OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

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雪虫 2

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 何かメモを取りながら事もなげに言ってくれるが、せっかくの意味がわからない。

「それで?魔法って何?」
「動き止めたりとかするやつです」
「ああ、あれね。あれはヒートのオメガに受け入れ姿勢を取らせるためのものの応用なんだよ」
「はい?」
「アルファフェロモンの中に、相手に挿入の体勢を強制するフェロモンがあるわけさ。それの応用」

 聞き慣れない話に返事できずにいると、瀬能の視線が画面から離れた。

「能力の高いアルファが使えるっぽい力だよ。倫理が絡むからほとんど使われることはないと思いたいけど、ラット時に無意識に使うアルファがいるとも聞くね。頸を噛むことの不動反射を補う感じなのかなぁ?」

 「逆かな?どう思う?」の言葉の返事は、遠ざかったために返せなかった。
 始まると長いと言うことを大神もよくわかっているらしく、話が終わる前には歩き出していて……

 オレとしてはあの長い話を聞いても……いや、むしろ聞かせて欲しかったんだけど、さっさと玄関に放り出されて渋々靴を履くしかできない。

「さて。使えるようになったか?」
「   全然」

 まったくやり方が分からないものを、やれと言うのも無理な話だ。

「大神さんはどうやってできるようになったの?」
「最初からできた」

 あー。いるいる。こんな感じの、自分ができるから万人ができるって思っている人!

 思わず考えが顔に出たのか、大神の表情が険しくなった。

「直江はこれでできるようになったが?」
「じゃあ直江さんに教えてもら 「座れ」

 遮られて最後までは言えず、ぺたんと座り込んだ地面の感触に項垂れた。

 なんなのこの人。

「気を抜くな」

 ザリザリとこちらに歩み寄ってくる足音が、死神かな  なんて呑気なことを思っていたのは最初のうちだけだった。



 本業の手当は手早くて、この人本当に医者だったんだと瀬能を見た。

「大神くんさぁ、いざって時に使い物にならなくなると困るんだよー?」
「気を付けます」
「全然思ってないよね?」
「思ってないですね」

 身の危険を感じた時、この場合はどこに逃げ込めばいいんだろう……

 下手に警察に言うと、そことも繋がってそうだと思うのはテレビの見過ぎか?

「上の様子はどうですか?」
「そんな一日で結果の出てくるもんじゃないよ。気長にだね。本来ならこんなじゃなくて、もっと多人数で長期的に見るものだし」

 その呑気な言葉にイラっとくるけれど、オレよりも煙草が吸えていない大神の苛つきの方がもっとひどそうだ。



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