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第2話 赤いリボン (5/9)
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満腹になったらしいきなこもちがそんな感じのマークを出すのを見て、私は石をしまう。
「あ、これ……」
黄色い石はコロコロと小さかったけれど、よく見れば透き通ってキラキラしていて綺麗だった。
なんか、高いアイテムとかだったりしないのかな……。
「残りもみさみさが持っててくれたらいい。またきなこもちの腹が減ったら食べさせてやってくれ」
「あの、でも……タダでもらうのは……」
悪いというか、申し訳ないというか……。
でもまだ私の所持金は1500レルと書かれていて、チュートリアルが終わった直後のこれは多分……1500円くらいの感じなんじゃないかなと思ったりはするわけだけど……。
「みさみさはアイテムを売ったりしたことはあるか?」
「チュートリアルで説明は聞いたけど、まだ……」
「矢は後何本ある?」
「えっと、15本です」
「結構ギリギリだったんだな」
カタナは『確認不足だった』というような気まずい顔をちょっとだけ見せてから言う。
「弓手は矢に金がかかるからな。まずはアイテムを売って買い物に行こうか」
「う、うんっ」
お買い物かぁ。なんだかワクワクする響き。
「街で別行動できるように、パーティーを組ませてもらってもいいか?」
「うん」
別行動かぁ……。そうだよね。一緒にお買い物って事もないよね。
でも最近はずっと感染症対策でのんびり買い物もできてなかったし、やっぱり楽しみかも。
カタナの作ったパーティーに入れてもらって、カタナに続いて大きな町のあるワールドに入る。
街の真ん中には立派な城壁に囲まれた大きなお城。
DtDの中で一番大きな城下町なんだって、カタナが教えてくれる。
城下町は人で溢れていた。
「じゃあ、まずはアイテム売却だな」
商人には他の職業よりアイテムを高く売ったり、安く買ったりするスキルがあるんだとカタナが言う。
弓手を長く続けるなら、サブキャラとして商人を作っておくと消耗品が安く仕入れられるとアドバイスされた。
サブキャラかぁ……。まだ二日目だから、続けるかどうかも全然わかんないなぁ。
カタナは矢を買えるお店の場所や、武器や防具のお店、それを強化するお店をひとつずつ紹介してくれた。
すれ違いざまに色んな人達がたくさんの会話をしていて、カタナの言葉があっという間に会話ログの中を流れてしまう。
パーティーの仲間とだけ会話する画面があるとカタナに教えてもらってパーティー会話のログに切り替えると、それも一段楽した。
たくさんの人の中を、お互いにだけ聞こえる会話をしながら歩くのは、それだけでなんだかワクワクしてしまう。
商人系の人達が出している個人商店の覗き方も教えてもらった。
「個人商店から買うときは、値段が適正かよく見ないといけない」とのアドバイス付きで。
確かに個人商店に並んでいる商品は、ものすごく高いものから安いものまで様々だった。
こんなの、何がどう適正なのか全然わかんないよ……。
「価格はそのうち覚えていけばいい。今はわからないことや欲しいものがあれば何でも相談して」
と言われてホッとする。
「あ、赤いリボン可愛い……」
個人商店には、様々な装飾品もそれはもう色とりどりに並んでいた。
こんなにたくさん装備品の種類があるんだなぁ……。
「気になる見た目の装備があれば、試着してみたらいい」
カタナに試着の方法を教えてもらってやってみると、赤いリボンが自分の二つに括られた髪にそれぞれ一つずつ結ばれた。
「わぁ、可愛い」
思わずくるりとその場で回ると、カタナはパチパチと拍手するマークを出す。
「うん、似合うな」
うっ……、そんな風に言われると欲しくなっちゃうなぁ。
5000レルかぁ……。
昨日倒した雲兎と雲羊のドロップアイテムを売ったおかげで、私の手元には30000レルほど入ったけれど、カタナの勧める鉄の矢は1本2レルで3000本買えば6000レルになってしまった。
普通の矢は1本1レルだから、一人で戦う時はこっちにしようかな……。
属性のついた矢は1本3レルなんだけど、行き先によってはこっちを使うといいって言われちゃったし、そしたら9000レルだよねぇ……。
1本ずつお金がかかるんだなと思うと、昨日射損じた矢すら、ちょっと勿体なく感じてしまった。
うーん。ゲームの中でもお金の問題はシビアなのね……。
この後ポーションも買いに行く予定だし、10000レルくらいは手元にも残しておきたいし……。私の所持金ではちょっと……ギリギリってところかなぁ。
私が名残惜しい気持ちのままで試着を戻すと、カタナが尋ねる。
「買わないのか?」
「うーん。まだお金に余裕ないから、今度にする」
「……そうだな。弓手は所持金がゼロになるような事態は避けた方がいい。良い判断だ」
褒められて、なんだか照れてしまう。
あ。照れるマークがあったよね。
『てれてれ』と恥ずかしがるマークを私が出すと、カタナは『よしよし』と撫でるようなマークを出してくれた。
本当に撫でられたわけじゃないけど、それでもなんだか、じんわりと胸が温かくなる。
ポーションのお店は、街の入り口からちょっと裏道に入ったところに建っている個人商店を教えられた。
必ず買えるNPCの場所も教えてくれたけど、ここにこの商人がお店を出してる時は、ここで買うのがオススメとのことだ。
性能が良くて安いんだって。
ちょっと表通りからは外れているのに、ちょろちょろと人が通って行く。
次々に他のプレイヤーも買っているのが、減ってゆく在庫の数で分かった。
うーん、ポーションって色々種類あるんだなぁ。
安いのをいっぱい買うのと、高いのを少し買うんだったらどっちがいいのかな……?
悩む私に、カタナはパーティー会話でアドバイスをしながら「ちょっと俺も買い物に行ってくる」と中央通りの方へ行ってしまった。
マップの上に見えるオレンジの点が、多分カタナの場所なんだろうな。
『買えたら、西の……マップ左側の城門前で待ち合わせしよう』
『うん』
待ち合わせ……。待ち合わせかぁ。
なんだか、そういうのも久々で嬉しい。
小学生の頃は、よく友達と待ち合わせてあちこち出かけたのにな。
例の感染症が流行ってからは、学校が終わるとまっすぐ帰ってくるだけで習い事以外出かける事もない。
私はポーションを買い終えて、東西南北に4つある城門のうち西側の門に向かう。
カタナはまだ中央の通路をうろうろしてるみたい。
しばらくして、オレンジの点がこちらへ向かってきた。
「待たせてしまったな、すまない」
「全然、気にしないで」
私が笑って答えれば、カタナもホッとしたように小さく笑った。
こんな会話も久々で妙に嬉しい。
「あ、これ……」
黄色い石はコロコロと小さかったけれど、よく見れば透き通ってキラキラしていて綺麗だった。
なんか、高いアイテムとかだったりしないのかな……。
「残りもみさみさが持っててくれたらいい。またきなこもちの腹が減ったら食べさせてやってくれ」
「あの、でも……タダでもらうのは……」
悪いというか、申し訳ないというか……。
でもまだ私の所持金は1500レルと書かれていて、チュートリアルが終わった直後のこれは多分……1500円くらいの感じなんじゃないかなと思ったりはするわけだけど……。
「みさみさはアイテムを売ったりしたことはあるか?」
「チュートリアルで説明は聞いたけど、まだ……」
「矢は後何本ある?」
「えっと、15本です」
「結構ギリギリだったんだな」
カタナは『確認不足だった』というような気まずい顔をちょっとだけ見せてから言う。
「弓手は矢に金がかかるからな。まずはアイテムを売って買い物に行こうか」
「う、うんっ」
お買い物かぁ。なんだかワクワクする響き。
「街で別行動できるように、パーティーを組ませてもらってもいいか?」
「うん」
別行動かぁ……。そうだよね。一緒にお買い物って事もないよね。
でも最近はずっと感染症対策でのんびり買い物もできてなかったし、やっぱり楽しみかも。
カタナの作ったパーティーに入れてもらって、カタナに続いて大きな町のあるワールドに入る。
街の真ん中には立派な城壁に囲まれた大きなお城。
DtDの中で一番大きな城下町なんだって、カタナが教えてくれる。
城下町は人で溢れていた。
「じゃあ、まずはアイテム売却だな」
商人には他の職業よりアイテムを高く売ったり、安く買ったりするスキルがあるんだとカタナが言う。
弓手を長く続けるなら、サブキャラとして商人を作っておくと消耗品が安く仕入れられるとアドバイスされた。
サブキャラかぁ……。まだ二日目だから、続けるかどうかも全然わかんないなぁ。
カタナは矢を買えるお店の場所や、武器や防具のお店、それを強化するお店をひとつずつ紹介してくれた。
すれ違いざまに色んな人達がたくさんの会話をしていて、カタナの言葉があっという間に会話ログの中を流れてしまう。
パーティーの仲間とだけ会話する画面があるとカタナに教えてもらってパーティー会話のログに切り替えると、それも一段楽した。
たくさんの人の中を、お互いにだけ聞こえる会話をしながら歩くのは、それだけでなんだかワクワクしてしまう。
商人系の人達が出している個人商店の覗き方も教えてもらった。
「個人商店から買うときは、値段が適正かよく見ないといけない」とのアドバイス付きで。
確かに個人商店に並んでいる商品は、ものすごく高いものから安いものまで様々だった。
こんなの、何がどう適正なのか全然わかんないよ……。
「価格はそのうち覚えていけばいい。今はわからないことや欲しいものがあれば何でも相談して」
と言われてホッとする。
「あ、赤いリボン可愛い……」
個人商店には、様々な装飾品もそれはもう色とりどりに並んでいた。
こんなにたくさん装備品の種類があるんだなぁ……。
「気になる見た目の装備があれば、試着してみたらいい」
カタナに試着の方法を教えてもらってやってみると、赤いリボンが自分の二つに括られた髪にそれぞれ一つずつ結ばれた。
「わぁ、可愛い」
思わずくるりとその場で回ると、カタナはパチパチと拍手するマークを出す。
「うん、似合うな」
うっ……、そんな風に言われると欲しくなっちゃうなぁ。
5000レルかぁ……。
昨日倒した雲兎と雲羊のドロップアイテムを売ったおかげで、私の手元には30000レルほど入ったけれど、カタナの勧める鉄の矢は1本2レルで3000本買えば6000レルになってしまった。
普通の矢は1本1レルだから、一人で戦う時はこっちにしようかな……。
属性のついた矢は1本3レルなんだけど、行き先によってはこっちを使うといいって言われちゃったし、そしたら9000レルだよねぇ……。
1本ずつお金がかかるんだなと思うと、昨日射損じた矢すら、ちょっと勿体なく感じてしまった。
うーん。ゲームの中でもお金の問題はシビアなのね……。
この後ポーションも買いに行く予定だし、10000レルくらいは手元にも残しておきたいし……。私の所持金ではちょっと……ギリギリってところかなぁ。
私が名残惜しい気持ちのままで試着を戻すと、カタナが尋ねる。
「買わないのか?」
「うーん。まだお金に余裕ないから、今度にする」
「……そうだな。弓手は所持金がゼロになるような事態は避けた方がいい。良い判断だ」
褒められて、なんだか照れてしまう。
あ。照れるマークがあったよね。
『てれてれ』と恥ずかしがるマークを私が出すと、カタナは『よしよし』と撫でるようなマークを出してくれた。
本当に撫でられたわけじゃないけど、それでもなんだか、じんわりと胸が温かくなる。
ポーションのお店は、街の入り口からちょっと裏道に入ったところに建っている個人商店を教えられた。
必ず買えるNPCの場所も教えてくれたけど、ここにこの商人がお店を出してる時は、ここで買うのがオススメとのことだ。
性能が良くて安いんだって。
ちょっと表通りからは外れているのに、ちょろちょろと人が通って行く。
次々に他のプレイヤーも買っているのが、減ってゆく在庫の数で分かった。
うーん、ポーションって色々種類あるんだなぁ。
安いのをいっぱい買うのと、高いのを少し買うんだったらどっちがいいのかな……?
悩む私に、カタナはパーティー会話でアドバイスをしながら「ちょっと俺も買い物に行ってくる」と中央通りの方へ行ってしまった。
マップの上に見えるオレンジの点が、多分カタナの場所なんだろうな。
『買えたら、西の……マップ左側の城門前で待ち合わせしよう』
『うん』
待ち合わせ……。待ち合わせかぁ。
なんだか、そういうのも久々で嬉しい。
小学生の頃は、よく友達と待ち合わせてあちこち出かけたのにな。
例の感染症が流行ってからは、学校が終わるとまっすぐ帰ってくるだけで習い事以外出かける事もない。
私はポーションを買い終えて、東西南北に4つある城門のうち西側の門に向かう。
カタナはまだ中央の通路をうろうろしてるみたい。
しばらくして、オレンジの点がこちらへ向かってきた。
「待たせてしまったな、すまない」
「全然、気にしないで」
私が笑って答えれば、カタナもホッとしたように小さく笑った。
こんな会話も久々で妙に嬉しい。
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