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第六章 想い合うということ
終 うたごえ
しおりを挟む夜顔は、あたたかな布団の中で目を覚ました。
ぴちち、と燕の歌う声に、夢から現へと引き寄せられたのだ。夜顔は笑顔を浮かべ、その可愛らしい声のする方へと誘われてゆく。
隣で眠っている藤之助を起こさないように、静かに戸を開いて外へ出た。
朝日が登りはじめた森の中は、ぼんやりと立ち込めた霧の中に光の筋が浮かび上がっている。
――きれい。きれい。
夜顔は、美しい風景の中へと駆け出してゆく。
黒い燕が頭上を飛び回るのを、夜顔は笑顔で追いかけた。
自然と、笑顔が溢れる。
燕たちはひとしきり森の中を飛び回った後、二人が住み着いている小屋の軒下へと、すいと入っていった。
夜顔は燕の巣を見上げて、手を伸ばそうとした。
「こら、だめだよ、夜顔」
のっそりと起きてきた藤之助が、夜顔を嗜める。
「だめ? これ。とり……」
「これはつばめ、と言うんだよ。この中で雛が育っているんだ、触っちゃ駄目だ」
「つばめ」
「そう、つばめだよ」
藤之助はにっこりと笑って、少し背の伸びた夜顔の頭を撫でた。夜顔もにっこりと笑い返す。
「ここから大きくなって、空を飛んでいくからね。見守ってあげような」
「うん!」
夜顔は朝日に負けぬきらきらとした笑顔を浮かべて、燕たちが再び、歌いながら空へと飛び上がってくのを見上げていた。
ぴちち、ぴちちと、楽しげに歌いまわる声が、夜顔を笑顔にする。
明るい木漏れ日の中、元気に飛び回る小さな小鳥が、青空の中を自由に羽ばたく。
くるくると、空に溶け込んでいくように。
終
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