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第三十五話

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 クライブたちはここに来たのと同じルートを通って元の場所へと戻って行く。
 クライブ、ガルム、プルルの三人は岩の隙間から川の近くに出ることができたが、契約していない魔物たちが興味をもって後に続こうとしても、同じ森の中に出るだけだった。

「なんか、俺たちのあとをついて来た魔物がいたような気がするけど、やっぱりここを通過して入ったものしか元の場所に戻れないみたいだな」
 すぐ後ろにいた魔物に気づいていたクライブだったが、あえてどんな結果になるかを見るため放置していた。

 その結果が、誰もついてこられていないというものであった。

「なんにせよ、黒竜とつながりを持てたのはよかった。いつか、契約できる日を楽しみにしておこう。それより、次の依頼は……」
 クライブが今回受けた依頼は二つ、一つ目の魔石集めは完了している。

 そこで次の依頼に移るが今度は「氷鳥の羽の採取」となる。
 氷鳥の情報も受付嬢のユミナから聞いている。
 その場所は、今いる川から街を挟んで反対側にある洞窟ということだった。

「反対側に行くなら、一旦街に戻って魔石集めの依頼報告をしておくか」
 クライブが言うと、ガルムとプルルは頷いて街に戻る準備に入っている。

「ガウ!」
 出発準備は完了しているから、背中に乗ってくれとガルムが声をかけてくる。
 来た時と同じように、ガルムに乗って移動することであっという間に街に到着することとなった。

 そのまま冒険者ギルドまで駆け抜けようとした時はさすがに街の入り口で止められてしまったが、冒険者ギルドカードを提示したことと、別の衛兵がクライブのことを覚えていたため、おとがめなしで中に入ることができた。

 ただし、次は絶対にやめて下さい。という注意だけはしっかりともらっていた。

 そのことを反省しつつ、冒険者ギルドに戻ってくると受付にユミナがいるのが確認できたため、クライブは彼女の受付へと向かうことにする。

「あっ、おかえりなさい……でいいんですかね? 多分依頼に出かけて戻ってきたのだと予想したんですけど、それにしては早いような気も」
 ちょうど顔を上げたユミナはクライブたちを見つけると驚いた表情になる。

 今の時間は昼を過ぎたあたりであり、朝出発して今戻ってくるとなると短時間で依頼を終えて来たことになる。

「もしかして、何か確認漏れでもありましたかね?」
 となると、依頼達成の有無ではなく、何か確認事項があるのだろうという結論に至るのは当然の流れである。

「あー、いえ確認漏れじゃなくて、川底の魔石集めのほうの報告をしようと思って来たんです。洞窟はさすがに反対側にあるので、まだこれからなんですけど……」
 一つしか報告できなくて申し訳ないという雰囲気でクライブは苦笑している。

「えっ!? あっ! す、すみません。それで、集め終わったんですか? あそこの川って意外と流れが早いので、なかなか集められないし、どれが魔石なのかの判断がすごく難しいはずなんですけど……」
 ユミナは思わず大きな声をだしてしまうが、そのことに気づいて謝罪をするとやや声をひそめながらクライブに質問を投げかけた。

「え、えぇ、一応ですけど、見てもらえますか?」
 この時点でプルルにはカバンの中に入ってもらい、あくまでカバンから石を取り出したように見せる。

「これと、これと、これと……」
「はい、はい、はい……っていつまで出てくるんですか!」
 最初の数個はユミナもしっかり確認して返事をしていたが、魔石を取り出すクライブの手が止まらないことに思わずツッコミを入れてしまう。

「えっ? まだまだあるんですけど……もしかして、こんなに要らなかったですか?」
 クライブは依頼の用紙に書いてあった内容を思い出してみる。
 彼の記憶が確かならば、そこには五個以上と記されていた。

 そして、クライブがカウンターの上に並べた石の数は十を既に通り過ぎていた。
 それでも止まる様子はみられなかったためユミナが慌てて止めることとなった。

「数に上限は設けていませんでしたけど、入手の手間を考えた場合多くても十個程度が相場なんです。それ以上を集めるのは大変ですから……それなのに、クライブさんはその数を軽くこえてきて、しかもどれもこれもちゃんと魔石として認められるものです」
 判断がつかない場合は、なんとなくで数多くの石を持ってくる場合がある。
 しかし、クライブの持ってきた魔石はただの石は一つもなく、全て錬成度の高いものだった。

「それはよかったです。……で、どうしましょうか?」
「どう、とは……?」
 クライブの質問にユミナが質問で返す。

「いや、ここに出した以外にもまだまだ魔石はあるんですけど、これで止めておいたほうがいいですか? それとももっとたくさん出したほうがいいですか?」
 今、カウンターの上に並べられているのは極一部でありまだまだ魔石は大量に持っている――それを伝えるために、クライブは軽く自分のカバンを叩く。

 中からプルルの声が漏れ出ないように、優しく、軽くたたく。

「な、なるほど。ど、どうしましょうか……ちなみにどれくらいありますか?」
「えっと、ひゃく……」
 クライブがそこまでいったところでユミナが手を前に出して、その続きを遮る。

「わかりました。ちょっとこちらへいらして下さい」
「は、はい」
 ユミナがどこかへと案内しようとしているため、クライブはそのまま彼女を後をついていくことにする。
 冒険者ギルドの正面入り口から出たと思ったら、彼女はそのまま裏手へと向かっていく。

 裏手には大きな倉庫があり、そこでギルド職員が作業をしている。
 納品された素材の管理、チェック、品出しなどが行われている。

「ここなら、大量の納品物でも対応できます。こちらのテーブルの上に魔石をお願いします。あっ、でも最大5個納品していただければ依頼は完了となります。それ以上は、ギルドでの買い取りとなりますがもちろんご自身でお持ちいただいても構いません」
「あー、それじゃあ少し残してあとは全部買い取ってもらえると助かります」
 説明を受けたクライブだったが、別の買い取り手にあてがあるわけでもなく、特別貴重なものでもないと判断したためここでの買取を依頼することにした。

「承知しました。それでは、買取対象となる魔石をお出し下さい」
「了解です」
 クライブはカバンに手を突っ込むと次々に魔石を取り出していく。
 その数、150個。残りの数個は何かに仕えるかもしれないという判断で手元に残しておくことにした。

「こ、こんなに……」
 先ほども百以上あると言おうとしていたのは耳に入っていたが、改めてこれだけの量の魔石を見せられるとユミナも笑顔が引きつっていた。
 それは、近くにいた別の職員たちも同様であり、魔石の載ったテーブルを口を開けてみていた。

「そ、それでは確認をしていきますので、あちらに座ってお待ち下さい。ちょ、ちょっとみなさん、手伝って下さい」
 ユミナはあまりに数が多いため、他の職員に助けを求めて数人がかりでのチェックが始まった。

 その様子をクライブは椅子に座ってプルルを撫でて、その感触を楽しみながら待っていた。
 ちなみに、ガルムはクライブの足元に寝そべって尻尾をクライブの足に絡みつかせていた。




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