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蝶々は甘ったるい蜜がお好き
⑨
しおりを挟む「裸になるって… ここで?」
藤堂は嬉しいような、でもやっぱりまだ心の準備ができていない。
「はい。実は私、裸族なんです」
「裸族?」
藤堂は何かのワイドショーで、そういうライフスタイルを好む日本人が増えているという特集を見たことがあった。
「はい、家ではほとんど裸です」
「え? いや、あの、お父さんの前でも?」
藤堂は初めて裸の女性を見た小学生のようにドキドキしている。
「基本は自分だけの部屋では、かな?
家族と過ごす時には大きなTシャツみたいなものを一枚着てます。でも、下着はつけてませんよ」
……下着はつけてませんよって、蝶々は俺の事を性欲旺盛なオスだって事を忘れてるんじゃないだろうな?
蝶々は笑顔でもう下着一枚になっていた。
「ちょ、ちょっと、蝶々…」
蝶々は真っ白なシルクのキャミソールに真っ白なショーツを身につけている。豊かな胸がキャミソール越しに揺れているのが分かる。
「蝶々……
俺の前で裸になるってどうなるか分かってるのか?
俺はこう見えても」
……あ~、ヤバい、下着まで脱ぎ出した。
藤堂は慌てて隣の部屋へ駆け込んでしまった。
「藤堂さん?」
真っ裸になった蝶々はキョトンとしていた。裸族の人間は裸でいるという事に全く抵抗がない。体を締め付けるあらゆるものから解放され、頭も真っ白にクリアになる。
蝶々にとっては裸も洋服を着ている姿も何ら違いはなかった。好きになった人に、ありのままの自分を見てもらうことは当たり前の事だと思っている。
……なのに、藤堂さんはどこへ行ってしまったのだろう?
藤堂は自分の大きめのTシャツを手に持って、リビングの入口に立ち尽くしていた。
……蝶々、なんて綺麗なんだ。
蝶々の一糸まとわぬ姿はこの上なく美しかった。藤堂は目を奪われて頭がクラクラしている。
「藤堂さん、どこに行ってたの?」
藤堂はすばやく蝶々にTシャツを投げた。でも、蝶々はそのTシャツをソファの上に置く。
「蝶々、頼むから、とりあえずそのTシャツを着てくれ…」
藤堂は自分の声ががさついているのが分かった。真っ白な肌をむき出しにした蝶々は、それでも何もせずにジッと藤堂を見ている。
「蝶々、頼むよ…」
藤堂はそう言いながら、ソファに置いているTシャツを蝶々にかぶせて着せた。
「そんな恰好でいたら風邪ひくし、それにこれから大切な話し合いをするのに、気が散って何も考えられなくなる」
胸元に茶色のボタンが二個ついている大きめの無地のTシャツは、それでも蝶々の体のラインは隠せない。
「それは藤堂さんがでしょ?」
藤堂の匂いのするTシャツを着た蝶々は、嬉しくてその場をくるくる回り始めた。
「私は何も身につけないのが好き。自由をすごく実感できるし、本当の自分に戻れる気がするんです」
藤堂はくるくる回る蝶々の体に釘付けだ。
初めてセックスを経験する女性と一つになるタイミングというのは、男が流れを作りながら優しくリードする。
藤堂はそんな一般的な常識しか持ち合わせていない。こんな前触れもなくそれも突然に全裸になる女性の扱い方は全く分からなかった。
でも、確実に興奮している自分がいる。気を抜いたら一瞬で狼に変身してしまう自分がそこにいる。
「藤堂さん、藤堂さんも裸になって」
……きっと、蝶々は一緒に買い物に行こう?みたいなそんなノリで言っている。裸になってしまったら、もうすることは一つしかないけどそれでいいのか…?
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