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第三十六話

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 結論として、クライブが持ってきた石は全て魔石として確認がとれた。

「す、すごいですにゃ。これだけあったら、いくつかは普通の石もあるかもと思っていたんですけど……」
 結果を報告するユミナは驚いており、手伝ってくれた職員たちも同意だと頷いていた。

「あー、実のところそれを集められたのは俺の実力じゃないんですよ。仲間の活躍ってやつです」
 クライブはそう言うと、ガルムとプルルを順番に撫でていく。
 短時間で行って帰ってこられたのはガルムのおかげであり、魔石を手に入れられたのはプルルをはじめとするスライムたちのおかげであることをクライブはちゃんと認識していた。

 主人であるクライブのために行動するのは当然ではあったが、それでも感謝の気持ちを持つことで彼らとのつながりを大切に思っていた。

「なるほど、魔物と共に行動していることのメリットですにゃ。色々と問題があるという話は聞いていますが、それでもクライブさんにとっては良い点が多いみたいですにゃ」
 微笑ましい様子のクライブたちを見て、メリットデメリット以上に楽しそうな雰囲気をとても良いものだとユミナは感じていた。

「えぇ、俺には過ぎた仲間たちですよ。こいつらがいるおかげで冒険者としてやっていけてますからね」
 ユミナの言葉を受け止め、そのまま素直な思いを返したクライブを見て職員たちは感動すら抱いていた。

「おっと、そうだそうだ。次の依頼もあるので、買い取りと依頼完了の手続きお願いします」
 魔石の確認に思ったより時間がかかってしまったことを思い出したクライブは、カードを取り出してユミナへと手続きの依頼をする。

「はっ! わ、忘れていましたにゃ。ここにも手続きの魔道具があるのですぐにやってしまいますにゃ。お金のほうは……」
 視線を送ると、別の職員が袋に入った報酬を運んでくるところであった。

「さて、それでは先に依頼完了手続きを行いますにゃ」
 ユミナは慣れた手つきでカードを読み込んで、納品完了、依頼達成をカードに登録していく。

「はい、ありがとうございますにゃ。カードの返却と、こちらが報酬になりますにゃ!」
 テーブルの上にドサリと置かれた袋は、クライブが想定していた以上の重量があるように見える。

「えっと、これ全部ですか?」
 そう言いながらもクライブは中身を確認していく。金貨が数枚と銀貨が入っている。

「はいですにゃ。今回納品された魔石の中には、内包される魔力量が高いものが多かったのですにゃ。なので、買い取り金額も相応のものとなりましたのにゃ」
「な、なるほど。それじゃ、ありがたく頂戴します」
 クライブは少々戸惑いながらも、正規の報酬であるというのであればもらっておこうと金の入った袋を受け取った。

 職員に気づかれないように素早くカバンの中に移動するプルルは、金の入った袋を中で受け取っていた。

「それでは色々とありがとうございました。俺たちは次の依頼に向かいますね」
 まだ日が高いため、これなら東の洞窟に行っても十分時間はあるとクライブは判断していた。

「えっ? 休まれないのですか? 一つ依頼をこなしたら休憩期間をとるのが普通かと……」
 それは冒険者たちの常識でもあった。疲労のたまった身体で依頼を連続して行うことで、生存率を下げてしまうこととなる。
 このことはもちろんクライブも知っている。

「あー、まあ石を集めただけですし、まだまだ元気です!」
 強がりを言うクライブのことをユミナたちは心配そうな眼差しで見ていた。

 しかし、実のところ多くの魔物たちと契約しているクライブの身体は以前よりも体力も耐久力も疲労解消力も高くなっている。
 ドラゴンの治療で疲れたクライブだったが、ここに戻ってくるまでにそれも回復していた。

「まあ、無理だと思ったら戻ってくるので安心して下さい」
 心配をかけないように、笑顔で元気よく冒険者ギルドをあとにするクライブ。
 街の中は普通に歩いていき、外に出たところでガルムに乗って移動を開始する。

 氷鳥がいるという洞窟の場所は、おおよそではあるが把握している。
 まず向かうのは、東に広がる岩場地帯。

「にしても、ガルムは速いなあ」
 クライブは背中に乗りながらそんなことを口にする。

「ガ、ガウガルー(あ、ありがとう)」
 褒められたことで頬を赤くしたガルムは、照れを隠すように速度を上げた。

「おおう、速い! ははっ、ガルム速いぞ!」
 風を切って進むガルム、その風を頬に感じるクライブ。双方ともに笑顔になっていた。

 しばらく進むと、平原だったエリアが様子を変えてゴロゴロとした岩が多くなってくる。

「これが話に聞いた岩場か……ガルム、ちょっと止まってくれ」
 入り口と思しきあたりに到着したところで、クライブはユミナにもらった簡易地図を開いて確認する。

「ここが今いる場所で、目的の洞窟は……あっちだ」
 目印となる大きな岩と木、それを確認してからクライブは洞窟がある方向を指さした。

「ガウ!」
 了解したと返事をすると、ガルムがそちらに向かって歩き始める。
 走らないのは、ここまでとどこか雰囲気が違うことを感じ取っているがためである。

 岩場にたどり着くまでは見通しの良い平原の整備された道を進んできた。魔物気配もなく、空高く鳥が飛んでいるのが見える程度だった。

 しかし、今は他の魔物の気配を感じる。
 それは岩陰かもしれないし、空から狙っているかもしれないし、遠くからこちらを確認しているかもしれない。
 さすがに詳細な場所まで特定することができないガルムは慎重に進むことを選択していた。

 そこからは魔物の気配を感じることはあったものの実際に姿を現すものはおらず、一度も戦闘することなく洞窟に到着する。

「目的地に到着……はいいんだけど、寒くないか?」
 クライブが質問するが、ガルムは自前の毛皮があるため首を横にふる。プルルも寒さを感じないらしく、身体をゆっくりと横に震わせていた。
 氷鳥が生息する洞窟であるため、気温は外と比べて一段と低く、クライブは身体をぶるりと震わせている。

「そ、そうか。それは羨ましいな……そうだ! 熱を発するスライムっていなかったっけ? 俺が契約した中にいるといいんだけど、しかも温度を調節できると最高なんだけど……」
 その問いかけにプルルの動きが止まる。おそらく、集合しているスライムに確認をとっているものと思われた。

 しばらくすると、二体のスライムがプルルから分裂してクライブのもとへと近づいていく。

「「きゅー」」
 シンプルにそれだけ声をあげると、クライブの肩のあたりと手のあたりに彼らは移動する。
 すると、ジワジワと身体が温かくなっていく。

「おぉ! これはすごい!」
 熱くない程度に調節してくれているため、クライブの身体は程よく温まっていく。



************************
名前:
主人:クライブ
種族:ヒートスライム
特徴:戦闘能力はほとんどないが、熱を発することができる。
    常温から熱く感じる程度まで調節可能
************************



 思わずクライブが確認すると、どちらのスライムも同じ種族でありこの場においてクライブが最も求めているスライム。

「スライム……すげえな」
 実はそんなスライムがいたらいいなと試しに言ってみただけであり、本当にいるとは思っておらずスライムの無限の可能性に感嘆の声をあげたクライブだった。



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