ココロオドル蝶々が舞う

便葉

文字の大きさ
38 / 72
蝶々は甘ったるい蜜がお好き

しおりを挟む



 藤堂は天井を見上げて大きくため息をついた。

……上手くいくはずがない。

 蝶々の空回りで終わるのが目に見えてる。でも、この件はただの空回りで終わるほど簡単な問題じゃない。とにかく蝶々の無謀な行動を阻止しなければならない。


「いつ、会うつもりなんだ?」


「そ、それは、まだ分かりません…」


 藤堂はそんな蝶々の様子の一つも見逃さない。


「じゃ、明後日までに、後藤の父親に何を言うか、3パターンくらいレポートにまとめて提出する事。紙じゃなくていいぞ、データでいい。
 必ず提出する、それで俺と一緒にもう一度考える。それがクリアできないと、後藤の父親に会う事は許可できない。いいか?
 後藤を本気で守りたいんだったら、急がば回れっていう言葉もあるんだ。感情だけで突っ走って全てを台無しにすることが一番最悪なんだ。とにかく冷静に対処すること。
 担当はお前だけじゃない、俺の許可がないとお前は何もできないんだ。それをちゃんと頭に入れとくように」


「……はい」


 肩を落としている蝶々の姿が痛々しかった。
 でも、蝶々に限ってはこの落ち込みは何の意味も持たない。明日には何をしでかすか分からない危険で向こう見ずなのが蝶々だ。

……はぁ、二十四時間、俺が拘束するするしかないのか?


「後藤とは会ってないんだろ?」


「……はい」


 蝶々はまだ落ち込んでいる。


「必要最低限の連絡は取り合う事。不安にさせないように心掛けて」


「分かってます!」


 蝶々は自分の思い通りに物事が運ばないことに少々イラついていた。


「初めての担当で大きな壁にぶち当たってイライラするのはしょうがない。そうやってみんな一人前の担当編集者になっていくんだ」


「もう、分かってます!」


 藤堂は蝶々への甘い考えが浮かばないように必死に自分を抑えた。


「よし、分かった。
 じゃ、西園寺順也にどう対峙するか、お前の考えを今日俺の家で聞いてやってもいいぞ?」

……ここで聞けばいいじゃないか?


「どうする?」


……何も自制できてない、情けない俺。


 蝶々は藤堂の顔を見ずに考えるふりをしている。


「じゃ、レポートの3パターンを2パターンに減らしてもらえますか?」


 藤堂は蝶々への愛おしさの感情で胸がはち切れそうだ。でも、それをここで見せるわけにはいかない。


「え? そんな、うん、ま、しょうがないか… じゃ、2パターンは必ず提出だぞ」


……以前飲まされた蝶々の媚薬がまた効いてきた、ということにしておきたい。



 二人は藤堂の家で食事を済ませ、その後ソファに座ってテレビを観ていた。蝶々はまだ難しい顔をしている。眉間にしわをよせて、ぶつぶつ独り言を言っている。藤堂は蝶々の顔を自分の方に向けて、その眉間にできているしわを指で伸ばした。


「もう、やめてください!」


「せっかくの可愛い顔がグロい性格に乗っ取られてる」


 蝶々は頬を膨らませて藤堂を睨んだ。


「だって、藤堂さんが西園寺順也の攻略法を考えろって…」


 藤堂は攻略法というワードに笑ってしまった。すると、蝶々は急に立ち上がり、着ていたベストを脱ぎ出した。


「え? 蝶々、どうした? 暑い?」


 暖房も何も入れていないから暑いはずはない。


「藤堂さん、裸になってもいいですか?」


 藤堂は唐突な申し出に言葉が見つからない、というより心の準備がまだできていない。そう言いながら、もう蝶々はブラウスのボタンを外し始めている。


「ちょ、ちょっと、マジか?」


「裸になりたいんです…
裸になったら何かいいアイディアが浮かびそうで…」


……助けてくれ。俺はまだ蝶々の未知の世界に入り込めていないんだ。裸になったらアイディアが浮かぶ?? 理解不能。


 藤堂の心臓は急激に高鳴り始める。こんなスリルとワクワク感をここ数年感じた事はない。興奮し過ぎて鼻血が出ているんじゃないかと心配になるくらいに、藤堂は蝶々の行動から目が離せられなかった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...