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「っ、ご、御冗談を……」


 そのとき、いつもクールで、笑うことがあっても微かにしか笑わないシュラが、顔を真っ赤にしてアテナの腕の中で小さく丸まった。
 その姿、いつも凛々しく強く気高い男騎士である彼からはかけ離れた姿であり、そのギャップがさらにアテナの理性を決壊させた。


「っ、ゃ、シュラ!」
「は、はい……」
「わ、私の男になってもらいたいの……あ、あなたに……」
「……ッ!?」

 勢いに任せて言ってしまったアテナ。
 しかし、後悔はないと顔を赤らめながらも真剣にシュラを見つめ、王子様抱っこしているその手に更に力を入れた。


「姫様……御冗談を……自分のような可愛くもない、男らしさもない男に、白馬に乗ったお姫様が迎えに来てくれるなどというおとぎ話のようなことはありえません」

「何度も言わせないで。あなたはかわいい! 私が保証するわ。その証明を……今、あなたの唇に……」

「姫様……」


 その真剣な眼差しにシュラも自然と惹かれ、やがて二人は……

「……姫様……」
「シュラ……」
「あの……その……」
「ん?」
「先ほどから……自分の股を……鷲掴みにするのは……」
「……ふぇ? ん? はう!? この柔らか固いのは……はうわ!?」

 二人の唇が重なるかと思われた次の瞬間、いつものクールな眼差しが更に冷たくなったシュラがアテナを睨んでいた。
 それは、王子様抱っこしていたアテナの手が、無意識のうちにシュラの股を触っていたからだ。


「しま、ちが、これはワザとではないわ! その、だ、だから、違うのよ、シュラ! あ、あなたの、た、大切な場所を握ってしまったのは―――」

「エッチです、姫様……自分にエッチなことはやめていただきたい! 自分は男を捨てた身です。この身はただ帝国の平和のために生涯捧げるものです」

「ち、違うのよぉ!」


 誓ってワザとではない。これは不慮の事故である。
 このまま誤解されてはダメだと、アテナは慌ててシュラに分かってもらおうとしたのだが……

「あれ? でも……」

 そのとき、アテナはあることに気づいた。

「ねえ、シュラ……あなたの股間をまさぐったのは本当に申し訳ないと思うけれど、あなたの股間……どうして固かったのかしら?」
「ッ!?」
「貞操帯ではないわよね?」

 アテナの問いにビクッと体を震わせて、顔を逸らすシュラ。チラッと見える横顔は無表情……ではなく、顔を真っ赤にして汗をダラダラと流して動揺している。
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