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第一話 脅迫された悪役令息は初恋に溺れる

01-6.

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 ……こんな形で尋ねることになるとは。

 思わず、息を飲む。

 鞄の中には大公邸を訪ねてくるようにと指示された脅迫状がある。

 それがある限り、ディーンは大公家に招かれた客ということになるのだが、非常に居心地が悪かった。

「ディーン坊ちゃん。失礼を承知の上で、お伺いいたしますが、本当に、アレン大公子からお茶会に招かれたのでしょうね?」

 セバスの言葉に対し、ディーンは力なく頷いた。

 ……お茶会なんてものじゃないけどな。

 手紙に書かれていたのは脅迫文だ。

 指定された時刻に、首都にある大公邸に姿を見せなければ、ウォートン侯爵家の悪事をすべて告発すると書かれていた内容を思い出し、胃が痛くなる。

 ……招かれたというよりは、呼び出されたというべきか。

 お茶会のような優雅なもてなしが待っているわけではない。

 ……よりにもよって、アレン大公子を相手にすることになるとは。

 覚悟は決めてきた。

 最悪の場合、Glareを使うことに躊躇わないように腹をくくった。

 そこまでしなければ立ち向かえるような相手ではなかった。

「しかし、迎えの姿は何一つ見えませんが」

 セバスは警戒をするように周囲を見渡す。

 閉じられている扉を守る門番もいない。

 ディーンを歓迎するかのように、駆け寄ってくる大公家の使用人も騎士もいない。

 ……俺を侯爵邸から引き離した隙に、家宅捜索でもするつもりか?

 それならば、侯爵邸から急いで戻るように知らせが来るだろう。

 そもそも、ディーンを侯爵邸から引き離す必要性がない。

 ウォートン侯爵家の悪事にはディーンも関わっているのに、ディーンだけを見逃すとは考えにくい。

「何を考えているのか、まったく、わからんな」

 ディーンはため息を零す。

 それから目を細め、門の隙間から見える大公邸へと続く広大な庭を睨みつけた。

 庭の奥に人がいる。

 ディーンが待っていることに気づける距離ではないのにもかかわらず、ディーンがいる方向に向かって大きな手を振っている。

 そして、なにやら指示を出している。
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