21 / 29
第五話 ギプスと見えない傷 (1/5)
しおりを挟む
「みことー、首は大丈夫ー? お母さん行ってくるからね。ご飯出してあるから早めに食べなさいね」
お母さんの声がする。私は布団の中から眠たい声で答えた。
「んー、大丈夫ー。はーい、いってらっしゃーい」
時計を見れば、いつもなら学校に向かっている時刻だ。
今日学校は臨時休校らしい。
警察が写真を撮ったり、指紋を取ったり、先生達が片付けをしたりするとかで、一般生徒は一日立ち入り禁止になっている。
確かに、窓ガラスも割れてたし、結構派手に散らかってたもんね……。
靴下で校舎に上がっていた千山くんは、割れたガラスの破片で足もちょっとケガしてたみたいだけど、私はセオルに言われて靴を履いてたので大丈夫だった。
「みこちゃん、おはよー?」
「……うさぎちゃん、おはよう」
うさぎちゃんの頭を撫でる。そっか、昨日は一緒に眠ったんだ。
「マイレディ、よく眠れたかな?」
セオルは私のベッドボードの上で、短い足を組んで座っていた。
「うん……まあ、ぼちぼちね」
体を起こすと、ちょっとだけ首が痛かった。
元気に動き出す気にはなれなくて、布団を巻きつけたまま座り込む。
ふわぁと大きなあくびが出た。
眠いのは仕方ない。だって昨日私達が家に帰ってきたのは十一時に近かったから。
あくびで滲んだ涙をこすると、目の周りがヒリヒリしてまだちょっと腫れぼったい。
昨日はいっぱい泣いてしまったから、これも仕方ないか……。
あんなに泣いたのはいつぶりだろうか。
私も千山くんも、昨夜はあれから警察の人に話を色々聞かれて、病院にも行かされたし。
養護の先生も校長先生も教頭先生も担任の先生も学校に来ていた。
職員室はあの爆発があった一帯がベタベタびしょびしょになったらしい。
あ、でも、千山くんが写真はセーフだったって言ってた。
昨日、妹ちゃんのプール写真は職員室にあったらしいけど、私達がコーラ爆弾をほとんど捨てたから、被害は職員室の端の方だけで済んだんだってさ。
爆弾から職員室の大部分を守って、犯人逮捕にも協力したんだし、これはもしかして表彰ものなのでは? なんて、私はちょっと期待したのに、警察の人と教頭先生には、今後二度と危ないことはしないようにってガッツリ叱られてしまった。
私だって、千山くんがあんな無茶しなければ、こんな事絶対しないのに。
でも校長先生からはこっそり、職員室が全部やられてたら大損害だったから、とっても助かりました。とお礼を言われた。
これは結構……ううん、ものすごく、嬉しかったんだよね。
「みこと、まだ眠ければもう少し寝ていてもいいんだよ?」
苦笑するようなぞうさんの声に、私は自分の腕の中を見た。
ぞうさんは、昨夜駆け付けたお母さんがすぐ預かってくれて、私が警察の人たちから解放された時にはケガしたところを全部縫い合わされていた。
ぞうさんが「もう大丈夫だよ」って笑ってくれて、私はホッとしてまた泣いてしまった。
「仕事道具持ったまま来ちゃったけど、役に立ってよかったわ」と笑ったお母さんが、私には神様みたいに思えた。
「ぞうさんは、もう本当にどこも痛くない?」
「もちろん」
ぞうさんが私の腕の中で元気に腕を振り上げてみせる。
その姿に、私はもう一度腕の中のぞうさんを優しく抱きしめた。
私がこうやって今、ちょっと首が痛いくらいで済んでるのは、全部セオルとぞうさんのおかげだ。
ううん、すぐに警察を呼んでくれた咲歩や、ぞうさんを助けてくれたお母さん、それにお母さんをすぐ学校に向かわせてくれたうさぎちゃん。みんなのおかげだ。
千山くんは……まあ、あれからめちゃくちゃ謝ってくれたし、悪気がないのも知ってるし、今回のところは許してあげることにする。
セオルは何やら物騒なことを言ってたけどね。
どっちにしろ今日はお休みだし、明日と明後日は土日だから、学校で会うのは月曜日だ。
私はお医者さんが「念の為に」と付けてくれたギプスに苦戦しながらパジャマを着替えた。
お母さんの声がする。私は布団の中から眠たい声で答えた。
「んー、大丈夫ー。はーい、いってらっしゃーい」
時計を見れば、いつもなら学校に向かっている時刻だ。
今日学校は臨時休校らしい。
警察が写真を撮ったり、指紋を取ったり、先生達が片付けをしたりするとかで、一般生徒は一日立ち入り禁止になっている。
確かに、窓ガラスも割れてたし、結構派手に散らかってたもんね……。
靴下で校舎に上がっていた千山くんは、割れたガラスの破片で足もちょっとケガしてたみたいだけど、私はセオルに言われて靴を履いてたので大丈夫だった。
「みこちゃん、おはよー?」
「……うさぎちゃん、おはよう」
うさぎちゃんの頭を撫でる。そっか、昨日は一緒に眠ったんだ。
「マイレディ、よく眠れたかな?」
セオルは私のベッドボードの上で、短い足を組んで座っていた。
「うん……まあ、ぼちぼちね」
体を起こすと、ちょっとだけ首が痛かった。
元気に動き出す気にはなれなくて、布団を巻きつけたまま座り込む。
ふわぁと大きなあくびが出た。
眠いのは仕方ない。だって昨日私達が家に帰ってきたのは十一時に近かったから。
あくびで滲んだ涙をこすると、目の周りがヒリヒリしてまだちょっと腫れぼったい。
昨日はいっぱい泣いてしまったから、これも仕方ないか……。
あんなに泣いたのはいつぶりだろうか。
私も千山くんも、昨夜はあれから警察の人に話を色々聞かれて、病院にも行かされたし。
養護の先生も校長先生も教頭先生も担任の先生も学校に来ていた。
職員室はあの爆発があった一帯がベタベタびしょびしょになったらしい。
あ、でも、千山くんが写真はセーフだったって言ってた。
昨日、妹ちゃんのプール写真は職員室にあったらしいけど、私達がコーラ爆弾をほとんど捨てたから、被害は職員室の端の方だけで済んだんだってさ。
爆弾から職員室の大部分を守って、犯人逮捕にも協力したんだし、これはもしかして表彰ものなのでは? なんて、私はちょっと期待したのに、警察の人と教頭先生には、今後二度と危ないことはしないようにってガッツリ叱られてしまった。
私だって、千山くんがあんな無茶しなければ、こんな事絶対しないのに。
でも校長先生からはこっそり、職員室が全部やられてたら大損害だったから、とっても助かりました。とお礼を言われた。
これは結構……ううん、ものすごく、嬉しかったんだよね。
「みこと、まだ眠ければもう少し寝ていてもいいんだよ?」
苦笑するようなぞうさんの声に、私は自分の腕の中を見た。
ぞうさんは、昨夜駆け付けたお母さんがすぐ預かってくれて、私が警察の人たちから解放された時にはケガしたところを全部縫い合わされていた。
ぞうさんが「もう大丈夫だよ」って笑ってくれて、私はホッとしてまた泣いてしまった。
「仕事道具持ったまま来ちゃったけど、役に立ってよかったわ」と笑ったお母さんが、私には神様みたいに思えた。
「ぞうさんは、もう本当にどこも痛くない?」
「もちろん」
ぞうさんが私の腕の中で元気に腕を振り上げてみせる。
その姿に、私はもう一度腕の中のぞうさんを優しく抱きしめた。
私がこうやって今、ちょっと首が痛いくらいで済んでるのは、全部セオルとぞうさんのおかげだ。
ううん、すぐに警察を呼んでくれた咲歩や、ぞうさんを助けてくれたお母さん、それにお母さんをすぐ学校に向かわせてくれたうさぎちゃん。みんなのおかげだ。
千山くんは……まあ、あれからめちゃくちゃ謝ってくれたし、悪気がないのも知ってるし、今回のところは許してあげることにする。
セオルは何やら物騒なことを言ってたけどね。
どっちにしろ今日はお休みだし、明日と明後日は土日だから、学校で会うのは月曜日だ。
私はお医者さんが「念の為に」と付けてくれたギプスに苦戦しながらパジャマを着替えた。
1
あなたにおすすめの小説
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜
おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。
とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。
最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。
先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?
推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕!
※じれじれ?
※ヒーローは第2話から登場。
※5万字前後で完結予定。
※1日1話更新。
※noichigoさんに転載。
※ブザービートからはじまる恋
はるのものがたり
柏木みのり
児童書・童話
春樹(はるき)が突然逝ってしまって一ヶ月。いつも自分を守ってくれていた最愛の兄を亡くした中学二年生の春花(はるか)と親友を亡くした中学三年生の俊(しゅん)は、隣の世界から春樹に来た招待状を受け取る。頼り切っていた兄がいなくなり少しずつ変わっていく春花とそれを見守る俊。学校の日常と『お隣』での様々な出来事の中、二人は気持ちを寄せ合い、春樹を失った悲しみを乗り越えようとする。
「9日間」「春の音が聴こえる」「魔法使いたちへ」と関連してくる物語。
(also @ なろう)
アリアさんの幽閉教室
柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。
「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」
招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。
招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。
『恋の以心伝心ゲーム』
私たちならこんなの楽勝!
夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。
アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。
心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……??
『呪いの人形』
この人形、何度捨てても戻ってくる
体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。
人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。
陽菜にずっと付き纏う理由とは――。
『恐怖の鬼ごっこ』
アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。
突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。
仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――?
『招かれざる人』
新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。
アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。
強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。
しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。
ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。
最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる