愛鳩屋烏

林 業

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そして成人

おまけ 嫉妬の行方

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タナカは家で本日非番の犬飼とゲームをする。
「君ら、よくそういうのできるよね」
カラスは遠巻きに眺めている。
「嫉妬か?」
「うらやま」
犬養の疑問にカラスは正直に答えている。
画面酔いしやすいカラスにとって、目が離せず、画面の切り替えが激しいゲームの相性は良くない。
映画などは目を離しても耳で内容がわかるからいいのだが。
なので一度やっただけで触って来なかった。
だが友人と恋人が楽しそうにゲームをしているのはとことん羨ましいと思う。

「お前って性格も体質も難儀だな」
「性格は余計だと思うんだ」
「そういえば先輩、カラスの先輩ってあったことあります?」
「カラスの」
犬養はカラスを見て、カラスは無言。
カラスが先輩という相手を犬養は一人しか知らない。
「俺が言うとあいつ怒んるんじゃないか?この間も足腰立たなくされて休暇がどうのこうのいってただろ」
「嫉妬ぐらいしたっていいじゃないっすか」
カラスはじっと犬養を見ている。
余計なことを言うな。と。
「まぁ、俺も会話したわけじゃないし一回ちらっと見ただけだ。妻子いるってカラスの姉、ホタルさんからは聞いているけどな」
「そうなんっすね」
タナカはほっと安堵する。
紹介してくれないので嫉妬してしまうが、妻子持ちに手を出すような男でないことはわかる。
「カラスがいろいろとやらかしてた時代の後始末を手伝ってくれたやつの一人だそうだな」
「やらかすって」
「まぁ、子供じみた反抗心を持って相手と対応していた時代というか」
チャイムの音に、カラスは誰かな。と逃げていく。

しばらくして背中を押されながら戻ってきたカラスと、カラスを押している男が入ってくる。

「あ、例の烏丸を抱えていったやつじゃないか。っと、ってことは隣のが」
「先輩。見たなら帰りましょう。ね。ね」
「この間の礼に菓子折り持ってきたんだよ」
カラスへとお菓子を渡すと、タナカに笑顔を向ける。
「君がタナカ君だな。先日は猫をかわいがってくれてありがとうな」
「い、いいえ」
タナカは照れ臭そうにしながら相手をする。
カラスはその姿を目撃して、もういいでしょうと追い出す。
「お茶の一つぐらいご馳走してくれたっていいだろうに。タナカ君。こいつと仲良くな」
楽しそうに笑って帰っていく。
玄関が閉まって、カラスはリビングに戻る。
「かっこいい人だったな」
「だから紹介するの嫌だったんだよ」
タナカの一言にカラスは嘆くように告げる。


「類は友を呼ぶ。か」
ゲームを再開しながら犬飼はぽつりと呟く。
タナカは妻子持ちかとボヤく。
カラスは好きになるなら俺だけにしてくれよ。とタナカに訴えている。

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