RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
上 下
572 / 909
第十三篇第二章 鳳凰殿への来客

帝国軍大将 アビス・ジャッククォーツ

しおりを挟む





アビスの身体から放たれる冷たく殺気に満ち
溢れる其の闘気にリアは後退りする。

間合いはアビスから見れば一歩たりともリア
に対して詰まってはいないが外れぬ其の冷酷
とも取れる視線の重圧は重たい。

錫杖を手に取り応戦の体勢を見せるリアだが
アビスは動揺する気配すら見せなかった。



「止めておけ。貴様が俺を倒す等、見果てぬ夢だ……大人しく奴を此処に呼べ」



リアに対し命令を発したアビスの言葉にリア
は現時点での最善を脳内で探し回る。

だが、どれも此れもアビスを上回る事はリア
の脳内シュミレーションでは不可能だった。

動きを見せないリアを見たアビスは此処で
リアへ突き刺されていた視線を外し、下方へ
視線を落とすと小さく息を吐いた。

そして、腰元の鞘から自身の刀を緩りと抜刀
して見せると先端をリアへと向ける。

其の刀は、刀身が純白に柄や唾を蒼色で塗り
固められたとても美しい物だった。

最上大業物の一振り、刀型、白龍命びゃくりゅうのみこと

時代に名を馳せる業物は持ち主を選ぶという
逸話もあるが、其の名に恥じぬ持ち主と其の
勇名を馳せるに値する業物。

強者違わぬ関係性が此処に在る。

アビスから発せられる冷たい冷気が祭壇上の
聖火を静かに揺らしている。



「やはり、今の状態であの御方を貴方に逢わせる訳には行かない様です……」



リアが恐怖の中、振り絞った其の言葉を聞き
終えたアビスは説得を諦める。



「そうか…。ならば…其れが貴様の寿命が縮む事となる必然たる答えとなった……」



静かに一歩を踏み出そうとした大将アビスの
動きを察知してリアは背後へ一気に跳び身体
に真珠色の流水のギフトを纏う。

そして、振られた錫杖から流水の矢がアビス
目掛けて数十本単位で襲い掛かる。

アビスは刀の先端をほんの少し斜め上へ振る
姿勢を見せると眼前に純白の氷の壁が発生し
真珠色の流水の矢を防いで見せる。



「其れだけでは防ぎ切る事は不可能です、アビスさん…!」



リアは地上へと降り立つと同時に再度、錫杖
を振って今度は鶴の羽根の真珠色の流水をも
アビスへと放ち、追撃する。

すると、アビスの眼前に連なる様に出現した
氷の壁が矢や羽根が刺さった位置から段々と
ドロドロになって溶けて行った。



「流水のギフトの特性“溶解”……貴方の氷は全て溶かされて行きます。其の盾となった壁だけでは防ぎ切る事は難しいでしょう…!」



リアの言った通りにアビスの眼前の壁は複数
の攻撃の連鎖に因って溶かされて行きリアの
視界にアビスが映り始める。

そして、リアの放った攻撃が遂に大将アビス
へと届こうとした其の瞬間だった。



「言いたい事は其れだけか…?」



リアは底知れぬ恐怖を感じ取る。

其の理由は簡単、溶かされて行く速度を遥か
に上回る速度でリアの攻撃はアビスの攻撃に
依って完全凍結を施されてしまったからだ。


しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...