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指輪・思惑
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しおりを挟む次の日から、俺とリルは、ギルさんのところに行って指輪を創ることに専念した。
ギルさんは、俺たちのことをとても心配していてくれて、俺たちを見て、またしっかりと抱きしめてくれた。それに、ギルさんのところで揃えられる材料は、全て揃えてくれていた。
俺は、正直、やらないといけないことがあるのが有り難かった。今、手が空いてしまうと、この前の依頼のことや、舞踏会のことを考えてしまう。
自分がどう考えれば良いのか、俺にはまだ分からなかった。
ギルさんは、そんな俺やリルの話をいつもしっかりと聞いてくれた。
フラワーストーンを使った様々なお茶を出してくれたり、指輪を創るのにも協力してくれた。
そんなある日、俺とリルは、指輪を創るのに必要な材料をエリィ姫様に分けてもらうために、お城にいた。
指輪は、ギルさんの協力のお陰で、完成が近づいている。
「お待たせしてごめんなさいね。舞踏会の前で、少し忙しかったの」
エリィ姫様が、優しい笑顔で、俺たちが待っていた部屋に入ってきた。
「じゃあ、庭園に行きましょうか」
俺たちは、エリィ姫様について外に出た。
そこには、とても大きくて綺麗な庭園が広がっていた。
「ここは、師匠が管理しているのよ」
リルが説明してくれる。
「ふふっ。リルさん、忙しくてなかなか修行の時間がとれなくてごめんなさいね。でも、この前の依頼のことを聞いたわ。あなた達は、確実に力をつけている。嬉しいわ」
「ありがとうございます!師匠!!」
リルが嬉しそうに笑った。
庭園には、沢山のフラワーストーンが咲いていた。庭園の中にある黒い布で覆われた場所には、珍しいクリスタルフラワーまである。
「えっと……これと、これと……あと、これもね。はい、これで全部のはずよ」
驚いて辺りを見ていた俺に、リルが材料を集めてきて渡してくれた。
リルはここにあるものを把握しているようだ。
「頑張って下さいね」
エリィ姫様が、優しく俺に言ってくれた。
「あの、師匠……」
「なんですか?リルさん?」
リルが、少し苦しそうな顔で、エリィ姫様を見つめていた。
「その、舞踏会で、マスターは、どうなるのでしょう……。最近、忙しいからと、マスター室からも出てきていないようで……」
「あぁ……。心配しなくても大丈夫ですよ」
エリィ姫様も、どこか少し苦しそうに笑うと、リルの肩に両手を置いた。
「エミリィがどんな選択をしようとも、それを受け入れ一緒に歩むのが、今の私の役目。リルさん、あなたがルトさんにしているように。それより、そろそろ、お二人の準備もしないといけませんね」
リルも、俺も、それ以上何も言えずに頷いた。
ギルさんの元に戻るために、お城の中を歩いていると、外から、ホワイトクウォーツ王国の騎士団の、訓練の声が聞こえてきた。
「うわぁ、リル、騎士団の人たちだよ。迫力が凄いね、こんなに近くで初めて見たよ」
窓から見ながら言った俺に、リルがクスリと笑った。
「ルトも、騎士団に憧れるの?」
「うーん……。俺は、見ているだけで良いよ。だって、騎士団は迫力だけでも怖いから……」
俺の言葉に、またリルが笑った。
そして、そのまま歩き出そうとしたその時、リルがなにかに気がついて、俺の腕を引っ張った。
俺に気配を消すように合図をし、黙って指を指す。
そこにいたのは……。ラネンさん?
間違いなく、ラネンさんが、一人でお城の中を歩いていた。近くにエミリィ様の気配はない。ラネンさんが、エミリィ様から離れて、一人で歩いている所なんて初めて見た。
なんだろう、この胸騒ぎ。
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