内気な僕は異世界でチートな存在になれるか?@異世界現代群像のパラグラフ

木木 上入

文字の大きさ
24 / 47
1章

1-24.洞窟

しおりを挟む
 ――エミナさんと別れてから、どれくらい歩いただろう。ムストゥペケテの頂上はとうに見えなくなり、雲海が凄く近くに見える。

「結構、遠いんだね」
「まあな、でも、もうちょっとだ。頑張れ!」
「エミナさんは、もう龍族の人と会ってるかな?」
「あの坂を上るのは骨が折れるだろうが、もう着いてもいい頃だろうな」
「そう……」

 龍族の人が助けてくれたのは事実だけど、どんな人かは分からない。エミナさんは大丈夫だろうか。再び脳裏に嫌な想像が浮かぶ。不安だ。

「なあ、ミズキ」
「なに?」
「人間達、酷いよな」

 イミッテの声のトーンが急に低くなった。多分、真面目な話をしようとすると、こういうトーンになるのだろうが……ふざけた感じではないイミッテは、なんだかイミッテじゃないみたいだ。

「え?」
「私は見たぞ、お前が牢屋でされた事」
「あれは……そうだね。僕だけじゃなく、エミナさんにまで酷い事をしてたなんて……」
「うむ……なあミズキ、そんな人間、救う価値があるのかな」
「価値って……大勢の人間が死ぬんだよ? だったら、やらなきゃ」
「その人が、お前やエミナにやった事は何だ? 私は見ていられなかったぞ」
「それは……でもさ、僕の所に来た人は、殆どが魔族に家族や友達を殺された人だったんだ。そんな人を、僕は責められないよ」
「しかし、お前は何もしていない。罪の無いお前に、あいつらは酷いことをしたんだぞ?」
「勘違いだったんだから、仕方ないよ」
「仕方ないで済ますのか、お前は。そういった人が食い物にされるのだぞ。私はそういう人間の性を散々見てきたのだ」
「でも……だからって……」
「迷いが見えるな。では言おうかな……」

 そう言うと、イミッテは沈黙した。何かを深く考えている風に見える。
 ふと、周りを見渡してみる。僕とエミナさんがここに飛ばされた地点から、だいぶ山を下ってきたらしく、細い気が目立つようになってきた。時々、太くて大きな木も見える。草の丈も高くなってきて、少し歩き辛くなってきた。そんな中、二人のザッザッという足音だけが、静寂の山中に響いている。

「エルダードラゴンは、お前の力を利用したいから言わないだろうが……実はな、お前は選択出来る。お前はまだ自分の真の力を知らないようだがな」

 イミッテが、意を決したように口を開いた。

「エルダードラゴンって……龍族の人?」
「そうだよ。他に誰が居る?」
「そうなの……で、選択って……?」
「いいか、旧支配者から人間を守れるという事は、人間を支配出来る力があるという事だ。その力を使って人間全部を救う事も出来れば、根絶やしにする事も出来るのだ」
「根絶やしって、ちょっと……」
「お前の認める者だけを生かしておく事だって、勿論出来るぞ。そうすれば、善き人だけ残る。皆幸せになるだろう?」
「いくらなんでも、見殺しにするなんて……」
「見返りを考えてみろよ。そんな輩を助けたとして、何をしてくれると思う?」
「それは……でも、悪い人だって、根気よく話せばいつかは……」
「皆が皆、そんなに物分りがいいと思うか?」
「それは……」
「ミズキには力がある。それに、優しい。でも、力があっても……ミズキのその優しさがあっても、全ての人の心は変えられないよ。悲しいことにな」
「そうかもしれないけど……」
「少しでも悪しき者が残れば、悪意はたちまち回りの善人を飲み込んでしまうだろうぜ? そうなったら、深い悲しみと、新たな悪しき者を生むだけだ」
「じゃあ、イミッテは、悪いやつは一人残らず見殺しにしろっていうのかい?」
「極端過ぎるか? だが、私はそれが唯一、皆が幸せになる方法だと思うがな。タイミングは今しかないぞ。だから今話してる。そして……それは強くて優しいミズキだから出来る事なんだ。お前しか出来ないんだよ!」

 イミッテの語気が強まる。

「……あそこだ。あそこにさえ行けば、もう目的地は目と鼻の先だ。さっきの事、心の隅にでも置いておいてくれよな」
「え……あ……」

 ポッカリと口を開けた洞窟が見える。この草と木だけの山の斜面に、そこだけぽっかりと穴が開いている様子は、なんだか唐突な感じがして違和感がある。
 僕とイミッテは、その洞窟の入り口で立ち止まった。

「……」

 イミッテの思いを受け止められるほど、この世界の事……いや、世界は関係無い。人間の事を理解出来ているのかは分からないが……ここまで来たのだ。行くしかない。

「さ、あと少しだ」

 薄暗いトンネルに足を踏み入れる。霧の中にあるせいか、じめじめとしている。

「この先で、お前は力を手に入れる。その後にどうするかは、お前次第だ。お前自身の力だ。お前の好きにするがいい」
「力……世界を救うための……」
「旧支配者を倒すための力だと思っているだろうが、別にそのためじゃないさ。言っただろう、極端な話、悪しき者だけを生かしておく事だって出来る」
「そんな事はしないよ」
「だろうな。ま、どう使うかは、お前次第だ。元の世界に戻る事もできるしな」
「え……!?」
「なんだ、エルダードラゴンは教えてくれなかったのか? 利用する気満々なんだな」
「それって……ええ……? ち、ちょっと待ってよ!」

 突然、帰れる手段が見つかった……という事なのか? 突然降って沸いた事に、どうしていいか分からない。

「お前の手に入れる力は、旧支配者に対抗できるほど強大だ。その力を、そういう事に使う選択肢も、当然ある」
「帰れるのか……でも……ここは……」
「勿論、この世界を救ってからでもいい。元の世界に帰っても、力はお前のものだからな」
「え……」
「どうしたい? お前はもう、弱者ではない。元の世界にだって、救いたい者、憎たらしい者、色々居るだろう?」
「それは……」
「良き者が不幸になる世の中を、お前は黙って見ているのかい?」
「……」

 分からない。いい人は生き残り、悪い人は死ぬ。その結果、世界の人がが幸せになったとして、僕がそんなことをやっていいのか?

「お前には力がある。それを忘れるなよ」
「ん……!」

 突然、気が遠くなる。何が……起こったのか……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

処理中です...