暴君王子は恋を知る

まぁ

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 その言葉にギクリとなったアンリだが、自分の性癖などを知られるわけにはいかない。すぐさま否定をした。
「ち、違う。まぁ確かに日頃世話にはなっているがな……」
「お世話でしたら、私もアンリ様を秘書として支えています!」
「それは業務だろう?何だ?労って欲しいのか?」
「そういう意味ではありません……」
 一体ウィードが何を言いたいのかさっぱりわからないアンリは首を傾げる。ウィード自身、自分の気持ちを知ってほしいのなら和史のように多少強引でもいかないとわかってもらえない。それほどアンリは鈍感なのだ。
「それよりもこの間の案件の詳細。お前の方に送っておいたから確認してくれ」
「畏まりました」
 すでにビジネスモードに入ったアンリは、和史が持って来たフルーツをチラリと見てぶどうを一粒口に含んだ。噛んだ瞬間に甘みと酸味が口いっぱいに広がった。メロンも程よい完熟具合で甘かった。
(なんだかんだいつもよくしてくれてるんだよなぁ……)
 まだ和史に対して好きとは言えないが、日常生活でもおおいに世話になっているので感謝はしているし、それを言葉にしたいとも思うが、それをわざわざ口にするのはなんだか恥ずかしい。
(そうだ!物ならいいのでは?)
 言葉が無理なら物にしょうと思ったアンリ。だが財閥御曹司でありながら、普段物には執着がない分、物の値段も何を贈ればいいのかもわからない。贈る事が発生した場合はいつもウィードに任せている。だがこれだけは自分で選びたい。
「ウィード。今日は終わったら銀座に行く」
「はい?何かお探しでしたら私が買ってきますが?」
「いやいい……自分で見て選びたい」
 さて何を贈ろうか。アンリの頭の中にはあれもこれもと浮かぶ。よく言う高すぎず安すぎずも、どの幅を安いで、どのくらいから高いのかはまったくわかっていなかった。しかし日本のいい品は銀座にあるという謎知識があるアンリは、銀座に行けば何かしら見つかるだろうと考えた。


 仕事を終えたアンリは銀座にあるメンズスーツからアクセサリまでを扱う店に足を踏み入れた。店員に何を探しているか聞かれ、贈り物を探していると言うと、カフスやタイピンなどを進められた。
「十万か……随分安いな」
「えっ?」
 興味を持たない分、金銭感覚がおかしいアンリは、十万のタイピンを安いと言って店員を驚かせる。それを見て十万は高いのだと気が付いた。
「あぁ、じゃあもう少し値段を抑えたので……」
「こちらなどいかがですか?」
「うーん……ちょっと派手かもしれないな。もう少し地味めな……」
 金銭感覚はおかしいが、物を見る目はあるので、どんな感じがいいかなどを店員に言い、おそらく妥当であろう金額のタイピンやカフスを選んだ。
「さて、これをいつ渡すのがいいか……」
 今日もどうせ来るはずだ。ならその時にそれとなく渡せばいいだろう。小さな紙袋を手にニコニコしながらマンションへと戻ったアンリ。しかし今日に限って和史は仕事でミスがあったとかで来れないと電話があった。
「なんだよそれ……」
 不貞腐れるアンリはスマホをベッドに投げた。せっかくのプレゼント。和史がどんな顔を見せるか楽しみだっただけに、肩透かしを食らったように感じた。
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