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第六章 バーボルド伯爵領

第四百二話 懐中時計型の魔導具が壊れちゃった

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 王都への出発は来週の安息日だと決まったけど、僕達のやる事は変わりありません。
 軍の治療施設で治療して、バッツさんと手合わせして、魔石に魔力の補充をします。
 たまに軍の訓練につき合っていますが、魔法を弱く放たないといけないので良い訓練になっています。
 そんな時、ちょっとしたトラブルが。
 それは、魔石に魔力を補充している時でした。

「タイマーをセットして、あれ? 動かなくなっちゃった?」

 いつもの懐中時計型魔導具のタイマーをセットしようとしたら、うんともすんともいわなくなっちゃいました。
 魔力はちゃんと補充していたのに、何が起きちゃったんだろう?
 すると、困っている僕を見たバッツさんが僕に話しかけてきました。

「レオ、その懐中時計型魔導具はいつ買った?」
「えっと、四歳です」
「買ってもうすぐ三年か。メンテナンスはしていたか?」
「あの、魔力を補充していただけです……」
「それが原因だな。ちょっと貸してみろ」

 バッツさんは僕から懐中時計型の魔導具を受け取って、おヒゲもじゃもじゃの職人さんに渡しました。
 職人さんは、直ぐに中を開けて確認し始めました。

「うむ、中々のギミックだな。だが、少し中身が錆びている。一時間あれば直せるだろう」
「うわあ、本当ですか?」
「任せなさい。それに、たまに別の魔導具を修理する事で、知識のアップデートにもなる」

 職人さんは、何だかキラキラした目で修理を始めました。
 時折メモを取っているし、集中力が物凄いよ。
 僕達はその間に、沢山の魔石に魔力を充填しました。

「ほれ、直ったぞ。コイツは中々だ、自動で時間調節する機能を持っている」
「わあ、ありがとうございます。凄い魔導具だったんですね」
「この、自動で時間を調節する機能は軍として是非とも欲しい」

 すっかり直った魔導具を首からかけてポチッとすると、確かにタイマーが動いていました。
 そういえば、今まで一回も時間調節していなかったよなあ。
 凄い魔導具だったんだ。
 すると、バッツさんが真剣な表情をして僕に話しかけました。

「レオ、この魔導具の職人と交渉したい。どこで買ったか?」
「えっと、アマード子爵領の魔導具屋さんです。でも、試作品って言っていましたよ」
「構わねえよ。それに無理強いはしない。師団長経由で、きちんとアマード子爵を通じてアポを取る」

 バッツさんは、任せろって感じで僕に言いました。
 軍として正確な時間を知るという事は、とても大事な事らしいです。
 それに、キチンとした手順を踏んでくれるのなら僕としてもホッとします。
 いきなり軍がアマード子爵領に行ったら、大変な事になっちゃうもんね。

「さて、じゃあ休憩にするぞ。休憩してから作業を再開するぞ」

 そして、バッツさんの声で休憩時間となりました。
 お菓子タイムとなると、話題は王都になりました。

「王都は、このバーボルド伯爵領から二時間で着くぞ。まあ、レオはフランソワーズ公爵家の屋敷に泊まるだろうが、多くの人がいて普通は宿を取るのが非常に大変だ」
「あー、確かにそうですね。冒険者だと確かギルド内に宿があるらしいですけど、初心者限定らしいですね」
「レオ君は初心者冒険者じゃないから、冒険者ギルド内の宿に泊まるのは不可能だね」

 うーん、王都で暮らすのってその日泊まるだけでも大変なんだ。
 でも、きっと王都の冒険者ギルドって大きくて凄そうだね。
 色々な依頼があって面白そうだと思ったら、バッツさんが速攻で否定しました。

「まあ、レオは当分冒険者活動はできないだろう。一か月は無理だろうな」
「えっ、何でですか?」
「そりゃ、レオに縁のある貴族がお茶会に誘うからだ。それに勲章の授与もあるだろうから、王城にも行かないとならないな」

 バッツさんが腕を組みながら話をすると、他の人たちもうんうんと頷いていた。
 逆に、僕はガックリしちゃいました。
 僕としては、偉い人に会うのは少しだけで冒険者活動をいっぱいしたいなあって思っていました。
 でも、現実的に無理なんだろうと僕はちょっと項垂れながら作業を再開しました。
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