嘘彼

あめ

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青葉香る

入寮の日6

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その後、これ以上影千加からセクハラされまいと逃げるように部屋に閉じこもり、自分の荷物を解くこと約3時間。
ちょっと疲れてきた俺は、背伸びをしながら改めて辺りを見渡した。
床にはまだ整理されていない本やら漫画やら服やらが溢れているけど、十分過ぎるほどに広いこの部屋に問題なく収まるだろう。

ぼんやりと視線を外に向ければ、空は薄っすらとオレンジ色になっている。
この部屋は、夕方になっても窓から陽が差すような方角にあるらしい。
時計の針はそろそろ17時を指そうとしているが、当分の間は電気をつけなくても大丈夫そうだ。

飲み物でも飲むかな。

一息つこうと思い立ち、部屋を出てリビングと一体になっているキッチンに向かった。
まだ来たばかりだから水ぐらいしかないけど、まあそれは仕方ない。
並々と注いだコップを片手にボーッとしていると、ガチャッと音がして影千加がリビングに来た。


「あ、おチビ。そろそろ食堂行かねぇ?」

「それは、行くんだけど…。」

「なぁに。」

「影千加と行くのは気が進まない。あとチビ言うな。」

「なるほど。」


そう言って面白そうに笑うコイツにまたイラッとしていると、ふいに右手を取られた。
驚いて視線を辿れば、その手の先には影千加の左手。
理解しようと頭を働かせていると、その状態のままぐいっと体まで引っ張られる。


「ちょ、待って、何なのこの手は?」

「本当に気が進まないかどうか実際に検証してもらおうかと思いまして。如何かな?」

「もう答え出た!やっぱり無理!なんで男と手繋いで行かなきゃなんないの。」

「ここにはこういうノリの奴なんかわんさかいるぜ?男子校のノリってやつ。だから一々気にすんな。
お前、こうでもしなきゃ脱兎の如く逃げそうだし。」

「よく分かってるね。というか僕、知り合いが迎えに来るかもしれないし本当に無理。」

「あっちで落ち合えばいいじゃん。」

「影千加と食堂行くことは確定してるの?」

「そうだな。」

「おかしくない?」


必死に抵抗するけど、悲しい哉、全く逃げられない。
ずるずると引きづられ、ついにはそのまま部屋の外に出てしまった。

力で敵わないと判断した僕は、渋々影千加に連れられて一階のこれまた広すぎる食堂まで来た。
受付の時にもらった資料によると、ここの食堂は食券形式らしい。
入寮して直ぐは部屋に食料が無いということもあり、今日から新一年生も使える事になっている。
だからなのか、まだ夕食には早めの時間帯だけど人は多い。
その中にはオドオドとしている初々しい子も結構いるし、そんな子たちを助けている先輩の姿もたくさんある。
ざわざわとした心地よい騒音を聞きながら周りの様子を見つつ歩いていると、前を歩いていた影千加が空いている席を見つけて、僕たちはそこに腰を下ろした。
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