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雪虫 2
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しおりを挟む「オメガの遺伝子は貪欲かつ柔軟で、受け入れた遺伝子を効率よく残して行く。だからアルファはオメガに産ませたがる。自分の特性を高確率で残してくれるからなんじゃないかって話。君の場合だと、突出した能力は鼻がいいって部分だね、大神くんも鼻がいいし、雪虫も他のアルファより怖がってもないから、君達は遡って行くと同じ祖先に行きつくかもね」
「いやいや、それ、辿れば皆一人からってやつでしょ?」
「そんな極端な話はしてないよー」
へらへらと笑う姿を見ていると、どこまでが本気なのか疑わしくなってくるのはオレだけじゃないはず。
「まぁそれを受けて、お妃さまは必ずオメガを迎え入れるって言う国もあるんだよ」
「えっ 」
今でこそ、ちょっとΩの社会的な地位は向上してきていると思うけど、昔からΩは発情期があって所かまわずに誰にでも盛るせいかどうしても差別の目を向けられがちで……
ちょっと勉強しただけでもΩの歴史って言うのは迫害や差別の歴史なんだってわかる。
「知らない?ルチャザって国なんだけど」
「えっあっえっ……えー……」
どんな国だったかな?なんて思い出そうとするふりをしてみるけれど、オレの頭の中にその国に関する知識はなかった。
少なくとも学校の授業で習うような国ではないようだ。
「他国からお妃を迎えることでも有名なとこだよ、今の王妃はフランス圏の民間人だったかな」
あまり聞く機会のない国の王妃の出身地まで覚えているなんてさすがだな と思いはするけれど、きっと瀬能の中では他国の王様とは言え、バース性に関して興味深い観察対象だからってことなんだろう。
「ってかさぁ、渡した本読んでる?」
「機会があればめくります」
めくる だけだけど。
字の羅列を覚えるのと理解するのは別の話だ。
「将来、こちらに関わってくるなら知っておいて損はないからちゃんと目を通しておくんだよ」
「はーい」
じっとりと睨まれてさすがに背筋が伸びる。
将来の糊口が用意されているって言う有難い状況なんだから、それを蹴るようなことをするのは得策じゃない。なんたってオレには養わなきゃいけない相手がいるんだし。
「頑張ります!」
そう思うとちょっとやる気も出てくるってもんだ。
「あ、そうだ。雪虫が、袋の端っこがどうこう言ってたけど、セキくんから聞いた?」
「え?なんですか?」
袋……袋……と口の中で繰り返し、一つ思い出したのは海で拾ってきた瑪瑙や貝殻を入れるために作った袋だ。
オレが時々差し入れるそれを嬉しそうに眺めているらしく、まとめておけるようにと渡した袋のことで、なんとなく自分で作りたくなって指を刺しながら縫いあげたものだった。
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