内気な僕は異世界でチートな存在になれるか?@異世界現代群像のパラグラフ

木木 上入

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1章

1-9.レヴィア

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「私が使うまでも無い。私の愛しい僕が使ってくれるから」
「なに!?」

 イミッテは警戒して飛び退いたが、すぐにそれが無意味な事だと分かった。
 エミナとイミッテの周りには、すでに枯れ葉が渦巻いていたからだ。

「くっ……エミナ、堪えろよ!」
「……!」

 舞い散る無数の枯れ葉が、二人を襲う。

「うあああああ!」
「きゃぁぁぁ!」

 枯れ葉は鋭く、二人の体に触れるだけで皮膚を斬り裂いた。

「くう……」

 枯れ葉は収まったが、二人の顔は苦痛に歪んでいた。

「うぐ……補助魔法のおかげで助かったぞ、エミナ」
「ごめん……ノンキャストだから、効果は薄いの」
「十分だ! 魔力への抵抗力が上がったのなら、ダークボルトにだって、ある程度は耐えられるしか!」
「うん……」

 エミナが傷口を見る。枯れ葉で切られた傷は、どれも浅い。幸いにも威力は低く抑えられているようだ。

「……んっ!」

 エミナは襲い来るリビングデッドの枝をウインドバリアで防いだ。蛇とリビングデッドの枝も、相変わらず二人を攻めたてている。
 襲い来る蛇を退治、足止めし、リビングデッドの枝はよけるかウインドバリアでガードする。ダークボルトはよけ、枯れ葉のダメージは軽減して受ける。
 エミナは、そしてイミッテも、そうやって攻撃を凌いでレヴィアに肉迫しようとした。が、最初以上にじりじりと後退せざるを得ない状況になっている。

「くそ……消耗戦に持ち込まれたな!」

 イミッテが毒づく。

「消耗戦なら、単純に戦力の少ないこちらが不利……きゃあっ!」

 エミナが悲鳴をあげ、倒れた。イミッテのよけたダークボルトが、後ろのエミナに命中したのだ。

「ううっ……」
「エミナ! 大丈夫!?」
「な、なんとか……」

 エミナは体中に走る激痛に耐えながら、よろよろと立ち上がった。

「フフフ……どうやら消耗戦ではないみたいねぇ」

 レヴィアがにやりと口元を緩ませる。

「貴方達が、私とこの子の攻撃をまともに受けて、果たして何回耐えられるかしらねぇ」
「ロビンが待ってる……これくらい……!」
「エミナ……!」

 襲い来るリビングデッドの枝を、エミナがウインドバリアで弾く。
 手は相変わらずジンジンと痺れるが、もう気にならなくなった。

「イミッテ、さっきは後ろに居るからって油断してただけ。これくらいの攻め、どうって事無い!」

「エミナ……おう! だったら、私も少しは体を張らないとな! ふぅぅ……」

 イミッテは、それまで構えていた左手を降ろした。

鳥魚流とりうおりゅう隼烈二段じんれつにだん!」

 ――ヒュンヒュン!
 風を切る音が、二回響く。イミッテが両手で隼烈じんれつ(じんれつ)を放ったのだ。

「キシャァァ!」

 仕留め切れていない方の片方の蛇がイミッテに肉迫する。蛇の牙がイミッテの肩をかすめる。

「イミッテちゃん!」
「大丈夫。このくらいの毒、内発気功で押さえれば平気だ」

 イミッテは、傷と毒の事を気にも留めずに隼烈二段じんれつにだん(じんれつにだん)を放ち続けた。
 ステップ、回転を織り交ぜながら、時に素早く、時に緩やかに、それでいて不規則に動くイミッテの動きは、さながら演武でもやっているようだ。

「エミナはダークボルトの痛みを我慢した。だったら、私はこれくらい我慢しないとな!」

 普通の隼烈じんれつ(じんれつ)と比べると、蛇を殲滅する速さは上がっているが、時折、仕留め切れない蛇に手傷を負わされるようになった。

「イミッテちゃん……」

 確かに、この方が今の状況には合っているが、イミッテちゃんの肌の傷はその分じわじわと増えていく。エミナはそう思い、胸を痛めた。

「く……気に入らない……嫌な奴!」

 レヴィアはダークボルトをイミッテの方へと放った。
 癇癪を起こした勢いからではない。エミナがブリザードストームを唱えている隙を見計らい、ダークボルトの直線上に二人が入るタイミングを待ったうえで放ったのだ。

「やっぱり、狙って来た……! イミッテちゃん、よけて! 私が受ける!」

 慌てた様子のエミナを見て、レヴィアはにやりと口元を緩ませた。

「さあ、どうするのかしら?」

 イミッテがよければエミナが傷つく。しかし、よけなければイミッテがただでは済まない。
 レヴィアは、この二択を迫られた時の顔を見るのがたまらなく好きなのだ。
 ある者は怯えたような顔を、ある者はレヴィアへの憎悪を、ある者はどうにも出来ない絶望を、その表情に浮かべていた。
 イミッテはどんな表情を浮かべて私を興奮させてくれるのだろう。レヴィアはそう考えながら、イミッテの表情の変化を注視した。
 が、二人ははレヴィアの期待する、どの表情もしていなかった。

抗魔流こうまりゅう……魔断まきり!」

 イミッテは腰を落とし、紫に怪しく光る拳でダークボルトに正拳突きを放った。
 ダークボルトは二つに割れ、その軌道を変えた。結果、二人には当たらずに、二人の後ろへと着弾する事になった。

「なっ……私のダークボルトが……魔具か!」

 レヴィアは驚きを隠せない様子だ。

「魔法と拳法は、その昔から、互いに優劣を争う、いわばライバルだぞ。その程度の魔法を斬れぬものか!」

 誇らしげに声をあげるイミッテを、エミナは後ろから見ている。
 そういえば、昔、誰かに聞いた事がある。「高度に進化した武術もまた、魔法と変わらない。行きつく先は、最強の何かだ」と。
 その上、イミッテは幾つもの武術を極めたエルフオブマスターアーツだ。拳で魔法が斬れても不思議ではない。

「それよりも気を付ける事だな。私の魔断まきりで斬られた魔法の威力は消えないぞ」
「何……!?」

 黒蛇こくじゃがエミナ達の背後を見る。エミナも攻撃の隙を見て、ちらりと背後を見た。そこには悶え苦しむ蛇の姿があった。

「お前の可愛い蛇を苦しませたくなかったら、ダークボルトは控えるんだな」

 エミナは、人間離れしたイミッテの器用さに驚いた。両断され、軌道を変えられたダークボルトは、後ろの蛇に当たっている。イミッテは、これを意図的にやったのだ。

「ち……忌々しい……いえ……フ……フフフフ……! 馬鹿ね!」
「ああ!? 馬鹿だと言った方が馬鹿なんだぞ!」

 イミッテが激昂する。

「愛でる蛇など、無数に居るのよ。貴方こそ、そんな小細工をしたところで、この量の蛇を相手にするので手一杯なのは変わらない。私のダークボルトも相手にする分、手数は増えるのよ」
「ほう……私が蛇にやられるか、エミナがダークボルトにやられるかの二択を迫れるという事を言いたいと見た」
「そう。貴方はどちらを選ぶかしら?」
「イミッテちゃん、私の事なら気にしないで。私だって魔法を防ぐ手段はいくつか持ってるし、あんな魔法くらい耐えてみせるわ!」
「いや、エミナは詠唱に時間を使わなくちゃ駄目だ。ダークボルトが来たところで、魔断まきりを使えばいいだけだ。わざわざエミナに魔法使ってもらうまでもない。だが……打ち漏らしたら、その時は頼むぞ」
「勿論よ。イミッテちゃんが危ない時は、私がイミッテちゃんを守るから!」
「ふ……優しいんだな、エミナは」
「麗しい友情ね、ああ……! 早く、肉体と精神、その二つをギタギタになるまで壊してやりたい……!」
黒蛇こくじゃ……そう……そういう事だったのね」

 エミナは気付いた。

「この短期間で、これだけの準備を整えられるネクロマンサーなら、私達のどちらか一人ごとき、赤子の手を捻るようなもの……私がやられても、イミッテちゃんがやられても、貴方はもう一方をなぶり殺しにするつもりなのね」
「逃げるという選択肢もあるのではないの? でも、この私を前にして、二人共逃げられるとは思わない事ねえ! うふふふふふふ!」
「うっさいぞ! 癪に障る笑い声だな!」

 イミッテは右手を突きだして、掌を黒蛇こくじゃの方へとかざし、肘の辺りに左手の掌を添えた。

超気功流ちょうきこうりゅう……気功丸きこうがん!」
 イミッテの右手から、薄黄色の光が飛び出た。それは一直線に黒蛇こくじゃへと伸びていくが……木のリビングデッドの太い枝が行く手を塞いだ。
 気功丸きこうがんは、木のリビングデッドに当たると拡散霧消した。木のリビングデッドにも、あまりダメージは与えられていないみたいだ。

「フフフ……やはり、遠距離戦は苦手のようね。さて、どうするのかしら。どちらか逃げなければ、二人共やられるという事は、もう分かっている筈だけれど?」
「ちっ……頭に来るな。挑発に乗っちゃだめな事は分かっているが……」

 イミッテはぼそりと言いながら、迫る蛇を相手に隼烈二段じんれつにだんを放った。

「貴方の言葉に耳を貸すつもりは無いわ!」

 ブリザードストームを打ち終わったエミナが叫んだ。

「仲間割れさせるか、どちらかがこの場から逃げるか……貴方はそれを誘ってる。そんな姑息な人に、私は……負けない!」
「おやおや……そっちも利口じゃなかったみたいねえ……利口はあの子だけかしら?」
「あの子って……」
「ピンクの髪のかわいい子。見た目も頭もいい子は居るものねぇ」
「……ミズキちゃんの事!?」
「大丈夫。私は利口で素直な子は好きだからねえ、危害は加えないよ」
「……やっぱり、何かの使いか、リビングデッドを通して、私達の行動を見ていたのね」
「ノゾキとか趣味悪いんだよ!」
「フフフ……正面からなら勝てるという自信がどこから来たのかは知らないけど、滑稽で面白かったわよぉ!」
「勝ちます。勝ってみせます!」
「ああ! 今でも変わらん! 貴様なぞ、正々堂々、正面から勝ってやるさ!」

 二人がレヴィアに猛る。

「それは楽しみね。そんな傷だらけの体で言うのだったら、きっとそうなんでしょうねぇ、アハハハハハ!」
「ちっ……! 耳障りな笑いだ! いいか、この蛇をぶっ倒して、すぐにお前の所に行ってやるからな! ……って……!」

 蛇の波状攻撃を受けているイミッテは、隼烈二段じんれつにだんでそれを捌く事に手一杯だ。そこに、レヴィアがダークボルトを放った。
 イミッテは覚悟を決めた。

「うあああああっ!」

 イミッテの体に激痛が走る。分かってはいたが、よけられない。よけたところで、捌ききれていない蛇達によって、それ以上のダメージを受けるだけだろう。

「うぐ……うぅ……」

 イミッテは両手で自分の体を抱き込むように抑え、しゃがみ込んだ。

「イミッテちゃん!」
「フフフ……疲れとダメージが蓄積して動きが鈍っているのが目に見えて分かるわぁ」
「う……ぐ……い……いったぁ……!」

 イミッテは脇腹を抱えながら、よろよろと立ち上がった。

「イミッテちゃんは後ろへ! 私が前に出ます!」

 走り出そうとするエミナを、イミッテは後ろに手を付きだして止めた。

「み……見損なうなよ……まだ全然いけるぞ……」

 イミッテの額に脂汗が滲む。

「でも……」
「大丈夫。あともう一頑張り……だといいなぁ……っ!」

 イミッテが歯を食いしばって立ち上がり、間一髪のところで木のリビングデッドの枝をよけた。

(ミズキちゃん……私達、もう……)
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