてから、ご両親が製作を依頼していたらしい。しかし製作には時間がかかる。それでもと注文したそうだ。夫妻は己たちの罪を理解していた。だから受け取りと支払いを男爵に頼み、男爵経由にすることで、もしもの時に国に接収されぬようにしたんだね」
 お父さんとお母さんは、己たちがやがて裁かれるだろうことを理解していたのね。だから白ちゃんを……
 「しかしビックリだね。今のメッセージは録音だよね。この足の裏に、記憶の魔方陣が刻まれている。後で別の記憶媒体に写しても良いかい? 」
 「大丈夫にゃーん」
 「しかも人工知能まで組み込まれている。魔道具を猫型にし動かすだけでなく、毛並みに人工皮膚まで。魔力が注入されると、人肌の温もりまでかんじる。本当に最高な魔道具だね。フローラ。今日から君の相棒だよ」
 お母さん……白ちゃんを叩いたことを後悔してくれていたの?だから白ちゃんなの?良く考えてみたら、やはり元凶は王様なのね。婚約者からプレゼントされた物を身に付けないって何様なの?当時は王太子様だけど、婚約しているならキチンと義務は果たすべき。それでも駄目なら、内輪で解決するべきだった。やっぱり王様は……
 「フローラ……父王にはしっかりと釘を指しておく。まさか魔道具を放置していたとは……本当にどうしようもない父親だな……」
 「兄上……私も恥ずかしいです。これは母上にお伝えするべき案件です。しかるべき対処をして貰いましょう。フローラ。申し訳ないけど、それで許して欲しい……」
  「私は大丈夫! でも王様の顔見たら殴っちゃいそうだから、暫くは近寄らないよ。こちらにも近寄らせないで!不敬罪に問われるのは嫌だよ。私は今まで通りにミラクルマスターで旅が出来ればそれで良いよ! だから気にしないで! お兄さんも……直ぐに仲よくは無理だろうけど、落ち着いたらお城に連絡を頂戴。私は旅しているけど、途中で寄らせて貰うわ。そのときは宜しくね! 」
 室内が静かだね。皆の鼻を啜る音が響いてるよ。自称ヒロインさんだけは何故か大泣きだけどどうしたの?
 一人になってしまった?一人じゃなにもできない?それは……
 「バカな夢からは覚めたんだろ? 婚約は破棄されているが、一時は兄妹で婚約者だったんだ。私が暫くは面倒をみてやる。せめて洗濯に掃除に料理の炊事ぐらいは出来んと、庶民としては嫁にも行けんぞ! 前世とやらでも家事はしなかったのか? 」
 「……………………」
 自称ヒロインには、家事能力は全くなかった……。
  パンッと手を打ち合う音がした。第一王子様が話し出す。
 「悪いが自称ヒロインには、先に罪を償って貰わねばならない。結婚詐欺擬きの金銭的な問題は、男爵よりの遺産で清算済みだ。しかし手を下してはいなくとも、自殺者をかなりだしてしまった。その罪は償わねばならない。魅縛の瞳の永久封印か、制御を完璧にし王家に仕えハニートラップ要員になるか……どちらかを選べ」
 え?えぇーー。ハニートラップ要員って……それは幾らなんでも……
 「魅縛の瞳はやっかいなんだ。制御をしても、気を抜くと垂れ流すからな。だから封印のみで罪を流すといっている。これでも夢から覚めて反省をしたようだからと、随分刑を軽くしたんだからな。選択肢があるだけマシだと思いなさい! 」
 自称ヒロインはウンウン唸っている。これって悩むことなの?
 「ハニートラップはどこまで? 」
 「アホか貴様は! 諜報は情報を仕入れてなんぼだ。魅縛の瞳だけで済めばそれでよい。貴様の腕次第だ。しかし無理だろうな?貴様はすでに女の武器を使いまくっていたそうだな。どうせなら観念してその技術をを活用したらどうだ?モテモテ敏腕女スパイの誕生だぞ」
 それは嫌だわ…………私ならぜったいに嫌よ。敵方に捕まった際の、女性スパイの扱いは酷いんだから!
 パシンッ!部屋に頬を叩く音が響く。
 兄さん…………
 「お前は! 本当にそこまでしていたのか! 義父はお前のことを本当に心配していたんだ。それらの噂は聞いていたが、流石にそこまでする子ではないと信じていたんだぞ!妄想癖が酷いことや、フラフラと異性をたぶらかすのは、きっと寂しいからではないかと、私を婚約者に据えた。私はお前を更正しようと試みたが、全く相手にされなかったな。イケメンとやらでは無いからだろうな……」
 お兄さん?お兄さんも十分イケメンの部類に入ります。ただ自称ヒロインの好みは、なよっとしたタイプと言うか……それプラス高い地位みたいよ。
 「私は男爵なんて低い地位は嫌なの!だって王家主催のパーティーだと、伯爵以上じゃないと招待されない場合も多いのよ! 」
 伯爵もなにも……もう男爵令嬢でもないのに……
 「すみません! コイツは永久封印でお願いします。その後野放しは不味いので、行儀作法で厳しい、北方の修道院にでも突っ込んで下さい。反省し行儀作法が身に付いたなら、私が責任をもち引き取ります。もちろんそれまでに私も、キチンと身を立てます」
  兄さんも苦労性だね。なにもそんなおバカを引き受けることはないのに……それとも、バカな子ほど可愛いのかしら?
 「きっとそうだにゃん!バカな子ほど可愛いんだにゃぁぁー」
 自称ヒロインは、兄の懇願どおりとなる。反省して修道院を出られたかは……私にはわからない。いつか兄の家でひょっこり会えるかもしれない。
 「フローラ?私の名前をつけてにゃ?」
 名前?正式名称は、モフ白魔猫ちゃんよね?なら白ちゃんでは駄目かしら?
 「白ちゃん? 」
 「もう一声欲しいにゃん! 」
 「モフ白ちゃん? 」
 「…………まぁ良いにゃん……」
 「「「ビミョーなセンスだな」」」

 こうして王家へのパーティー参加が、何故か両親からの遺品と兄との邂逅となりました。まだまだわだかまりはあるけれど、誰にでも間違いはあるはず。私も沢山の間違いを犯して来たのだろう。でも私は今の私が一番好き!これからの私も、より好きになりたいの。だから頑張る!ミラクルマスターとしてね。
 「てな訳で第一王子様。仕事の手配をお願い致します。第四王子様も後は宜しくね。私はまた旅に出るからね」
 「「……………………」」
 「おい?大丈夫か? 」
 「いや。どう見ても無理だろう」
 何よ!今まで通りじゃない。何が駄目なのよ!
 「今回からは相棒のモフ白ちゃんもいるのよ。各種防御の魔道具は所持してるし、今まで以上に心配は無いわよ」
 私の言葉に兄が反応する。
 「旅は無理だな。とりあえず服は全て買い直さねばならないな。それにまだ少し幼いとは言え、その姿で旅をするのか?今までは子供に見られて大丈夫だったかもしれない。しかし今は暴漢にも襲われるぞ。若い女の一人旅なんて、襲って下さいといっているようなもんだ」
 ……………………兄さん……それは世間での一般論です!ミラクルマスターには適用されません!私たちは国のお墨付きなの。控えおろうのインロウ擬きが有るんだから!私たちを害すると、厳しい裁きを喰らうのよ。
 「とりあえず服を作り直すまでは旅は中止だ。城勤めでも、ミラクルマスターの仕事はある。それにインロウも理性の前には効果がない。急に成長したから慣れも必要だ。我慢しろ」
 …………酷い……でも確かに慣れは必要ね。暫くはお城の訓練ルームを借りよう。お城の私の部屋も久し振りだし、第一王子様の言うことに間違いはないしね。
 「はーぃはぃ。了解しましたー」
 「はぃは一回だ! 」
 ゴインと拳骨が落下してきた。痛い……

*****

  別れ際に兄さんと手を握り会う。
 「胸を張って妹の前に立てるように頑張るよ。元気でな」
 「兄さんこそ元気で頑張って。私はまた絶対に旅に出るからね。会いに行くまでに立派になっててね」
 握ったままの手をほどき、背中を向け歩き出す兄の後ろ姿に手を振った。兄はもう振り返らなかった。しかしその肩は震えていた。
 「泣くなんて男らしくないぞー」
 叫んでみたけど、もう届かないだろう……。きっと私が訪問するときには、立派な人になっているよね?兄さん。
 私も負けずに頑張るよ!

 *****
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