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第十三篇第二章 鳳凰殿への来客
帝国軍大将 アビス・ジャッククォーツ
しおりを挟むアビスの身体から放たれる冷たく殺気に満ち
溢れる其の闘気にリアは後退りする。
間合いはアビスから見れば一歩たりともリア
に対して詰まってはいないが外れぬ其の冷酷
とも取れる視線の重圧は重たい。
錫杖を手に取り応戦の体勢を見せるリアだが
アビスは動揺する気配すら見せなかった。
「止めておけ。貴様が俺を倒す等、見果てぬ夢だ……大人しく奴を此処に呼べ」
リアに対し命令を発したアビスの言葉にリア
は現時点での最善を脳内で探し回る。
だが、どれも此れもアビスを上回る事はリア
の脳内シュミレーションでは不可能だった。
動きを見せないリアを見たアビスは此処で
リアへ突き刺されていた視線を外し、下方へ
視線を落とすと小さく息を吐いた。
そして、腰元の鞘から自身の刀を緩りと抜刀
して見せると先端をリアへと向ける。
其の刀は、刀身が純白に柄や唾を蒼色で塗り
固められたとても美しい物だった。
最上大業物の一振り、刀型、白龍命。
時代に名を馳せる業物は持ち主を選ぶという
逸話もあるが、其の名に恥じぬ持ち主と其の
勇名を馳せるに値する業物。
強者違わぬ関係性が此処に在る。
アビスから発せられる冷たい冷気が祭壇上の
聖火を静かに揺らしている。
「やはり、今の状態であの御方を貴方に逢わせる訳には行かない様です……」
リアが恐怖の中、振り絞った其の言葉を聞き
終えたアビスは説得を諦める。
「そうか…。ならば…其れが貴様の寿命が縮む事となる必然たる答えとなった……」
静かに一歩を踏み出そうとした大将アビスの
動きを察知してリアは背後へ一気に跳び身体
に真珠色の流水のギフトを纏う。
そして、振られた錫杖から流水の矢がアビス
目掛けて数十本単位で襲い掛かる。
アビスは刀の先端をほんの少し斜め上へ振る
姿勢を見せると眼前に純白の氷の壁が発生し
真珠色の流水の矢を防いで見せる。
「其れだけでは防ぎ切る事は不可能です、アビスさん…!」
リアは地上へと降り立つと同時に再度、錫杖
を振って今度は鶴の羽根の真珠色の流水をも
アビスへと放ち、追撃する。
すると、アビスの眼前に連なる様に出現した
氷の壁が矢や羽根が刺さった位置から段々と
ドロドロになって溶けて行った。
「流水のギフトの特性“溶解”……貴方の氷は全て溶かされて行きます。其の盾となった壁だけでは防ぎ切る事は難しいでしょう…!」
リアの言った通りにアビスの眼前の壁は複数
の攻撃の連鎖に因って溶かされて行きリアの
視界にアビスが映り始める。
そして、リアの放った攻撃が遂に大将アビス
へと届こうとした其の瞬間だった。
「言いたい事は其れだけか…?」
リアは底知れぬ恐怖を感じ取る。
其の理由は簡単、溶かされて行く速度を遥か
に上回る速度でリアの攻撃はアビスの攻撃に
依って完全凍結を施されてしまったからだ。
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