異世界版ヒーロー【魔石で変身 イセカイザー】

鹿

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「キュウ。雨止まないなぁ」

『キュ~』

イセカイザーピンクに変身しているアスカは、洞窟の入り口に腰掛けて、雨が降り続ける空を眺めていた。
すると、ピンクの膝で丸まっているキュウの腹の虫が鳴った。

「そろそろ腹が減ってきたな。ここで待ってても拉致があかないし、前がダメなら後ろに行ってみるか?でもなぁ、奥には苔かキノコくらいしか無さそうだしなぁ。ハンバーガー食いてぇ」

そう言って洞穴の奥を振り向くと、そこには、ちょこんとハンバーガーがあった。

「何ぃ~~!!ハンバーガーじゃぁねえか!どうしてこんな所に落ちてんだ?」

(ここは異世界だろ?何でこんな物が?)

「はは~ん。これはあれだな。女神が俺の願いを聞いてくれたんだな?キュウも腹減ってんだろ?食うか?」

『キュッキュッ!』

「しかし、変身したままじゃ食えねぇしなぁ。変身はどうやって解除するんだ?」

ピンクは両手でヘルメットを外す仕草をしたが、外れなかった。

『説明しよう!
変身を解除するには、左右の腕に嵌めているブレスレットを重ね合わせ、「変身」と発声するのだ』

「そんなもん分かるか!!ナレーション無しじゃぁ一生分からなかったぜ!しかもそれは、イセカイザーに変身する時に試してたポーズじゃぁねぇか!それじゃぁ何か?解除する時も変身って言うのか!?ったく。どっちが本当の俺なんだよ!取り敢えずやるけども」

ピンクは立ち上がり、胸の前でブレスレットを重ねるように腕をクロスした。

(待てよ。イセカイザーに変身するにはどうすれば良いんだ?
まさかさっきの魔石ってのが無いと変身出来ないんじゃぁないか?だったら、解除するのは魔石を手に入れてからの方がいいな?)

「イセカイザーに変身するにはどうすればいいんだ?」

しかしナレーションは説明を始めなかった。

「おい!どうした?教えてくれよ!」

(どのタイミングで説明してくれるんだよ!ったく)

「そうだ!さっき頭を両手で引っ張ったな」

ピンクは、再度ヘルメットを外す仕草を行った。

「イテテ、これでいいのか?イセカイザーに変身するにはどうすればいいんだ?」

『説明しよう!』

「やっぱり!合ってた!」

『変身するには魔石を消費して、その力を取り入れる事により、イセカイザーへと変身することが出来る。即ち、胸の前に魔石を添えて「変身」と発声するのだ』

「変身地味!解除に比べて変身の派手さが弱いな!でもまぁ聞いててよかったぜ。解除するのは魔石を手に入れてからだな」

『キュッ!』

「どうしたキュウ?ハンバーガーを睨んで。ああ腹減ってるんだな?悪りぃな、食っていいぜ」

ピンクがハンバーガーに近付いたその時、ハンバーガーが飛び掛かった。

「うおっ!」

ピンクは反射的に仰け反り、間一髪かわす事に成功。ハンバーガーはそのまま後方に落ちた。

「うおぃ!このハンバーガー攻撃してきたぞ!」

ハンバーガーはピンクに向き直り、小刻みに震えている。

「下がれキュウ!何か変だ!アナライズ!」

ピンクは、目の前に現れた赤色の『+』をハンバーガーに合わせた。

ーーーーーーーーーーーー
名前 : ー (魅了)
種族 : ミミックスライム
分類 : 妖精
属性 : 闇属性
年齢 : 3
性別 : ー
Lv : 3
HP : 39/39
MP : 39/39
攻撃力:33
防御力:33
素早さ:33
知 能:33
器用さ:33
幸運値:33
装備 : なし
スキル : 吸収Lv1、闇魔法初級Lv1、読声術、擬態 (ハンバーガー)
ーーーーーーーーーーーー

「はぁ~!?ハンバーガーじゃぁないのか?ミミックスライムって、こいつモンスターかよ!しかも、魅了済みだし…」

『キュッ』

「どうするキュウ。ハンバーガーのモンスターってどうなんだろうな?食えるのか?」

するとハンバーガーは、グニュグニュと形を変えて、淡いピンクの丸いゼリー状になった。
その中にはクリクリとした可愛らしい目玉が浮かんでおり、黒目の中には、やはりハートが見える。そしてゼリー状の中心には、丸くて濃い桃色の魔石が浮かんでいた。

「おっ!綺麗な色だな!それがお前の元々の状態か?」

『ミミ~ッ!』

「意外!何だその声?スライムってそんな声だったっけ?ん~可愛いから許すけども」

『キュッキュッ!!』

キュウは、ピンクの左肩に乗り抗議している。

「勿論キュウも可愛いさぁ~」

キュウは肩でクルクル回り、ピンクの頭の上にジャンプした。

ミミックスライムは、ピョンピョンその場でジャンプして、ハートが浮かび上がった目と魔石を左右に動かしている。

そして二つの目が瞬きをしたかと思うと、魔石が形を変えて三日月形に変形した。

「えっ!魔石の形を変える事が出来るのか?」

再びハートを瞬かせて、三日月型の魔石を、まるで口のように縦や横に伸ばして見せた。

『ミミ~!』

「可愛いじゃないか!そうか、やっぱピンクで誘惑すると目の奥がハートになるんだな」

『ミ~!』

ピンクは両手で自分の頭を引っ張った。

「ところで、いつ誘惑したんだ?」

『説明しよう!
イセカイザーピンクの誘惑は常に発動している!射程距離は半径100メートルであり、そこに入った者は有無を言わさず魅了されるのである。ヒーローポイントの消費は50。相手を魅了した瞬間にヒーローポイントが減るのだ』

「おいおい!ピンクの能力えげつないぞ!無敵だろ!…でもおかしくないか?誘惑のHPの消費は50なのに150減ってたなぁ。キュウとスライム…まさか!もう一体この辺りにいるのか?」

アスカは周囲を見回したが、他にそれらしい生物はいなかった。

「おかしいな?他に何か…まさか、デーモンスパイダー?脚を縮めて丸くなったのは防御じゃなくて、服従だったのか。愛情表現みたいなものだったと考えると…間違いなさそうだ」

(気付かなくて、何かごめん)

「蜘蛛が仲間になるなんて…正夢か?いやいや、仲間になってないだろ!!微妙だけど。まさかこの先、カマキリまで出てくるんじゃぁないだろうな。絶対仲間にはしないからな!」

『キュ?』

「キュウは別だよ!血と泥水の汚れが落ちたら、モフモフさせてくれよ」

『キュ~』

「キュウを助けることが出来て良かった。変身のお陰だな…待てよ…蜘蛛が正夢だとしたら、俺はゴキブリになるかもしれないのか?」

洞穴の奥で、何かがカサカサと動く音がした。

「絶対ゴキブリにはならないからな!!」

誰もいない洞窟の奥に向かって叫んだ!
ピンクの声は数回反響して聞こえなくなった。

「ふぅ~。でも、誘惑が常に発動ってことは、町なんかで変身したら大変な事になるぜ…い~や、ありだな!黒の天使みたいな可愛子ちゃん達を集めて変身したら、たちまちハーレムの出来上がりだ!」

ピンクは、美女に囲まれている自分を想像した。

「グフッ…はっ!ダメだ!この笑い方は、あの忌々しい小太りの『おっ君』と一緒だ。よし!今ここで黒の天使に誓おう。人前ではイセカイザーピンクにはなりません!残念だけどっ!」

『ミー!』

「おっと、悪りぃ。ピンクワールドが発動してたな。ん?」

スライムは仲間になりたそうにこちらを見ている。

「お前も一緒に行くか?」

『ミミ~!』

「じゃあ早速名前を付けるぜ?お前は間違いなくミミだ!よろしくな」

ミミはジャンプして右肩にプルンと着地した。

『ミミ~!』

「そうだ!ナレーションが喋るタイミングをハッキリさせといた方が良いな!」

ピンクは両手で頭を引っ張った。

「痛っ、ナレーションは頭を引っ張って質問すれば答えてくれるのか?」

『説明しよう!
左耳に装備しているイヤーカフを触れつつ喋れば、質問が成立するのである。変身時も同様、マスクの上から触れつつ喋れば、質問が成立するのである』

「恥ずかしいわ!最初に聞いとけば良かった!!首が痛いんですけど!」

イヤーカフに触れていない為、答えは返ってこなかった。

「くそっ!」

ピンクはマスクの左耳付近に触れた。

「もっと早く教えてくれよ!」

『説明しよう!
ペラペラペラ』

「早くて聞き取れねぇし!その早くじゃぁねぇよ!人をおちょくる天才だな!お前のせいで首を引っ張り過ぎて痛ぇし!どうしてくれるんだ!」

イヤーカフに触れていない為、答えは返ってこなかった。

「あ~もう!」

ピンクはマスクの左耳付近に触れた。

「首が痛ぇぞ!」

『説明しよう!
引っ張り過ぎである』

「カッチ~ン。頭に来た!外してやる!」

ピンクはイヤーカフを外そうとして耳を触るも、マスクが邪魔して触れなかった。しかし、考え直して外すのをやめた。

「ふぅ~。俺の質問が悪かったな。大人になれ俺!この先ナレーションの説明が必要になるだろうし。ムカつくけど我慢!」

気を取り直し、同時に転移された他の二人の現状を聞く為、左耳付近のマスクに触れた。

「他の二人は元気か?」

『説明しよう!
元気である』

「まあ、そう答えるよな。大体分かってきた。聞いた事にはちゃんと答えてくれるみたいだな」

ピンクは二人の名前を思い出そうとした。

「名前聞いとけばよかった。え~っと、自衛隊と黒の天使は今どこで何をしてるんだ?」

『説明しよう!
自衛隊は、南東にある森でエルフと会話中なのである。黒の天使は、北にある村のベッドで眠っているのである』

「二人とも楽しそうだな!俺は毒蜘蛛と闘ってたっていうのによ~。おい!自衛隊は早速、異世界満喫してるじゃぁねぇか!」

『キュウキュウ』

『ミミ~』

ピンクはキュウとミミを見つめ、ホッコリとした。
そして自分の体を一瞥して頷いた。

(俺も満喫してた)

「よ~し!行き先は決めた。北だ!」

ピンクはマスクの左耳付近に触れた。

「北はどっちだ?」

『説明しよう
イセカイザーピンクが今向いている方角が北である』

「運命!幸先いいぞ。黒の天使、待っててくれよ」



『イセカイザーピンクの、真の能力に驚愕したアスカであった。
ネーミングのセンスは、ふたまず置いておこう!
そして、尊い仲間の死を乗り越えて、目指すは北。
進めアスカ
戦えイセカイザー
次回予告
ピンク』

「ふたまずってなんだよ!しかも、デーモンスパイダーは仲間じゃぁねーし!
毎回毎回、次回予告は、おちょくり過ぎの、悪意あり過ぎだ!もうやめてくれ!」
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