【完結】僕の才能は龍使い 〜イジメられていた僕が、才能の意味を理解したら世界最強〜

自転車和尚

文字の大きさ
8 / 45

第八話 ようこそこちら側へ

しおりを挟む
「こ、これがヒーローとヴィランの戦い……」

 目の前で繰り広げられている一瞬の攻防……今までテレビ画面の中でしか見れなかった戦いが目の前で繰り広げられているのを見て僕は正直震えた……怖いんじゃない、そのハイレベルな戦いを目の前で見て興奮で震えるのだ。
 千景さんはすごい……一秒間だけの超加速である雷光ライトニングを効果的に使って相手の攻撃を的確に躱し、逆にヴィランであるファイアスターターは確実に当てるための策を練っており、大技は直撃こそしなかったものの、千景さんの着ていたジャージは焦げてボロボロになっていて、その下に着ていたライトニングレディのヒーロースーツが見えている。
「千裕ッ! 顔出すんじゃねえぞ……隙見て逃げるんだ!」

「……は、はいっ……!」
 だが僕はベンチの後ろに隠れつつ、二人の対峙を見つめており、逃げることができないでいる……。
 ファイアスターター……確か本名は陽炎 紅雄かげろう べにおだったか、地方で発生した人体発火事件、その主犯格として指名手配されているヴィランで、家屋への放火五件、傷害十五件、殺人三件の凶悪犯と紹介されていた。
 四級ヒーローも一名焼死体として発見されており、現場に残されていた残留物などから本名が割り出されていたはずだ。
 必殺の一撃を躱されたファイアースターターは指先に軽く火を灯すと、ゆらゆらと揺らす……。
「うーん……割といい攻撃だったと思うんですがねえ……少年はどう思いますか?」

「え? ぼ、僕?!」
 急にファイアスターターが僕に向かって話しかけてくる……慌てて千景さんをみるが、彼女はファイアスターターをじっと見ており、こちらには何も言ってこない。
 そうだな……確かにファイアスターターの攻撃は凄まじかった、ブラフとしての小爆発、そして千景さんへの挑発、彼女の行動を直線的にしてからの大技……戦い慣れていると言ってもいいだろう。
「……そ、そうですね……ブラフからの狙いがすごい、と思いまし……」

「千裕、お前どっちの味方してんだよ、ブン殴るぞ!」

「ふむ……外野で見ていてもそう思うのですから、わたくしの狙いは正しかった、ということですねえ……でもそれを超えてくる、やはり超級ヒーローは素晴ら……」
 千景さんがあまりに素直に答えた僕に怒鳴りつけるが、ファイアスターターは顎に手を当てて、僕の言葉に納得したかのように何度か頷く。
 次の瞬間、一〇秒経過したのか千景さんが一瞬の間を置いてファイアスターターの眼前へと出現する……が、大振りの拳が直撃したかに見えたが、まるで幻のようにファイアスターターの体をすり抜ける。
「……何ッ?」

「炎ってね、揺らぐんですよ……動くなよ? 超級……可愛い少年の顔がまる焦げになるぞ」
 その場にいたはずのファイアスターターの声が僕の隣から聞こえる……僕はゆっくりと隣を見上げると……そこにファイアスターターの手のひらが僕の視界に映る。
 今のは……対峙している間に炎で幻覚を見せていた……? 指先に火を灯してまるで見せびらかすように揺らしたあの仕草、それが暗示になっていたのか。
「千裕……ッ! てめえ、外野巻き込むとか汚ねえぞ!」

「いやいや……わたくしヴィランですし……褒め言葉じゃないですか。もしかしてこの子、ライトニングレディのヒモか何かですかねえ?」
 こいつ……単なる殺人犯ではないな……戦闘能力も、機転もちゃんと効く、今までヴィランというのは単なる猟奇殺人者や、快楽殺人者の類いとしてテレビでは紹介されていた。
 優位に立っているはずのファイアスターターの頬に一筋……汗が流れるのに気がつき、僕はそれまでの常識が崩れ落ちるのを感じる……誰もが言ってたヴィランなんて怪物のようなもの、怪物と変わらない……全然違うじゃないか! ファイアスターターも、千景さんの圧力に恐怖を感じて、生きるために必死になっているのだ。
「やめろッ! そいつにケガ一つでも負わせてみろ、肉片にしてやるぞこのクソがっ!」

「いやいや……わたくしがちゃんと逃げるまでこの子は殺しませんし、傷一つつけませんってば……その後は、ねえ」
 ファイアスターターの手がゆっくり伸びる……まずい……僕は咄嗟に走り出そうとする……ヴィランの歪んだ笑顔と興奮したかのような舌なめずり、そして仮面の奥に見える目に光る狂気。
 千景さんが何かを叫んで走り出す……怖い、怖い、怖い……逃げなきゃ! 逃げなきゃ! だけど思うように足が動かない、一歩踏み出そうとする時間が永遠に感じられる。
 逃げ出そうとする僕に向かってファイアスターターの手のひらが向けられる……チリッ……と僕の肌に小さな熱を感じる……才能タレントを使おうとしているファイアスターターの声が聞こえ、僕は息を呑む。
「少年は知ってますか? 人間って……燃える時いい匂いがするんですよ」

「千裕ッ! やめろおおおおっ!」
 千景さんが叫ぶ……その顔には恐怖と焦りが……だめだ、ライトニングレディは豪快に笑うヒーローじゃないか! 僕のせいで、僕のせいでそんな顔をさせたくないッ!
 その時、僕の中で何かが動く……まるでそれは全身を駆け巡る、濁流のような……いや力強い何かが走り抜けたような気がした。
 それまで使っていなかった筋肉に、腕に、足にそして拳にも強い力が満ちていく……そしてそれに驚く間も無く心の奥底で、誰かの声が強く響く……。

 ——跳べ。

 その声のまま、僕は一気に地面を蹴って大きく跳躍する……それと同時に僕のいた空間に炎が炸裂する。
 だが僕の体はまるでそれまでのことが嘘だったかのように、二人から離れた場所に出現する……これは……これはライトニングレディの才能タレントみたいな超加速?!
 ファイアスターターが僕を仕留め損なったことに気がつき、驚愕の叫びを上げる。
「な、なんですと? この少年……ライトニングレディと同じ雷光ライトニングの所持者だとでもいうのですか?!」

 ——倒せ。

 深く息を吸い、そして深く吐く……全身に駆け巡る濁流のような力、僕はその声に導かれるままファイアスターターに向かって突進する……さっきまで習っていた戦闘術、その基本となる正拳突き……龍爪ドラゴンクロー
 一番最初に教えてもらったこの技……というには馬鹿正直なパンチだけど、千景さんはニカッと笑って話していた。

『まっすぐ、まっすぐ千裕の体重を乗せて撃ち抜くんだ、案外こういうまっすぐな拳って当たるとメチャ痛えぞ、でも大振りすんなよ? それじゃ単なるテレフォンパンチだからな』

 千景さんの声が脳裏に蘇る……そうだ、僕は勇気を、強くなるって決めた。
 だから、僕が原因で千景さんに迷惑をかけちゃいけない、僕自身の力で、僕自身の意思で勇武に転入して……千景さんみたいなヒーローになるって決めたんだ。
 弱かった自分から絶対に抜け出す……だから、強くなるんだ……誰よりも強く!
「おおおおおっ!」

「再使用のインターバルがない?! バカなッ……スピード系じゃないのか?!」
 それまで離れた場所にいた僕がファイアスターターの眼前に出現したことで、動揺したのかヴィランは驚きながらも咄嗟に防御姿勢をとる。
 少年の非力な拳ではそう簡単に貫けまい、という自信と自負、そして経験からスピード系の才能タレントはパワーにおいては一歩譲ることを知っているからだ。
 お構いなしに僕は拳を振り抜いていく……腕にぶち当たった拳がファイアスターターのクロスさせた腕をパワーで突き破り、ヴィランの顔面へと叩き込まれる。
 そのまま僕は拳を振り抜き、ファイアスターターはその勢いのまま地面へと叩きつけられる……全力で乗せた拳はコンクリートの地面がひしゃげ、軽く崩壊するレベルの超パワーを発揮する。

「ハアッ! ハァアッ……」
 呼吸が乱れると、途端に僕の体を駆け巡る濁流のようなパワーがかき消えていく……な、なんだ? 全身に強い疲労感と、その場に立っていられなくなるくらいの虚脱感を感じる。
 体を支えきれなくなって倒れそうになった僕の体を千景さんが慌てて受け止める……ああ、千景さん……よかった、僕はちゃんと足手纏いにはならなかったのかもしれない。
 そのまま意識が暗闇の中に落ち込んでいく中、僕の心にふと声が聞こえた気がした。

 ——扉は開いた……龍の末裔よ、ようこそこちら側へ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...