小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
307 / 585
第六章 バーボルド伯爵領

第四百二話 懐中時計型の魔導具が壊れちゃった

しおりを挟む
 王都への出発は来週の安息日だと決まったけど、僕達のやる事は変わりありません。
 軍の治療施設で治療して、バッツさんと手合わせして、魔石に魔力の補充をします。
 たまに軍の訓練につき合っていますが、魔法を弱く放たないといけないので良い訓練になっています。
 そんな時、ちょっとしたトラブルが。
 それは、魔石に魔力を補充している時でした。

「タイマーをセットして、あれ? 動かなくなっちゃった?」

 いつもの懐中時計型魔導具のタイマーをセットしようとしたら、うんともすんともいわなくなっちゃいました。
 魔力はちゃんと補充していたのに、何が起きちゃったんだろう?
 すると、困っている僕を見たバッツさんが僕に話しかけてきました。

「レオ、その懐中時計型魔導具はいつ買った?」
「えっと、四歳です」
「買ってもうすぐ三年か。メンテナンスはしていたか?」
「あの、魔力を補充していただけです……」
「それが原因だな。ちょっと貸してみろ」

 バッツさんは僕から懐中時計型の魔導具を受け取って、おヒゲもじゃもじゃの職人さんに渡しました。
 職人さんは、直ぐに中を開けて確認し始めました。

「うむ、中々のギミックだな。だが、少し中身が錆びている。一時間あれば直せるだろう」
「うわあ、本当ですか?」
「任せなさい。それに、たまに別の魔導具を修理する事で、知識のアップデートにもなる」

 職人さんは、何だかキラキラした目で修理を始めました。
 時折メモを取っているし、集中力が物凄いよ。
 僕達はその間に、沢山の魔石に魔力を充填しました。

「ほれ、直ったぞ。コイツは中々だ、自動で時間調節する機能を持っている」
「わあ、ありがとうございます。凄い魔導具だったんですね」
「この、自動で時間を調節する機能は軍として是非とも欲しい」

 すっかり直った魔導具を首からかけてポチッとすると、確かにタイマーが動いていました。
 そういえば、今まで一回も時間調節していなかったよなあ。
 凄い魔導具だったんだ。
 すると、バッツさんが真剣な表情をして僕に話しかけました。

「レオ、この魔導具の職人と交渉したい。どこで買ったか?」
「えっと、アマード子爵領の魔導具屋さんです。でも、試作品って言っていましたよ」
「構わねえよ。それに無理強いはしない。師団長経由で、きちんとアマード子爵を通じてアポを取る」

 バッツさんは、任せろって感じで僕に言いました。
 軍として正確な時間を知るという事は、とても大事な事らしいです。
 それに、キチンとした手順を踏んでくれるのなら僕としてもホッとします。
 いきなり軍がアマード子爵領に行ったら、大変な事になっちゃうもんね。

「さて、じゃあ休憩にするぞ。休憩してから作業を再開するぞ」

 そして、バッツさんの声で休憩時間となりました。
 お菓子タイムとなると、話題は王都になりました。

「王都は、このバーボルド伯爵領から二時間で着くぞ。まあ、レオはフランソワーズ公爵家の屋敷に泊まるだろうが、多くの人がいて普通は宿を取るのが非常に大変だ」
「あー、確かにそうですね。冒険者だと確かギルド内に宿があるらしいですけど、初心者限定らしいですね」
「レオ君は初心者冒険者じゃないから、冒険者ギルド内の宿に泊まるのは不可能だね」

 うーん、王都で暮らすのってその日泊まるだけでも大変なんだ。
 でも、きっと王都の冒険者ギルドって大きくて凄そうだね。
 色々な依頼があって面白そうだと思ったら、バッツさんが速攻で否定しました。

「まあ、レオは当分冒険者活動はできないだろう。一か月は無理だろうな」
「えっ、何でですか?」
「そりゃ、レオに縁のある貴族がお茶会に誘うからだ。それに勲章の授与もあるだろうから、王城にも行かないとならないな」

 バッツさんが腕を組みながら話をすると、他の人たちもうんうんと頷いていた。
 逆に、僕はガックリしちゃいました。
 僕としては、偉い人に会うのは少しだけで冒険者活動をいっぱいしたいなあって思っていました。
 でも、現実的に無理なんだろうと僕はちょっと項垂れながら作業を再開しました。
しおりを挟む
感想 151

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。