RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第八篇第二章 運命の会談

金獅子の目醒め“姉弟”

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時は遡るー。

此れは二十年前、とある小さな村落で暮らす
姉弟の哀しき物語であり一人の少年に怨みと
呼べる根を張らせた事件の御話。

此処は空の街スカイニウム。

其の外れにある山々に囲まれた長閑な村落に
とある有名な姉弟が居た。

其処の村落は高齢の人間達が大勢を占める程
の若い人間の少なかったのだが何処から流れ
て来たかすらも解らない当時十二歳になる姉
と五歳になる弟が村の老人達に寵愛を受けて
過ごして居たのだ。

村落皆の娘、息子同然の存在だったからこそ
有名になって行ったのだろう。

山を降りて市場に買い物に出ても其の姉弟を
知らない人間は近場ではいなかったのだ。

其の理由の一つとして美しい金色の髪を風に
なびかせる器量の高い姉の存在があった。

十二歳というには何処か大人びている。

老人達に助けられながらでも赤子だった弟を
護りながら此の村落に逃げ果せて来た頃から
弟を護る為だけに必死に生きて来た姉。

だからこそなのか、聖母の様な雰囲気すら
漂わせる姉には誰もが一目置いていた。

市場町に出れば其処には若い衆が居る。

既に数年後を狙って姉との距離感を縮めよう
と画策する男まで出没しているのだから姉の
器量と可憐さは凄まじい事を示す。

そんな姉の名は、レイナ・ハワード。

長い金髪をなびかせながらワンピースに其の
身を包む姿を“天使”と形容する者もいる。

そんな姉に護られながら親の顔すら知らずに
生きて来たが天真爛漫に笑顔を絶やす事すら
しない弟は少年らしく順調に成長する。

普通なら親の顔すら知らず姉に育てられて
いれば親子の姿を見て羨ましさや自身の不遇
さを知り暗い子供になっても変では無い。

だが、弟は人一倍幸せそうだった。

其れは大好きな姉がいつも隣に居てくれる
からに他ならないのだ。

だからこそ仲が良くいつも笑みを絶やさない
姉弟の姿は高齢者の多い村落の人間達には
希望にしか見えなかったのだろう。

行く当ても無く或る日突然に流れて来た赤子
連れの少女が村落の人間達に受け入れられて
寵愛を受けたのにも納得が行く。

姉レイナ十二歳と弟エルヴィス五歳の生活は
そんな人間達に支えられて成り立っていた。



「あらあら。レイナちゃんにエル君、また山の麓の市場にまでお買い物かい?」


「はいっ!少し切らしたモノがあってこれから行ってきますっ!」


「偉いねぇ、レイナちゃんは。エル君もお手伝いだよねぇ…重い物持てるかな?」


「何言ってんだよ、オバさん。俺けっこう力持ちなんだぜッ?」


「そうかいそうかい。子供は元気があって良いねぇ…」


「じゃあそろそろ行ってきますっ!」



村落のお婆さんに手を振りながら姉弟は手を
繋ぎながら何やら一緒に歌を歌いながら弾む
足取りで山を下って行く。

仲良し姉弟のいつも通りの光景だった。


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