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第十三篇第二章 鳳凰殿への来客
招かれざる客
しおりを挟む一度、舞台は鳳凰殿へと戻って行く。
ロード達が政府直下裏帝軍と戦闘体勢へ入る
時刻とほぼ刻を同じくして鳳凰殿には一人の
招かれざる客がブラリと訪れていた。
其の男は小紫色の羽織を揺らしながら鳳凰殿
の中腹に在る祈りの祭壇へと向かった。
羽織と同じく紫色の髪が目立つ其の細身の
若き帝国兵の首には此方も紫色のストールが
巻かれており其の下には白い軍服が映える。
其の帝国軍の男は祈りの祭壇へ訪れると視線
の先にメラメラと燃え盛る真紅の聖火を目に
して静かに立ち止まった。
「此の国を照らす消えない炎か……くだらんな……」
そう吐き捨てる様に発した其の男の視界に
左方から一人の女性が近寄ってきた。
「あら…聞き捨てなりませんね。此れは貴方達が仕える王家が其の黎明期から崇めて来続けた神聖な聖火ですよ?」
六撰将リアの姿を一瞥した帝国軍の男は再び
其の視線を聖火へと移すと口を開く。
「王家、か。其の灯火が消え入りそうな今…崇めているのが此の伝説を持つ消えない炎なのか?皮肉めいた話だ…」
此の炎を護り守護神、鳳凰を奉り崇めて来た
巫女であるリアにとって其の言葉には苛立ち
を隠し切れないモノだった。
「やはり…私達が知る様な誉れ高い帝国軍の兵は……現体制からは消え失せてしまった様ですね」
「前体制は誉れ高かった…そう言いたいのか?此の俺に……」
帝国軍の男は再びリアへ視線を戻すと今にも
凍りつきそうな程、冷たい瞳を向けた。
「聞いていた話の通りですね……貴方はコンプレックスの塊……其の瞳に映るのは平和や民では無く…あの御方という訳ですか」
「当て付けて来たのはアンタだろう。だが的は得ている……そうさ、俺の瞳に映るのは奴だけ…俺の内に秘められているのは奴への復讐心だけだ…!」
「其れが貴方の存在意義ですか……国王直下帝国軍大将アビス・ジャッククォーツ…!」
リアから明かされた眼前の男の名前。
其の名は何処かで聞き覚えのある名だった。
「そうさ、だからこそ会いに来たんだ。親父殿に……戦鬼の名を冠したあの男が…同僚にいとも簡単に蹂躙されたと聞いてな…其の情け無いツラを拝みに来た」
国王直下帝国軍大将アビス。
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を持つ、親子であった。
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を超えたという証明に他ならない。
「自身の父に向かって余りにも軽率で敬いの無い言葉ですよ、アビスさん」
「尊敬の念等は無い……俺から奴に向かってある感情は一つ……恨みだけだ」
冷たく言い放つアビスの言葉にリアの身体に
痛烈な寒気と恐怖が襲い掛かった。
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