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第二話 玄武宮の賢妃は動じない

06-7.

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 昭媛宮は荒れ果てていた。

 ……瘴気がひどい。

 呼吸することさえも億劫になる。

 地面をひっくり返す勢いで捜査をしたのだろうか。あちらこちらに土の山が作られていた。

「陛下。口元をお隠しください」

「なぜ?」

「瘴気で満ちた場所は悪い影響を与えやすいのです。深く息を吸ってはなりません」

 香月の言葉を聞き、俊熙は眉をひそめた。

 ……なにも感じないのだろうか。

 見鬼の才がない者でさえ、次々に体調不良を訴えている。粗雑に並べられた侍女たちと距離をおきたいと視線で訴えてくる宦官たちが、なにに対して怯えているのかさえも、俊熙は理解できなかった。

 ……麒麟の加護か。

 噂として聞いたことがあった。

 俊熙は見鬼の才を得なかったものの、歴代皇帝の中で、もっとも麒麟の加護を与えられており、麒麟の加護は瘴気を寄せ付けない。

 それは真実なのだろう。

「陛下はまことに選ばれしお方ですね」

「なんの話だ?」

「呪いを跳ね除けたという噂は玄家でも有名な話でございます。それを目の当たりにして驚いているのです」

 香月は語る。

 ……加護が強すぎるのも考えものか。

 俊熙は麒麟の加護を強く持って生まれた。それだけで皇帝の座に座る価値があった。だからこそ、生まれてすぐに母子共に冷宮に追いやられたのだろう。

「あれか。神話のように広めるべきと口うるさく言われてな」

「その方の提案はご明察かと思います。どなたですか?」

「羅宰相だ。父の代から宰相を任せている頼りになる男だ」

 俊熙は政治の話を好まない。

 官吏に丸投げをすることもある。

 しかし、香月の質問に答えるのは気分が良かった。

「陛下、我々では手の施しようがございません」

 宦官の一人が声を上げる。
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