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第七篇第三章 狂宴の雪山
雪の大地を踏み締める黒の軍団
しおりを挟むそして、場面は切り替わる。
此処はエルブルーム山の麓にある大きな湖の
ほとりにある雪が降り積もった平野の大地。
其処には黒のコートに身を包む空色の髪を
ツインテールに纏めた女性と深い青の長髪を
腰辺りまで伸ばしたもう一人の女性が居た。
空色の髪の女性は辺りをチラチラと見回る様
に視線を送ると一度俯き溜息を吐く。
「……はぁ……何で逸れるのよ…」
どうやら誰かを探している最中らしい。
その後ろで青の髪の女性が寒さなど何でも
無いかの様に明るい口調で話し始める。
「アドアドぉ、あんまり溜息ばっかり吐いてると直ぐにヨボヨボで皺だらけの老け顔お婆ちゃんになっちゃうよっ?」
「…そうね…にしてもリズ…ちょっと言い過ぎじゃない…?」
「はて…?」
困った様に疑問を浮かべる青い髪の小柄な
女性を「アドアド」と渾名で呼ばれた更に
小柄な女性であるアドリー・エイテッドは
改めて違う意味合いで溜息を吐いた。
護国師団反乱軍参謀アドリー・エイテッド。
彼女は風の街ヴェントに在る酒場が立ち並ぶ
町カンピオンノールの外れで同じく反乱軍の
ギルドとロードの戦闘を仲裁した。
そして風の街で勃発した革命軍のアジトへの
急襲作戦ロジャーズグリフの戦いに於いて
革命軍の副長ティアと武を競った女性だ。
更には森の街フォレストールに在る孤児村
ピースハウスで過去が開示されている。
そして、其のアドリーと共にいる見慣れない
深い青の長髪をたなびかせる此方の若く小柄
でちょっぴり丸顔の細身の女性が口を開く。
「ねぇねぇ聞いて聞いてっ。リズはね、あっちに居ると思うのっ」
ビシッと人差し指を突き立てて雪山を指差す
リズと名乗った女性は黒のヒールブーツで足
を支えコートの下には透け感のあるドレス風
の黒の団服に袖を通している。
そして黒のヒラヒラとしたミニスカに膝辺り
迄のニーハイを着用している姿を見るにリズ
はアドリーの事を意識して真似している様に
も思えてならない。
「……リズ…其れは何で…?」
「えっ?そんなのリズの勘ピューターに決まってるじゃんっ」
「……はぁ……やっぱり勘だよね。うん、そうじゃないかと薄々…いや結構高い確率で思ってた…」
「もうっ、アドアドったらまーた溜息なんて吐いちゃって。そんな溜息ばっかりしてたら『めんどくさいこの女ぁ~』って言われてエル様に嫌われちゃうよっ?」
「………ぐっ……な、なんで其処でエルヴィスが出て来るのよ…」
『エル様』とはリズの総長エルヴィスを呼ぶ
時の渾名らしいがリズは全員の渾名を付ける
のが一種の趣味である様だがリズの言う総長
エルヴィスの『エル様』とはとあるアイドル
を呼ぶ時の『様』ではなく、ましてや貴族の
様に位の高い人間を呼ぶ時の『様』も違う。
『エルヴィスって俺様キャラだよねぇ~』
と言い放ったリズ自身の言葉から由来した
エルヴィスは俺様でエル様である。
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