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第22話 殺された?
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一夫はしずかとメインダイニンに戻り、葬儀会社の社員と式次第の最終確認を行った。
会葬令状の文面は、一夫が伝えた三千代の人となりや、趣味、家族の思い出などをもとに、ライターがオリジナルの文章を作成したものだ。
正子はそれを読んで、「ちょっと賛美が過ぎるわね」と嫌味を言っていた。
三千代の交友関係は狭く、一夫たちも生前聞いていなかったため、親族とその取引先しか告別式には参列しない。
れでも念の為、会葬礼状を二百セット用意した。四十九日法要が終わるまでは、訃報を聞いた三千代の知人が訪れるかもしれないからだ。
その数を聞いて、またしても正子がぼやいた。
「お父様たちの告別式では、会葬礼状を千セット準備して、ほぼお渡しして残らなかったのに、高木家の関係者も少なくなったものね」
近くにいた道長が珍しく口を挟んだ。
「最近は家族葬が主流だからね。うちの会社でも、昔は人事担当が参列していたらしいけど、今じゃ滅多に聞かないね」
「そういうものかしら」
「うん。だから、これでも相当多い部類に入ると思うよ」
それを聞いて正子は満更でもない様子だ。
「まあ、そうなの。やっぱりうちは他所様とは違うのね」
道長も社会人経験を積んで、人あしらいが上手くなったようだ。
十三時からの告別式が無事に終わり、火葬場へ移動しようとしたとき、一夫は声をかけられた。
「警視庁の堤です。この度はご愁傷様です」
名前を聞いて思い出した。昨日、通報した際に駆けつけてきた刑事だった。
さすがに警察は古い組織で、律儀に参列するものなのかと一夫は感心し、直後に、いや、この刑事だけが特別なのかもしれないと思い直した。
一夫はぽろっと、午前中に聞けなかったことを口にした。
「刑事さん、ニュースでは殺人事件とみて捜査をしていると言っていましたが、三千代は殺されたんですか?」
堤は少しだけ迷ったが、正直に応えた。
「先日も皆さんにお聞きしましたが、ナイフの鞘は発見されませんでした。何者かが持ち去ったものと考えられます。また、ナイフ自体に指紋が残っていませんでした。自殺であれば三千代さんの指紋が残っているはずですので、犯人が拭き取ったと推察しています」
何事かと耳を澄ませていた正子や道長までもが驚いている。一夫もさすがに動揺してしまった。家の中で家族が殺されたと言われたのだ。
「私たちはこちらで失礼いたします。またお伺いすることがあるかもしれませんが、ご協力よろしくお願いします」
堤とその部下らしい男が、二人揃って頭を下げて帰って行った。
「うんまあ! 何ですって! 殺人犯があの家にいたって言うの! 信じられない。そんな、そんな――」
正子は屋敷が凌辱されたような慌てぶりだ。今にも泡を吹いて倒れそうになっている。
「叔母さん、落ち着いて」
正子の介抱は道長に任せることにして、一夫はしずかの腕をとって、迎えに来ているはずのタクシーまで急いだ。
火葬場に行くまでの間、正子の癇癪に付き合いたくなかった。同じ車にならないようにと足を早めた。
全てを滞りなく終えて帰宅すると、あっという間に日常が戻った。
メインダイニングに一夫としずかの二人だけがいる生活。二階の三千代の部屋を覗いても、彼女がいないだけなのだ。
普段から二階の物音はあまり聞こえなかったので、何も変わっていないのではないかとすら思う。
だがそう思うと三千代に申し訳がなく、一夫は心の中で三千代に詫びた。
会葬令状の文面は、一夫が伝えた三千代の人となりや、趣味、家族の思い出などをもとに、ライターがオリジナルの文章を作成したものだ。
正子はそれを読んで、「ちょっと賛美が過ぎるわね」と嫌味を言っていた。
三千代の交友関係は狭く、一夫たちも生前聞いていなかったため、親族とその取引先しか告別式には参列しない。
れでも念の為、会葬礼状を二百セット用意した。四十九日法要が終わるまでは、訃報を聞いた三千代の知人が訪れるかもしれないからだ。
その数を聞いて、またしても正子がぼやいた。
「お父様たちの告別式では、会葬礼状を千セット準備して、ほぼお渡しして残らなかったのに、高木家の関係者も少なくなったものね」
近くにいた道長が珍しく口を挟んだ。
「最近は家族葬が主流だからね。うちの会社でも、昔は人事担当が参列していたらしいけど、今じゃ滅多に聞かないね」
「そういうものかしら」
「うん。だから、これでも相当多い部類に入ると思うよ」
それを聞いて正子は満更でもない様子だ。
「まあ、そうなの。やっぱりうちは他所様とは違うのね」
道長も社会人経験を積んで、人あしらいが上手くなったようだ。
十三時からの告別式が無事に終わり、火葬場へ移動しようとしたとき、一夫は声をかけられた。
「警視庁の堤です。この度はご愁傷様です」
名前を聞いて思い出した。昨日、通報した際に駆けつけてきた刑事だった。
さすがに警察は古い組織で、律儀に参列するものなのかと一夫は感心し、直後に、いや、この刑事だけが特別なのかもしれないと思い直した。
一夫はぽろっと、午前中に聞けなかったことを口にした。
「刑事さん、ニュースでは殺人事件とみて捜査をしていると言っていましたが、三千代は殺されたんですか?」
堤は少しだけ迷ったが、正直に応えた。
「先日も皆さんにお聞きしましたが、ナイフの鞘は発見されませんでした。何者かが持ち去ったものと考えられます。また、ナイフ自体に指紋が残っていませんでした。自殺であれば三千代さんの指紋が残っているはずですので、犯人が拭き取ったと推察しています」
何事かと耳を澄ませていた正子や道長までもが驚いている。一夫もさすがに動揺してしまった。家の中で家族が殺されたと言われたのだ。
「私たちはこちらで失礼いたします。またお伺いすることがあるかもしれませんが、ご協力よろしくお願いします」
堤とその部下らしい男が、二人揃って頭を下げて帰って行った。
「うんまあ! 何ですって! 殺人犯があの家にいたって言うの! 信じられない。そんな、そんな――」
正子は屋敷が凌辱されたような慌てぶりだ。今にも泡を吹いて倒れそうになっている。
「叔母さん、落ち着いて」
正子の介抱は道長に任せることにして、一夫はしずかの腕をとって、迎えに来ているはずのタクシーまで急いだ。
火葬場に行くまでの間、正子の癇癪に付き合いたくなかった。同じ車にならないようにと足を早めた。
全てを滞りなく終えて帰宅すると、あっという間に日常が戻った。
メインダイニングに一夫としずかの二人だけがいる生活。二階の三千代の部屋を覗いても、彼女がいないだけなのだ。
普段から二階の物音はあまり聞こえなかったので、何も変わっていないのではないかとすら思う。
だがそう思うと三千代に申し訳がなく、一夫は心の中で三千代に詫びた。
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