上 下
859 / 890
第三十章 入園前準備

九百八十五話 模擬テスト

しおりを挟む
 学園の入園試験が近づいてくる中、僕は時間が空くとリズたちの勉強を見るようになっていた。
 入園試験は主に二つあって、一つが学力試験でもう一つが剣技試験だ。
 入園説明会の一ヶ月前に試験があって、そこで入園者が確定する。
 基本的に貴族の姉弟は試験に落ちることはないのだが、試験結果がクラス分けに影響してくる。
 なので、みんな同じクラスになれるようにと必死で頑張っていた。
 今は、過去問を解いてどのくらいの実力があるか確認をしていた。
 ちなみに、過去問は普通に町の書店で売られているので一般市民も購入可能だ。

「はい、時間だよ。そこまで」
「「「はふぅ……」」」

 リズたちから空気の抜けるような音が聞こえてきたけど、実は王城でみんなで昨年の過去問を解いていたのだ。
 力尽きてテーブルの上に倒れ込んだものが何人かいたけど、それだけ頑張ったって証拠だ。
 僕の知り合いはみんな受けているのだけど、ブライトさんの従者であるシダーさんとレアさんは侍従を極めると言って学園には通わないそうだ。
 回答用紙を回収して、カリカリと採点していきます。
 すると、リズがむくれながら僕に文句を言ってきた。

「お兄ちゃんはいいよねー、試験受けないからねー」
「官僚試験に合格しているのもあるけど、問題作成側だからね。流石に試験は受けられないよ」
「お兄ちゃんは、試験受けなくていいよねー」

 リズが机を指先でいじいじしながら恨めしそうな目で僕のことを見ているけど、僕だって問題を作るために数年分の過去問をやっていたんだからね。
 既にそのことは言っているはずなのに、試験疲れのリズには関係ないらしい。
 他の面々も、いじいじしているリズを苦笑しながら見ていた。
 さて、採点も終わりです。

「おめでとう、サンディとメアリは満点だね。スラちゃんも満点だ。リズとエレノアは、ひっかけ問題を間違っているよ。プリンもだね」
「「ありがとうございます!」」
「「ぐぬぬぬ……」」

 何故かスラちゃんとプリンも過去問を解いていたけど、そもそもスラちゃんは僕よりも官僚試験の点数が良かったはずだよ。
 満点を逃した二人と一匹は相当悔しがっているけど、本番で頑張れば十分挽回できるはずだよ。

「ブライトさんとヘイリーさん、アリサさんも十分にいい点数です。この調子で頑張れば、十分Aクラスに入れそうですね」
「「「ありがとうございます」」」

 三人とも一生懸命勉強を頑張ったので、着実に学力が上がっていました。
 これなら、油断しなければ本番は大丈夫ですね。
 どこを間違えたかを教えつつ、今日の勉強は終わりです。

「午前中は学力試験で、昼食を食べてから剣技の試験になるよ」
「じゃあ、リズの本気は午後からなんだね!」

 リズよ、学力試験も全力で頑張りなさい。
 まあ、この中では圧倒的に剣技の実力があるから、一位抜けの第一候補だろうね。

「試験は一ヶ月後で、剣技もあるから動きやすい服装もした方がいいよ。もしくは、マジックバッグに入れるとかだね。残念ながら、エレノアは王族としての威厳を出さないといけないから試験はドレス着用義務ね」
「えー! アレクお兄ちゃん本当なの!?」

 そりゃ、王女様が楽な服装で試験を受けるわけにはいかないでしょう。
 エレノアは、再びがっくりとしてしまった。
 まあ、リズたちにもそれなりの服装はさせるけどね。

「お兄ちゃんは、試験当日はどうするの?」
「試験監督官をやることになったよ。スラちゃんとプリンと一緒に、カンニングしている人がいないか見張るんだ」
「スラちゃんから逃れてカンニングする人なんていないの……」

 これも既に決まっていて、二匹には伝えていた。
 体育館で一斉に学力試験を受けるらしいのだけど、毎年カンニングするものが現れるという。
 特に、学力が足りない貴族がそういうことをするという。
 なので、スラちゃんとプリンは張り切って会場内を巡回するそうです。
 しかもエレノアが生まれた関係で同級生が多いらしく、特に下級貴族の子どもが多いので要注意です。
 色々と考えても仕方ないので、まずは昼食を食べて元気をつけましょう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。

リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。 そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。 そして予告なしに転生。 ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。 そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、 赤い鳥を仲間にし、、、 冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!? スキルが何でも料理に没頭します! 超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。 合成語多いかも 話の単位は「食」 3月18日 投稿(一食目、二食目) 3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。