小さな大魔法使いの自分探しの旅～親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします～

第一章 セルカーク直轄領

第五十一話 今日はゆっくりとします

　僕はおじさんと話し終えると、シェリーさんのいる受付に行きました。
　すると、シェリーさんは僕の所に走ってきて、僕の体をペタペタと触ってきました。

「レオ君、もう起きて大丈夫なの？　体は痛くない？」
「はい、寝て回復魔法をかけたらだいぶ良くなりました。あと二、三日もすれば完治するかと思います」
「そう、それは良かったわ。運ばれてきた時のレオ君はボロボロだったから、本当に心配したのよ」

　シェリーさんは床に膝を付きながら、僕の事を抱きしめていました。

　ぐー。

　その時、僕のお腹がなってしまい、僕は顔が真っ赤になってしまいました。

「あら、お腹すいちゃったのね。私達もちょうど昼食の時間だから、一緒に食べようね」
「はい……」

　僕が顔を真っ赤にしながら頷くと、シェリーさんはニコリとしながら僕の手を引いて歩き始めました。
　既に食堂の席には他の受付のお姉さんも座っていて、僕の頭を撫でながら無事を喜んでいました。

「はい、日替わりランチのハーフサイズだよ。今日はサイコロステーキだよ」
「おばちゃん、ありがとう」
「いっぱい食べて、早く元気になるんだよ」

　おばちゃんが僕の前に、今日の日替わりランチを持ってきてくれました。
　他の受付のお姉さんも、今日は日替わりランチを頼んでいます。
　お腹がペコペコな僕は、テーブルに料理が置かれると一気に食べ始めちゃいました。

「レオ君、よっぽどお腹が空いていたのね。がっついて食べているわよ」
「何だか微笑ましいね。あんなに一生懸命に食べるレオ君は初めて見たわ」

　僕が食事に夢中になっているのを、受付のお姉さん達が微笑ましく見ていました。
　僕は目の前の料理に夢中で、周囲の視線どころじゃなかったけどね。

「じゃあ、私からレオ君にちょっと話があるわ」

　皆の食事が終わると、シェリーさんが僕に話し掛けてきました。
　多分、僕の誘拐事件の件だよね。

「レオ君は、今日は一日お休みです。暴行を受けた後は上手く魔法を使えなかったと聞いたし、治療中に何かあったら大変ですからね。何よりまだ体が完調じゃないですし、無理はさせられません」
「はい、分かりました」

　シェリーさんから出ている物凄い迫力に、僕は思わず頷いちゃったよ。
　本当は午後から冒険者ギルド内での治療をしようと思っていたけど、大人しくしていないと逆に怒られちゃいそうです。
　それに魔法の制御の件を言われると、僕も強く言い返せません。

「今日は、読書でもしながらゆっくりしなさいね。守備隊も冒険者ギルドも今朝の対応で大忙しだし、レオ君に話を聞くとなっても明日以降は確実だわ」
「教会と代官邸の二箇所を捜索しないとなりませんから、時間がかかるのはしょうがないですね。じゃあ、明日は何かあったら直ぐに動ける様に、今日できなかった冒険者ギルド内の治療をやります」

　僕の今日と明日の予定も決まったので、午後は宿の部屋に戻って魔法の本を読む事にしました。
　今度、街の本屋に行ってポーション作りの本を買って読んでみよう。
　因みに、昼食の代金はシェリーさんが払ってくれました。
　シェリーさんは冒険者ギルドが僕に迷惑をかけたって言っていたけど、僕は全然そんな事はないと思っているけどね。

「うーん、僕の身を守る魔法でも覚えようかな。でも、どんな魔法があるのかな？」

　相手を無効化する魔法だと、セレンお姉さんも使うバインドが良いよね。
　僕もバインドはできるけど、もっと精度を上げないと駄目だね。
　後は何かないかな？

「おっ、ここに書いてある内容が良いかも。魔法を上手く制御できれば、特定の範囲に影響を及ぼすものが扱えます。ただし、通常の魔法の何倍もの魔力を消費します」

　もし電撃の魔法を広範囲に出せれば、一気に敵を無効化できるね。
　でも、確かに魔力制御も難しいし、今の僕の魔力だとどこまでできるか分からないね。
　うーん、この広範囲に出力する魔法は、地道に魔力制御の訓練を続けないとできないから、今すぐにどうこうはできないなあ。

「取り敢えずは、毎日訓練を続けてもっと上手な魔法使いにならないと駄目だね」

　当面の目標もできたし、後は頑張ってやっていこう。
　僕は魔法の本を魔法袋に仕舞うと、ベッドに移動して寝っ転がりました。
　やっぱり体調か完調じゃないので、また眠くなってしまいました。
　今日は寝てばっかりだなと思いつつ、僕は夕方までぐっすりと眠っていました。