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「ーーずいぶんと気を使うじゃないか……?」
足を組んで椅子の肘掛けに頬杖を付きながら、訝しげに言うフィリップ。
自分の知っている相手であれば、あの程度の嘘偽りは息をするように口から吐き出す男だった。
「……相手がボスハウト家であるからでしょうか?」
パトリックも首を傾げながら考えを話す。
しかし、やはり自分の知っているゼクスであれば、ボスハウトだろうがパラディールだろうが、金にならない敬意を払うような男だとは思えなかった。
「ーー事実は小説よりも奇なり……とも申しますが……?」
おずおずと小さな声で紡がれたラルフの言葉に他の三人の動きが止まり、互いに忙しなく視線を交わし合う。
このラルフの言葉は、遠回しな恋の話を指すことが多い。
つまり今回の場合においては「大変珍しい状況だとは思いますが、ラッフィナート男爵がリアーヌ嬢に思いを寄せているのではありませんか?」と言うような意味合いになるのだろうーー
「ーー特殊すぎるだろう?」
「……だから王命で婚約止まり……ーーまさか本当に恋人気分を謳歌したいと……⁇」
「ーーウソは……無かったはずなんです……」
三人は混乱したように視線を交わし合いながら、好き勝手なことを言い合う。
ゼクスの自身のことなどなんの興味もなかった者たちしかいない集まりであったからこそ、ゼクスの女性の趣味の情報など、カケラも持ち合わせてはいなかった。
「ーーあったとしても、狙いは本人ではなくてギフトのほうなのではないか?」
フィリップは眉間に皺を寄せ、唸るように自分の意見を話す。
なぜだかゼクスが恋や愛などという言葉で動くような人間ではないと信じていた。
「……よそ見をしてヘソを曲げられるよりはーーですか?」
パトリックの相槌にフィリップは頷きながら話を続けた。
「平民とはいえ、あそこまで大きくなった家だ、そろそろ貴族との縁組みも視野に入れ政略結婚の心得程度は教え込んでいてもおかしくはない……」
「ーーなるほど。 向けているのは恋や愛ではなく、思いやりと信頼ですか」
パトリックの言葉に大きく頷くフィリップ。
“思いやり”に“信頼”これは、貴族同士の結婚に愛や恋は必要ないと言い含められる時によく聞く言葉だった。
『恋愛と結婚は違う。 恋や愛は恋人へ…… 自分の伴侶へは思いやりと信頼を持って、誠実な対応をするんですよーー』
貴族の子息や令嬢たちならば、確実に一度は言われたことのある言葉だった。
「ーーあのご令嬢に信頼を……?」
ボソリと呟かれたラルフの言葉に、他の三人がふふふっと笑いを漏らす。
「あっすみません……」
自分の口を押さえながら眉を下げるラルフ。
彼の口には少々迂闊なところがあるようだった。
そんな友人の態度や、幼馴染と言っても過言ではない気安い関係性の者たちしかいない空間ということもあり、その笑い声はどんどん大きくなっていき、四人は涙が滲むほどに笑い合うのだった。
足を組んで椅子の肘掛けに頬杖を付きながら、訝しげに言うフィリップ。
自分の知っている相手であれば、あの程度の嘘偽りは息をするように口から吐き出す男だった。
「……相手がボスハウト家であるからでしょうか?」
パトリックも首を傾げながら考えを話す。
しかし、やはり自分の知っているゼクスであれば、ボスハウトだろうがパラディールだろうが、金にならない敬意を払うような男だとは思えなかった。
「ーー事実は小説よりも奇なり……とも申しますが……?」
おずおずと小さな声で紡がれたラルフの言葉に他の三人の動きが止まり、互いに忙しなく視線を交わし合う。
このラルフの言葉は、遠回しな恋の話を指すことが多い。
つまり今回の場合においては「大変珍しい状況だとは思いますが、ラッフィナート男爵がリアーヌ嬢に思いを寄せているのではありませんか?」と言うような意味合いになるのだろうーー
「ーー特殊すぎるだろう?」
「……だから王命で婚約止まり……ーーまさか本当に恋人気分を謳歌したいと……⁇」
「ーーウソは……無かったはずなんです……」
三人は混乱したように視線を交わし合いながら、好き勝手なことを言い合う。
ゼクスの自身のことなどなんの興味もなかった者たちしかいない集まりであったからこそ、ゼクスの女性の趣味の情報など、カケラも持ち合わせてはいなかった。
「ーーあったとしても、狙いは本人ではなくてギフトのほうなのではないか?」
フィリップは眉間に皺を寄せ、唸るように自分の意見を話す。
なぜだかゼクスが恋や愛などという言葉で動くような人間ではないと信じていた。
「……よそ見をしてヘソを曲げられるよりはーーですか?」
パトリックの相槌にフィリップは頷きながら話を続けた。
「平民とはいえ、あそこまで大きくなった家だ、そろそろ貴族との縁組みも視野に入れ政略結婚の心得程度は教え込んでいてもおかしくはない……」
「ーーなるほど。 向けているのは恋や愛ではなく、思いやりと信頼ですか」
パトリックの言葉に大きく頷くフィリップ。
“思いやり”に“信頼”これは、貴族同士の結婚に愛や恋は必要ないと言い含められる時によく聞く言葉だった。
『恋愛と結婚は違う。 恋や愛は恋人へ…… 自分の伴侶へは思いやりと信頼を持って、誠実な対応をするんですよーー』
貴族の子息や令嬢たちならば、確実に一度は言われたことのある言葉だった。
「ーーあのご令嬢に信頼を……?」
ボソリと呟かれたラルフの言葉に、他の三人がふふふっと笑いを漏らす。
「あっすみません……」
自分の口を押さえながら眉を下げるラルフ。
彼の口には少々迂闊なところがあるようだった。
そんな友人の態度や、幼馴染と言っても過言ではない気安い関係性の者たちしかいない空間ということもあり、その笑い声はどんどん大きくなっていき、四人は涙が滲むほどに笑い合うのだった。
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