RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第一篇第二章 拳術道場の女

静かに燃ゆる炎

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辺りは既に暗闇に包まれた。

マーシャルの拳術道場がガスリーという
男に嫌がらせを受けていると知った二人は
更なる襲撃に備えて、道場裏の丘の上で
焚き火に当たっていた。

そのまま夜が更けて行くと、道場の灯りも
消え、市場町から多少外れた此の場所は
二人が燃やす焚き火の明かりのみとなった。

此の後は、交互に休憩を挟みながら
道場に不審な者達が現れないかを見張ると
決めた二人が目を光らせる中、どんどん
夜は更けて行くのだった。


其処から何時間時が進んだか、解らない
中で見張りをしていたシャーレにロードが
声を掛ける。



「そろそろ代ろう、シャーレ。少し休んで来いよ」


「いや、待て。」


「どうしたよ?」


「誰か来た…」



シャーレが道場に近付く人影を確認すると
ロードは気を引き締める。



「暗くて見えねぇな。行こう」



顔迄は確認出来る距離では無く、ロードは
慌てて焚き火の火を消すと、シャーレと
共に丘を駆け降りて行く。

しかも下り坂ではなく、多少突き出した
岩場が足場になりそうなだけの絶壁を
何の躊躇もなく、勢い其のままに進む。

そして、敷地内の人間を確認しようとした
二人は、中央に居るガスリーの姿を発見。

示し合わせて、突入を試みた瞬間に
二人は目を疑う光景を目にする事となる。

合計で二十人程のガスリー一派の連中が
道場に火を付け始めたのだ。

其れも、当たり前かの様な表情で時には
笑みを浮かべる者も居り、ロードは
怒りのまま、声を荒げる。



「何やってんだ、テメェらァァ!!」



其の声に気付いたガスリー一派の半数が
放火を止めてロード達に歩み寄る。

だが、まだ半数は放火を続けて居る。



「何やってるか?見ればわかんだろ。燃やしてんだよ此の道場。で、お前等誰よ?」



一派の連中を掻き分けて出て来たガスリーの
言葉に二人は怒りを隠せない。



「さも当たり前の様に言ってんじゃ無ェ!!!!」


「縁あってマーシャルさんには恩が有る。止めるぞお前達の蛮行!」


「良くわかんねぇがよ…ならアイツが焼け死ぬ前に救い出してみろよッ!!」



叫び声を上げた後に嫌味たらしく舌を
出したガスリーに堪忍袋の尾が切れた
二人は刀を構え、一派連中と乱闘となる。



「想像と違ェ助っ人登場も関係無ェ…下手に出てりゃ此の俺を殴る小娘まで出て来たこんな道場、利権書ごと燃やしてやるよ!!」


「させっかよ…ニャロウ共ォ!!」


二人は、一派の連中を斬っては捨てて
斬っては捨てて放火を行う連中に向けて
走り出すと、半数の一派も此方へと向く。

だが、段々と火の手は進み、ロードは
シャーレに声を掛ける。



「シャーレ!先にマーシャルさんを頼む!ここは俺がやるッ!」


「任せたぞ」



シャーレはロードの言葉に一目散に
道場内へと突き進んで行った。
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