41 / 42
そして成人
13
しおりを挟む
カラスは休みのタナカと寛ぐ。
「この間の猫。可愛かったな」
「ちゃんと飼い主見つかったって、知人から連絡きた」
「そりゃあ良かった。で、男なのか?」
「昔、やらかした時のフォローしてくれた人なんだよ」
流石に黒歴史となりつつある過去を話すのは嫌なので言葉を覆う。
だが電話がかかってきて、しばらく話すと再び寛ぐ。
「何だったんだ。電話」
「ん。ポチから。タナカ君の従兄弟捕まえたって」
軽く言われて、驚く。
「まじで?」
「姉さんも被害届取り下げてなかったしね。前に捕まえようとしてたときに、行動パターンを調べ尽くしてたのもあるか。ポチには簡単な相手だったみたいだね」
「犬飼先輩って優秀?」
「そりゃあね。小さい頃から警官になるって言ってたからそういうことはしっかり身につけている」
「カラスも?」
「俺は、何故か付き合わされた。あそこに廃屋があるとききつけたポチ、犯罪者がいるかもと引きずられ覗き込み、親父さんに怒られた七歳」
いきなりなんだとタナカはカラスを見る。
「あっちに子どもたちが遊んでいる川があると聞き、溺れたら危ないと引きずって連れて行かれ監視員の役割をした八歳の夏の日。最近ストーカが出ていると教師の話を聞いたポチが張り切って見回りに付き合わされ、俺一人が露出狂に出会い、小さいと言いつつ急所を蹴り飛ばした九歳の春の日」
「うん。なんか痛々しいからやめようか。その話」
「その露出狂が痛みを忘れられないとやってきた相変わらず小さな急所を見せつけて来たので、ポチが柔道技で投げ飛ばし、そこにあった石が急所にクリーンヒットしていた十一歳の春。あの内股で連れて行かれた姿が忘れられない。そしてどれも両親と親父さんに怒られた」
巻き込まれただけなのにとぼやいている。
なんで嫌がる犬飼に対してポチと嫌がらせのように呼んでいるのかなんとなく理解した、タナカ。
「お前昔から変出者に好かれてたんだな。っていうか先輩。そこまでやんちゃしてたのか」
「中学校になって俺が離れに暮らすようになってから落ち着いたかな。オオカミさんはポチとどんな出会いをしたの?」
「きっかけがあったんだけどそれも飛んじゃってるんだよな。思い出したら聞いてくれ」
「楽しみにしている」
満面の笑顔に、気になったことを聞く。
「ちなみに俺とカラスはどんな出会い方をしたんだ?」
「んー。内緒。思い出したときに語り合うのを楽しみにしてるからね」
いや。教えてくれと目で訴えるが笑顔で躱される。
「じゃあ、カラスのあだ名のオオカミさんって、俺の名前の一狼からだろうけど、俺狼っぽいかな?」
ちょっとだけ男心を擽られるが、カラスは笑顔を向ける。
「とりあえず一匹狼にはなれないね。って思ってるよ」
つまり似てないということだろう。
聞くんじゃなかったと後悔する。
「ちなみに犬飼先輩の理由は?」
「警察になりたいって言うから。名前も犬だし。可愛さないと誰も近づかないかなって。結局変わんないけど。普段は親しみを込めてポチだけど、人前ではアキ君って呼んでるよ」
「それは、まあそうかも」
当時を思い出して視線を逸らす。
「ちなみに俺に対してタナカなのは?」
「一狼って長いし下手に勘繰られたくないでしょ。いっちーにする?」
「従兄弟がかぶるからやだ」
タナカはそれからそっかぁと遠い目。
「父と母と姉と、ついでにポチにはしっかり口止めしとくよ。俺の楽しみ取りやがって」
「あぁ。名前とかバラされたことな。まだ根に持ってたんだ」
「ちなみに君の従兄弟が俺の前に来たら心折るつもりでいるよ?」
カラスのただ事ではない宣言に、お手柔らかにとだけ言っておく。
「後はオオカミさんなんて俺だけしか呼ばない特別な名前でしょ?」
「そ、そっか」
自分でも単純とは思うが、喜んでしまう。
「さて、今日はゆっくりとして、明日も頑張ろうっと」
「今日はベッドで可愛いオオカミさんを見るの楽しみにしとこうっと」
タナカは思わず顔を反らし、しかし笑顔のカラスに、それこそお手柔らかにと告げる。
「この間の猫。可愛かったな」
「ちゃんと飼い主見つかったって、知人から連絡きた」
「そりゃあ良かった。で、男なのか?」
「昔、やらかした時のフォローしてくれた人なんだよ」
流石に黒歴史となりつつある過去を話すのは嫌なので言葉を覆う。
だが電話がかかってきて、しばらく話すと再び寛ぐ。
「何だったんだ。電話」
「ん。ポチから。タナカ君の従兄弟捕まえたって」
軽く言われて、驚く。
「まじで?」
「姉さんも被害届取り下げてなかったしね。前に捕まえようとしてたときに、行動パターンを調べ尽くしてたのもあるか。ポチには簡単な相手だったみたいだね」
「犬飼先輩って優秀?」
「そりゃあね。小さい頃から警官になるって言ってたからそういうことはしっかり身につけている」
「カラスも?」
「俺は、何故か付き合わされた。あそこに廃屋があるとききつけたポチ、犯罪者がいるかもと引きずられ覗き込み、親父さんに怒られた七歳」
いきなりなんだとタナカはカラスを見る。
「あっちに子どもたちが遊んでいる川があると聞き、溺れたら危ないと引きずって連れて行かれ監視員の役割をした八歳の夏の日。最近ストーカが出ていると教師の話を聞いたポチが張り切って見回りに付き合わされ、俺一人が露出狂に出会い、小さいと言いつつ急所を蹴り飛ばした九歳の春の日」
「うん。なんか痛々しいからやめようか。その話」
「その露出狂が痛みを忘れられないとやってきた相変わらず小さな急所を見せつけて来たので、ポチが柔道技で投げ飛ばし、そこにあった石が急所にクリーンヒットしていた十一歳の春。あの内股で連れて行かれた姿が忘れられない。そしてどれも両親と親父さんに怒られた」
巻き込まれただけなのにとぼやいている。
なんで嫌がる犬飼に対してポチと嫌がらせのように呼んでいるのかなんとなく理解した、タナカ。
「お前昔から変出者に好かれてたんだな。っていうか先輩。そこまでやんちゃしてたのか」
「中学校になって俺が離れに暮らすようになってから落ち着いたかな。オオカミさんはポチとどんな出会いをしたの?」
「きっかけがあったんだけどそれも飛んじゃってるんだよな。思い出したら聞いてくれ」
「楽しみにしている」
満面の笑顔に、気になったことを聞く。
「ちなみに俺とカラスはどんな出会い方をしたんだ?」
「んー。内緒。思い出したときに語り合うのを楽しみにしてるからね」
いや。教えてくれと目で訴えるが笑顔で躱される。
「じゃあ、カラスのあだ名のオオカミさんって、俺の名前の一狼からだろうけど、俺狼っぽいかな?」
ちょっとだけ男心を擽られるが、カラスは笑顔を向ける。
「とりあえず一匹狼にはなれないね。って思ってるよ」
つまり似てないということだろう。
聞くんじゃなかったと後悔する。
「ちなみに犬飼先輩の理由は?」
「警察になりたいって言うから。名前も犬だし。可愛さないと誰も近づかないかなって。結局変わんないけど。普段は親しみを込めてポチだけど、人前ではアキ君って呼んでるよ」
「それは、まあそうかも」
当時を思い出して視線を逸らす。
「ちなみに俺に対してタナカなのは?」
「一狼って長いし下手に勘繰られたくないでしょ。いっちーにする?」
「従兄弟がかぶるからやだ」
タナカはそれからそっかぁと遠い目。
「父と母と姉と、ついでにポチにはしっかり口止めしとくよ。俺の楽しみ取りやがって」
「あぁ。名前とかバラされたことな。まだ根に持ってたんだ」
「ちなみに君の従兄弟が俺の前に来たら心折るつもりでいるよ?」
カラスのただ事ではない宣言に、お手柔らかにとだけ言っておく。
「後はオオカミさんなんて俺だけしか呼ばない特別な名前でしょ?」
「そ、そっか」
自分でも単純とは思うが、喜んでしまう。
「さて、今日はゆっくりとして、明日も頑張ろうっと」
「今日はベッドで可愛いオオカミさんを見るの楽しみにしとこうっと」
タナカは思わず顔を反らし、しかし笑顔のカラスに、それこそお手柔らかにと告げる。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【※R-18】αXΩ 懐妊特別対策室
aika
BL
αXΩ 懐妊特別対策室
【※閲覧注意 マニアックな性的描写など多数出てくる予定です。男性しか存在しない世界。BL、複数プレイ、乱交、陵辱、治療行為など】独自設定多めです。
宇宙空間で起きた謎の大爆発の影響で、人類は滅亡の危機を迎えていた。
高度な文明を保持することに成功したコミュニティ「エピゾシティ」では、人類存続をかけて懐妊のための治療行為が日夜行われている。
大爆発の影響か人々は子孫を残すのが難しくなっていた。
人類滅亡の危機が訪れるまではひっそりと身を隠すように暮らしてきた特殊能力を持つラムダとミュー。
ラムダとは、アルファの生殖能力を高める能力を持ち、ミューはオメガの生殖能力を高める能力を持っている。
エピゾジティを運営する特別機関より、人類存続をかけて懐妊のための特別対策室が設置されることになった。
番であるαとΩを対象に、懐妊のための治療が開始される。
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
そんな和菓子にキャラメリゼ
まりの
BL
清彦は和菓子職人一筋のバツイチ中年。歳の離れた弟に連れられて行った洋菓子店で美貌の天才パテシェから謎の言葉をかけられて始まるおかしな関係。いろんな意味で「甘い」お話。
※自サイトからの移植です
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
狂宴〜接待させられる美少年〜
はる
BL
アイドル級に可愛い18歳の美少年、空。ある日、空は何者かに拉致監禁され、ありとあらゆる"性接待"を強いられる事となる。
※めちゃくちゃ可愛い男の子がひたすらエロい目に合うお話です。8割エロです。予告なく性描写入ります。
※この辺のキーワードがお好きな方にオススメです
⇒「美少年受け」「エロエロ」「総受け」「複数」「調教」「監禁」「触手」「衆人環視」「羞恥」「視姦」「モブ攻め」「オークション」「快楽地獄」「男体盛り」etc
※痛い系の描写はありません(可哀想なので)
※ピーナッツバター、永遠の夏に出てくる空のパラレル話です。この話だけ別物と考えて下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる