RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第七篇第一章 雪降る氷山地帯の再会

呉越同舟の舟出

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舟は進むー。

水の街アリアアクアからプレジアの最北端に
位置する氷の街ケベルアイスを目指して三人
は国内を流れるボルガ・ガナンデ運河を舟で
緩り緩りと進む事となった。

北の大地に近付くに連れて気温が下がり始め
ロード、シェリー、そしてシグマの三人は
暖かそうなコートを纏い装い新たに運河の
航路の先に目を向けている。

舟は運河の両隣に聳える山々の間隙を縫う様
にパドルを力強く回して進んで行くと目の前
の山々も装いを変えて行った。

美しき純白の雪化粧を施した山々、更には
川すらも氷を張り巡らせ此の舟が砕氷船で
無ければ進む事すら困難な様に感じる。

冷たい空気に包まれて更に風が吹く度に凍え
身体を震わせながらもロードとシグマは氷が
砕けるガガガッ、という音と割れて行く氷の
様と山々の山紫水明の姿に目を奪われる。



「おおッ!なんかスッゲー…もう氷の街ん中に入ったのが直ぐにわかんなッ!」


「なんや…プレジアっちゅうのも悪うないやんけ…」



舟の甲板から手すりに手を付いて其の身を
ぐっと乗り出す様に景色に目を向ける二人。



「ふふふっ…。何だかお二人とも兄弟みたいですねっ」



二人の背後でベンチに腰掛けながら掌を口に
当てて優しく微笑んだのはシェリーだった。



「……ッ…きょ、兄弟だと…?」


「なっ、なんでやねん。姫様ぁ…ワイがよりにもよって…こないなんと…!」



ふと甲板の手すりから手を離しシェリーの方
へ、ほぼ同時に向き直ったロードとシグマは
お互いに顔を見合わせると我に返る。

お互いにガンを飛ばし合いながら喧嘩腰の姿
へと様相を変えて行った二人は何やらお互い
に喧嘩を売り合っている様だった。



「(はわわっ…また喧嘩してますっ…。でもなんだかロード様とシグマってどことなく似てる気がするんですよねぇ…)」



溜息をついた後に心の中で呟いたシェリーは
喧嘩腰の二人の姿をまた緩りと眺める。

其処に天からのプレゼントが舞い降りる。



「…ん?お…おお!おいシェリー見ろよッ!降ってきたぜ?」


「はわわわわっ…!とっても綺麗ですっ」


「おいッ!コラァ…!姫様と呼べっちゅうてんのがまだわからんのか…!」


「ふふっ、シグマ。そんなの今はどうでもいいですっ…ほら、見てみて?」


「……なんや?おお…こりゃあまた…より一層風情が嗜めるっちゅうもんや…!」



三人は甲板の上で向かい合って円を描く様に
固まると揃って真上を見上げて我慢等出来ぬ
程の其の天から舞い降りた純白の雪に満面の
笑顔を浮かべ全ての感情を奪われる。

喧騒や喧嘩、諍いや争い。

全てを其の美しい様で洗い流し浄化するかの
如くロード、シェリー、そしてシグマの三人
の頭上から美しい雪が降り注ぐ。

こうして氷の街ケベルアイスでの物語は緩り
と紡がれ始めて行ったのだった。

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