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第4章
上海の憲立兄(16P)<エピソード>
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浪速は、芳子を持て余し、彼女を兄に押し付けた。芳子は、浪速から託された手紙を持って、日本から、船に乗り、上海にいる兄の憲立を訪ねた。その手紙は『断ち難い思いを断って芳子を返す』と書いただけの、そっけないものだった。
憲立は、手紙と丸坊主になった芳子を交互に見比べて……深いため息をついた。
「芳子、好きなだけここにいろ」
「ありがとう。でも、ぼくは、大連の家が好きだ。あっちで、暮らすよ」
芳子が、兄の家に留まらず大連で暮らし始めたのには、誰にも言えない訳があった。
山家である。大連には陸軍の駐屯地がある。
バッタリ彼に会えるかもしれない―――
そんな、芳子の事情を憲立は、知る由もない。
「そうか。大連市は、日本が租借権を持っている所だ。
日本の雰囲気があって、芳子には、暮らしやすいのだろう。
それにしても……あそこの、露天市場を川島さんが管理して、ちゃっかり儲けているそうじゃないか?」
「お養父様の才覚で、親王家も助かっているのに、そんなふうに、言うべきじゃない」
「ふむ…アイツは俺達を金蔓と思っている。あやしいものさ。
ところで、芳子?…ピストル自殺をしたと、聞いていたが…元気そうだな」
「ははは。僕の身体には、まだ、玉が残っている。でも、へいちゃらさ」
「なんてことだ!銃弾をそのままにしておいたのか?!北京にいい病院がある。そこで取ってもらいなさい」
「北京?随分遠いじゃないか?弾丸は肩甲骨で止まっている。大丈夫だ」
「北京の同仁会病院は清朝と縁が深い。あそこの病院長に頼んでおこう」
やはり、血を分けた兄である。憲立は、北京で手術に立ちあい、そのあと、芳子を大連まで送っていった。
憲立は、手紙と丸坊主になった芳子を交互に見比べて……深いため息をついた。
「芳子、好きなだけここにいろ」
「ありがとう。でも、ぼくは、大連の家が好きだ。あっちで、暮らすよ」
芳子が、兄の家に留まらず大連で暮らし始めたのには、誰にも言えない訳があった。
山家である。大連には陸軍の駐屯地がある。
バッタリ彼に会えるかもしれない―――
そんな、芳子の事情を憲立は、知る由もない。
「そうか。大連市は、日本が租借権を持っている所だ。
日本の雰囲気があって、芳子には、暮らしやすいのだろう。
それにしても……あそこの、露天市場を川島さんが管理して、ちゃっかり儲けているそうじゃないか?」
「お養父様の才覚で、親王家も助かっているのに、そんなふうに、言うべきじゃない」
「ふむ…アイツは俺達を金蔓と思っている。あやしいものさ。
ところで、芳子?…ピストル自殺をしたと、聞いていたが…元気そうだな」
「ははは。僕の身体には、まだ、玉が残っている。でも、へいちゃらさ」
「なんてことだ!銃弾をそのままにしておいたのか?!北京にいい病院がある。そこで取ってもらいなさい」
「北京?随分遠いじゃないか?弾丸は肩甲骨で止まっている。大丈夫だ」
「北京の同仁会病院は清朝と縁が深い。あそこの病院長に頼んでおこう」
やはり、血を分けた兄である。憲立は、北京で手術に立ちあい、そのあと、芳子を大連まで送っていった。
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