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鬼の仲間として
50 イマの決断…2
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呆然と立ち尽くす私に、リューサさんが教えてくれました。大地震のあったあの後、どうなったのか…。
牧場のニンゲンたちにも手伝わせて、火事を何とか消し止めたリューサさんたち。敷地内に河童が侵入してきているのを発見しました。
即座に追い出しますが、他にも居るかもしれません。イマさんが私を心配してお屋敷の方へ戻ると、誰もいない。私は河童に拉致された後でした。
慌てふためいたイマさん。すぐさまリューサさんに報告。首輪の発信機で私の場所を確認し、リューサさんとイマさんで私の救助へ。他の鬼さんは、壊れた塀の仮修復と敷地内の警戒に当たりました。
リューサさんとイマさんが発信機の示す場所に到着した時には、私は既に内臓を食べられ串刺しにされた状態。今まさに、火に掛けられて焼かれようとしたところ。
怒ったリューサさんとイマさんは、その場の河童を皆殺し。私を貫いていた串は、二人によって抜き取られました。
しかし、既に意識が無く、心臓の鼓動も弱り、私は絶命寸前。止血の薬で応急処置され、お屋敷に担ぎ込まれました。
私の小腸・大腸は河童に食べられてしまい、お腹の中はからっぽ。もう直ぐにも息絶えてしまいそう。いくらリューサさんの秘薬をもってしても、全てなくなってしまった腸を復活させるなんて神業は不可能なんです。
そこで、イマさんが申し出ました。
「私の内臓を美玖に捧げます。私の内臓で美玖を救ってください」
と。
当然、そんなことリューサさんは承知しません。牧場の適当なニンゲンを連れてきて内臓を取り出せばよいなんてね…。
しかし、それって無茶ですよね。血液型やら、いろんなことが適合する相手からでないと内臓移植なんて不可能なんです。そのことを医師のナユさんが指摘しました。
そんなニンゲンを探していては間に合いません。いや、見つかるかどうかも分かりません。
ただ、ナユさん曰く、鬼の内臓なら、どんなニンゲンにも適合するんだそうです。
それを聞いたイマさんは、リューサさんの制止を振り切って短刀で自分のお腹を掻っ捌き、自らの腸を掴み出しての再度の懇願。
「美玖を一人にした私の責任です。お願いです。私の内臓で美玖を!」
リューサさんは止む無く承諾し、イマさんから小腸・大腸を摘出して私に移植したのでした。
ゆ、夢じゃなかった…。
そうですよ。私は河童に気絶させられ、拉致され、内臓を抜かれ、串刺しにされたのです。
今は全く痛くありません。でも、あの時の感触…。
河童に下腹部内へ手を突っ込まれた衝撃と痛み。
内臓を抜き取られる激痛とオゾマシイ感触。
串刺しにされた時の激しく止めどない嘔吐感。
ハッキリ覚えています!!
あれは事実。実際に有ったこと。
そして、私はイマさんの内臓を貰って蘇生した。
でも代わりに、イマさんは内臓を失って死んでしまった。
その遺体が、今、目の前に……。
「な、何でそんなこと! いやだ、イマさん。目を開けてよ! こんな冗談、シャレになんないよ。嘘だよ~。私の代わりにイマさんが死んじゃうなんて、そんなの耐えられないよ~!!」
「美玖…。イマの精一杯の誠意を受け止めてあげて頂戴。イマは、あなたを一人にしたのは自分のミスであり、あなたの命を助けるのに自分の命を差し出すのは下僕として当然だと言っていました。
それに、あなたの処女膜を破った事件。あの時はカリにも連帯責任負ってもらったけど、実際に破いたのは自分だって、苦にしていたのよね。だから、美玖に何かあったら、まず命を差し出すのは自分だって…。前からそんなこと言ってたのよ。この子は」
「そ、そんな~。あんな、うっすい膜のことなんか、どうでも良いよ。私はイマさんが居なくなっちゃう方が嫌だよ。
役立たずの私なんか、死んじゃってもどうってことないでしょ!
それより、イマさんが居なくなったらみんな困るよ~。イマさんの馬鹿~!!
バカ~、バカ~、バカ~、バカ~……」
遺体に取り縋って泣き叫ぶ私の肩に、カリさんが手を置きます。
「美玖。私も辛い。でも、イマの決断。尊重してやって欲しい。
そして、イマからの最後の言葉を美玖に伝える。聴いて欲しい。イマの遺言だ」
そ、そうよね。一番辛いのは、双子のカリさんかもしれません。いつも一緒に居た大事なお姉さんを亡くしてしまったのですから。
カリさんの言葉に耳を傾けるべく、泣くのを止めます。シャックリは止まりませんけど、それは許してください。しっかり聴きます。
「美玖。私は何時でもお前と一緒。美玖の体の中で、美玖の体の一部として生き続けるのだ。これは私にとって幸せなことだ。だから、泣かないで欲しい。私と一緒に生きて欲しい。
それから、残った私の肉体も、出来れば美玖に取り込んでもらえると嬉しい。私は美玖の体に取り込まれたい。全部食べて欲しい。イマからの最後の願いだ」
た、食べる? イマさんの遺体を?!
驚く私に、リューサさんが説明してくれました。
この世界では、身を挺して主を守って死んだ戦士の遺体は、その偉業を讃えて皆で分け合って食べるのだそうです。英雄の肉体は皆に吸収され、受け継がれる…。最も名誉ある葬送の儀式なのだそうです。
当然、イマさんの死はこれに該当しますので、そうする予定なのだと。
但し、儀式として一部は皆で分けて食べますが、イマさんの遺言がありますので、残りは全て私が食べて欲しいとも……。
人間界ではありえない風習ですが、これがこの世界、鬼の習慣であり、慣習なんです。
そうであれば、イマさんの最後の願いです。イマさんに救ってもらった私がそれを断るなんて選択肢はありえないことでした。
牧場のニンゲンたちにも手伝わせて、火事を何とか消し止めたリューサさんたち。敷地内に河童が侵入してきているのを発見しました。
即座に追い出しますが、他にも居るかもしれません。イマさんが私を心配してお屋敷の方へ戻ると、誰もいない。私は河童に拉致された後でした。
慌てふためいたイマさん。すぐさまリューサさんに報告。首輪の発信機で私の場所を確認し、リューサさんとイマさんで私の救助へ。他の鬼さんは、壊れた塀の仮修復と敷地内の警戒に当たりました。
リューサさんとイマさんが発信機の示す場所に到着した時には、私は既に内臓を食べられ串刺しにされた状態。今まさに、火に掛けられて焼かれようとしたところ。
怒ったリューサさんとイマさんは、その場の河童を皆殺し。私を貫いていた串は、二人によって抜き取られました。
しかし、既に意識が無く、心臓の鼓動も弱り、私は絶命寸前。止血の薬で応急処置され、お屋敷に担ぎ込まれました。
私の小腸・大腸は河童に食べられてしまい、お腹の中はからっぽ。もう直ぐにも息絶えてしまいそう。いくらリューサさんの秘薬をもってしても、全てなくなってしまった腸を復活させるなんて神業は不可能なんです。
そこで、イマさんが申し出ました。
「私の内臓を美玖に捧げます。私の内臓で美玖を救ってください」
と。
当然、そんなことリューサさんは承知しません。牧場の適当なニンゲンを連れてきて内臓を取り出せばよいなんてね…。
しかし、それって無茶ですよね。血液型やら、いろんなことが適合する相手からでないと内臓移植なんて不可能なんです。そのことを医師のナユさんが指摘しました。
そんなニンゲンを探していては間に合いません。いや、見つかるかどうかも分かりません。
ただ、ナユさん曰く、鬼の内臓なら、どんなニンゲンにも適合するんだそうです。
それを聞いたイマさんは、リューサさんの制止を振り切って短刀で自分のお腹を掻っ捌き、自らの腸を掴み出しての再度の懇願。
「美玖を一人にした私の責任です。お願いです。私の内臓で美玖を!」
リューサさんは止む無く承諾し、イマさんから小腸・大腸を摘出して私に移植したのでした。
ゆ、夢じゃなかった…。
そうですよ。私は河童に気絶させられ、拉致され、内臓を抜かれ、串刺しにされたのです。
今は全く痛くありません。でも、あの時の感触…。
河童に下腹部内へ手を突っ込まれた衝撃と痛み。
内臓を抜き取られる激痛とオゾマシイ感触。
串刺しにされた時の激しく止めどない嘔吐感。
ハッキリ覚えています!!
あれは事実。実際に有ったこと。
そして、私はイマさんの内臓を貰って蘇生した。
でも代わりに、イマさんは内臓を失って死んでしまった。
その遺体が、今、目の前に……。
「な、何でそんなこと! いやだ、イマさん。目を開けてよ! こんな冗談、シャレになんないよ。嘘だよ~。私の代わりにイマさんが死んじゃうなんて、そんなの耐えられないよ~!!」
「美玖…。イマの精一杯の誠意を受け止めてあげて頂戴。イマは、あなたを一人にしたのは自分のミスであり、あなたの命を助けるのに自分の命を差し出すのは下僕として当然だと言っていました。
それに、あなたの処女膜を破った事件。あの時はカリにも連帯責任負ってもらったけど、実際に破いたのは自分だって、苦にしていたのよね。だから、美玖に何かあったら、まず命を差し出すのは自分だって…。前からそんなこと言ってたのよ。この子は」
「そ、そんな~。あんな、うっすい膜のことなんか、どうでも良いよ。私はイマさんが居なくなっちゃう方が嫌だよ。
役立たずの私なんか、死んじゃってもどうってことないでしょ!
それより、イマさんが居なくなったらみんな困るよ~。イマさんの馬鹿~!!
バカ~、バカ~、バカ~、バカ~……」
遺体に取り縋って泣き叫ぶ私の肩に、カリさんが手を置きます。
「美玖。私も辛い。でも、イマの決断。尊重してやって欲しい。
そして、イマからの最後の言葉を美玖に伝える。聴いて欲しい。イマの遺言だ」
そ、そうよね。一番辛いのは、双子のカリさんかもしれません。いつも一緒に居た大事なお姉さんを亡くしてしまったのですから。
カリさんの言葉に耳を傾けるべく、泣くのを止めます。シャックリは止まりませんけど、それは許してください。しっかり聴きます。
「美玖。私は何時でもお前と一緒。美玖の体の中で、美玖の体の一部として生き続けるのだ。これは私にとって幸せなことだ。だから、泣かないで欲しい。私と一緒に生きて欲しい。
それから、残った私の肉体も、出来れば美玖に取り込んでもらえると嬉しい。私は美玖の体に取り込まれたい。全部食べて欲しい。イマからの最後の願いだ」
た、食べる? イマさんの遺体を?!
驚く私に、リューサさんが説明してくれました。
この世界では、身を挺して主を守って死んだ戦士の遺体は、その偉業を讃えて皆で分け合って食べるのだそうです。英雄の肉体は皆に吸収され、受け継がれる…。最も名誉ある葬送の儀式なのだそうです。
当然、イマさんの死はこれに該当しますので、そうする予定なのだと。
但し、儀式として一部は皆で分けて食べますが、イマさんの遺言がありますので、残りは全て私が食べて欲しいとも……。
人間界ではありえない風習ですが、これがこの世界、鬼の習慣であり、慣習なんです。
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