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28、自分から〈泉水目線〉

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「……いいですよ」
「…………へ…………?」
「すみません、ほったらかしで。……こんなに、おっきくなっちゃってるのに……」
「えっ、いや、そうじゃなくて…………んっ」

 一季は身を起こした状態のまま、ちゅっと泉水の頬にキスをした。二度、三度とキスを続けながら、一季はゆっくりと、その手を泉水の股間の方へと這わせ始める。

 そして、はちきれんばかりに盛り上がったスラックスの上で、一季の指先が、その輪郭を辿るように滑り……。

「あ、あっ……♡ ちょ、そやなくてっ……!!!」
「ごめんなさい、つらかったですよね? すぐ、楽にしてあげますから」
「アっ、まって、あのっ……ふぁっ…………ぁ」

 一季は器用に泉水のベルトを緩め、あっという間にスラックスのジッパーを引き下げた。

 ふっくらとした唇で頬や耳にキスをされながら、下着の上からさわさわと怒張を撫でられるのは、うっかり射精してしまいそうになるほどに気持ちがいい。一季のほうにも慣れが出て来たのか、その手つきは以前よりもぐっと淫らだ。


 ——あ、あかん……むっちゃきもちええ…………って、いや、そうじゃなくて!! 今日は俺が嶋崎さんを気持ちよくして差し上げようと思ってたのに、なんでこんなことにっ……!! っ、でも、……うわぁ……パンツの上から撫でられるだけで、もう、イキそ……あかん、早すぎや、それはさすがにあかんっ……!!


「こんなに濡れて……すごく我慢させちゃってたんですね。ごめんなさい、泉水さん……」
「い、いやっ……そんな、ことはァっ……はぁっ……うぅっ……ン」
「……はぁ……ほんとに、おっきぃ。すごいなぁ……」

 耳元で、一季がうっとりそんなことを囁くものだからたまらない。泉水はビクンっと身体を震わせ身悶えつつ、ぎゅっと目を閉じ、喘ぎ声を必死でこらえた。挿れる側の男がアンアン言いまくっては格好がつかないような気がして、ぐっと奥歯を噛み締めるのだが……。

「あっ……しまさきさんっ……!」

 するり、と泉水の手が下着の中に忍びこんできたことで、泉水はとうとう甘ったるい悲鳴をあげてしまった。一季はさらに身を乗り出し、泉水の顔を上から覗き込みながら、陶然とした表情でこう言った。

「……泉水さん、キスしたい」
「ふぇ…………っ?」
「口、開けてくれませんか?」
「は、はぃ……っ……」

 促されるまま口を開くと、すぐに唇を塞がれた。さらには、あたたかく濡れたものが、するりと口内に入り込んでくるではないか。

 それはゆったりとした動きで泉水の舌を撫で、やわらかな動きで口内の粘膜を刺激して……。


 ——えっ…………エッ!?!? これ、舌!? し、し、しまさきさんの…………舌っ……!!? まさか、こ、こ、これ……ディープキス……ッ……!!


「ふっ……う……ン」
「ぁ……すごい、もっと硬くなりましたね」
「はぁっ……あふ……」

 熱に浮かされたような掠れた声で、一季は吐息の隙間でそう囁いた。いやらしく口内を愛撫する一季の舌の動きや、とろりと感じる唾液の味に反応して、未だかつてないほどに、ぎゅんぎゅんと股間に熱が滾っていく。

「あ、あっ……あかん、イきそっ……はぁっ……はぁっ……」
「いいですよ? いっぱい出してください……気持ちいいですか?」
「はぁっ……! あぁっ……! きもちいい、めっちゃきもちいいです……あ、あっ……あ……!」
「……泉水さん、かわいい。大好きです」

 さらに深く唇を重ねる一季を抱きしめながら、泉水はあっけなく、その手の中で射精していた。なんというあっけなさだろう……と、己の早漏っぷりを悲嘆する気持ちも湧いてくるが、一季が積極的に自分を求めてくれたこともまた純粋に嬉しくて、ぎゅっと強く、その背中を抱き寄せた。

「はぁ……はぁ……っ……はぁ……」
「すごい、たっぷり……」
「あっ……ご、ごめんなさい……。お、俺ばっかり気持ちよくしてもらってしもて……」
「いいえ……こんなに喜んでもらえるんです。嬉しくないわけないじゃないですか」

 そう言って、一季はちゅっと泉水の頬にキスをしてくれる。
 なんという優しさだろう。キスと手コキで、ものの数分のうちに射精してしまう童貞を鼻で笑うこともなく、慈愛に満ちた美しい笑顔を見せてくれるなんて……と、泉水は射精後の余韻にしびれた頭で、うるうるしながら一季のことを見上げていた。

 一季の手がそっと下着から出て行ってしまうと、どろりと濡れた下着が急に恥ずかしくなってしまう。起き上がり、白濁で濡れた手をティッシュで拭っている一季を見て、泉水は慌てて起き上がった。

「あのっ、俺が拭きます!」
「あ……すみません」
「し、嶋崎さん……あの」

 自分のものよりもひと回り小さい一季の手を丁寧に拭いながら、泉水は意を決した。顔を上げ、じっと一季を見つめながら、思いの丈を訴えてみる。

「今日は俺も、触ってみたい、んですけど……」
「え? あ、……僕のを、ですか?」
「そう、です。こないだは怖がらせてしもたけど……」
「あ、あれは違うんですよ! 怖かったわけじゃないんです。何だか、急に不安になってしまっただけで」
「不安?」

 泉水の問いに、一季は申し訳なさそうに目を伏せた。

「また、うまくできなかったらどうしようっていうか。……泉水さんをがっかりさせてしまったら……と思うと、何だか身が竦んでしまって」
「あ、そうやったんですか?」
「はい……」

 一季はそう言って、気まずげに自分の上腕を摩っている。それはどことなく寒そうな仕草に見え、泉水はハッとして、慌てて一季の身体を抱き寄せた。少しひんやりとした肌が、心地良い。

 少し骨ばった肩をぎゅっと抱きしめ、泉水は一季に言い聞かせるように、ゆっくりとこう言った。

「俺は、がっかりなんてしませんよ」
「い、いやでも、気まずい思いをさせてしまったら……」
「大丈夫。俺はあなたの状況や気持ちを、誰よりも理解してるつもりです」
「……泉水さん」
「俺は今、あなたに触れたくて触れたくて、仕方がないんです。せやから……させてください。お願いします」
「……」

 一季から目を逸らすことなく、真摯な想いを込めながら、泉水はそう訴えた。

 見つめ合うこと数秒。
 一季は忘れていた瞬きを思い出したかのようにまつ毛を上下させ、小さくひとつ頷いた。

「……よろしくお願いします」
「あっ……は、はい!! せ、精一杯頑張ります!!」


 触れてもいいという許可が降りたことで、泉水のテンションはぐぐんとうなぎのぼりである。

 だが同時に緊張感も急上昇してしまい、一体何からどう始めればいいのか分からなくなってしまった。


 ——え、ええと、ま、まずは何したらええんやろ……? いきなりズボンの中に手ぇ突っ込むとかありえへんよな。まずは、まずは……ええと、あ、あ、あい、愛撫ってやつをするんやんな……。けど、いきなりおっぱい舐めたりとか、してもいいんやっけ……!? い、いや、ちょいそれもおかしいか!? そ、それより先にや!! む、ムード……ムードとか作らなあかんやんな!! む、ムード……ムード……? それってどうやったら出来上がるもんなん!? あかん、全く分からへん……!!


 一季を抱いたまま、貝のように黙してしまう泉水である。
 だが、一季もそろそろ慣れてきたのか、泉水の様子に戸惑うそぶりは見られなかった。泉水の緊張を解きほぐすように優しく微笑んでいる。

「頑張らなくてもいいですよ。僕だって、泉水さんに触って欲しいなって、すごく思ってます」
「ほ、ほんとですか……?」
「だから……」

 白い腕が首筋に絡みついて来たかと思うと、そのままぐっと引き寄せられ、泉水は一季の上に倒れこむような格好になっていた。「おわっ」と声をたてつつ一季の上に覆い被さると、触れ合う肌の滑らかな感触に、再びかっと身体が熱くなる。

 一季の吐息も、いつになく熱い。そして腰のあたりには、はっきりと一季の高ぶりを感じることができた。

 潤んだ瞳、しっとりと濡れ、紅潮した赤い唇……一季の全身から放たれる色香は、いつもより濃厚だ。鈍い泉水でさえ、一季が性的興奮状態にあるということがよく分かった。

「キス、してもらえませんか……?」
「へっ……あ、あっ、はい……!!」
「ふふっ……そんな硬くならないでください。僕、泉水さんとキスするの、すごく好きなんですよ?」
「ほ、ほんまですか……!? 俺、なんもできてへんのに……」
「ううん、何もしなくたって、くっついてるだけで気持ちいいんです。……なんででしょうね」

 一季の甘い囁きに導かれるように、泉水はゆっくりと、桜色の唇にキスをした。
 泉水のほうから、一季の唇に、キスを……。


 ——はぁ………………ぁ、あ…………。


 これまで一季がしてくれたことを思い出しつつ、泉水は柔らかく、一季のそれを啄んだ。がっつきそうになるのを何とか堪え、優しく優しくと心がけながら。

 しっとりと濡れた唇の感触は何物に変えがたいほどに気持ちがよく、拙いキスに応えてくれる一季の唇の動きに、救われるような思いがした。愛おしさが込み上げて、胸が苦しくなってくる。


 ——好き、めっちゃ好き……。ほんっまに、かわいい……気持ちよくしてあげたい……。

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