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 時たま耳に入ってくる会話があまりにも不穏すぎて(言葉のキャッチボールというよりもドッチボール……)という感想をいだいたリアーヌ。

(この調子ではケジメなんて付けられないんだろうな……)

 そう諦めかけていたのだが、そろそろ日が暮れ始めるーーといった頃合いになると突然、カタンッと唐突に立ち上がった二人。
 目を丸くしてゼクスとフィリップを眺めていると、お互い素晴らしく不機嫌な表情を浮かべたまま、ほんの一瞬だけ触れ合う握手を交わし合っていた。
 ーーそしてそのまま会話は終了した。
 白々しいほどの笑顔を浮かべ合い、別れの挨拶を交わし合うと、そのまま視線を合わせることもなく別れたのだったーー

 一体なにが起こったのか全く分からなかったリアーヌだったが、帰りの馬車の中で、金銭ではないがラルフにはちゃんとお礼のを受け取ってもらえたのだという説明をされ、ホッと息も漏らしたのだった。

(本当に私の借金になってないかどうか、ちゃんとヴァルムさんにも確認して貰ったし! ーー働きに出る前に借金抱える羽目にならなくて本当に良かった……)



 ゼクスたちが立ち去った直後のパラディール家サロン内。
 イザークとラルフは立ち上がってフィリップとパトリックに給仕をしていた。

「ーーもう少し引き出せるかと思ったが……」
「さすがはラッフィナートと言ったところでしょうか?」

 げんなりとした表情で頬杖をつきながら言ったフィリップに、パトリックが苦笑いを浮かべながら相槌を打つ。
 フィリップは無言で肩をすくめると小さく鼻を鳴らしながら、ラルフが入れ替えたばかりのティーカップに手を伸ばした。

「ーー僕が最初から上手くやっていれば……」

 壁際に控えていたラルフがしょんぼりと肩を落としながら言った。
 しかし、その言葉に他の三人は苦笑を浮かべるしかなかった。

は仕方あるまい……ーーヤツですら制御出来ないと諦めて私との交渉に切り替えたんだぞ……?」

 ため息混じりにそう言ったフィリップの言葉に、あの時の二人のやりとりを思い出したのか、フィリップたちはクスクスと笑い合う。

「ーーあの時の言葉にウソはありませんでした」

 一人笑えずにいたイザークが、他の三人がひとしきり笑い終わった後でそっと伝えた。

「ーーヤツの言葉か?」
「正確にはどちらも、です」
「ーーまぁ……リアーヌ嬢に関しては……演技であればいっそ天晴れでしょうね……?」

 イザークの答えにパトリックが冗談めかして答えるが、言っているパトリックですら今一番、関心があるのはそこでは無かった。
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