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もう一つの覚悟の魔法
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しおりを挟む俺たち四人は、エミルさんとヨネルさんについて行った。そこには、小さな訓練所があった。エミルさんが、俺を見る。
「コル、お前に確認したい。もう一つの覚悟の魔法。私が、お前らが大将戦と呼んでいるぶつかり合いで使っている魔方陣だ。あれを、お前に教えたいと思う。だけれど、あの魔方陣を使うということは、心身に大きな負担がかかる。魔力供給も普段より多く必要になる。それでも、知る覚悟があるか?」
エミルさんの言葉に、俺はすぐには返事ができなかった。
特別騎士団に入ってから今までに知ったことは、知ったら辛いものばかりだった。きっと、この魔法は今までで一番辛いのだろう。だからこそアマナは慎重になっているし、エミルさんも真剣に確認しているんだろう。俺に、耐えられるのか?だけれど、俺の夢は戦争をなくすこと。……正直、今のままでは何も進まないことも分かっていた。知らないと、戦争をなくす方法を考えることすら難しい。
その時、ラオンの言葉を思い出した。
あの魔方陣を必ず教えてもらう……それで俺を殺す。
俺はラオンを殺したくない。それが甘い考えだと分かっていても。だけれどラオンは、俺をあの魔方陣で殺しに来る。
俺は、ゆっくりとエミルさんの目を見て、頷いた。
「教えて下さい。お願いします」
エミルさんが、黙って頷いた。
「じゃあ、ヨネルと他の奴らは、適当になにかしてて」
エミルさんがヨネルさんに言った。
「あの……私は見学させて下さい」
アマナが言った。
エミルさんが、アマナを見て頷いた。
「……じゃあ、ブランとモカは、俺と訓練でもするか……」
ヨネルさんが言った。
ブランとモカは驚いている。俺も驚いた。
だけれど、これほど光栄な訓練はない。
俺は、ブランとモカに目で合図した。
「はい。未熟者ですが、よろしくお願いします」
「お願いしますっ!!」
ブランとモカがヨネルさんに頭を下げる。
ヨネルさんの合図で、ブランとモカは離れた場所の訓練所に行った。ここでは、大きな訓練所がないらしい。だから分割して訓練所を作っていると、アマナが教えてくれた。
「じゃあ、まずは、このもう一つの覚悟の魔法についての掟を教える。必ず守れ」
エミルさんの言葉に、俺は頷いた。
少し離れたところで、アマナがメモを片手に……いつもと違って、心配そうに俺を見つめていた。
「まず、この魔法は、単体ではなんの意味もなさない。つまり、私があの魔方陣を今お前にぶつけても、何の意味もない。この魔法を使うときは、相手も同じ魔法を使っていないと意味がない。私の大将戦を見ていたら分かるだろう。魔方陣同士をぶつけないと意味がないんだ」
エミルさんが続けた。
俺は、一言一言を聞き逃さないように真剣に聞いた。同じ魔方陣同士をぶつけ合わないと意味がない……つまり、ラオンが魔方陣を習得して俺に向けたときに使うものだということだ。
「そして、この魔法のやり方を他の人間に教えることは一切禁じる。どんな魔法かもだ。この魔法を通じて知ったことも、お前のチームと特別騎士団以外には、絶対に知られないようにすること。細心の注意を払え」
エミルさんの言葉。意味は分かるけれど、どうしてだろう……?
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